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株式会社アル・マイーム

業種

教育,学習支援業

地域

中部

従業員数

10人未満

File.184

従業員の働きやすさを追求 多様なニーズに対応できる職場環境を整えるために ―幅広い講座内容で地域のIT普及に貢献「株式会社アル・マイーム」の場合―

同一労働同一賃金の実現

2024.10.22

株式会社アル・マイーム

 静岡県浜松市で「パソコン教室わかるとできる」を2店舗展開している株式会社アル・マイームは、アットホームな雰囲気と高いパソコン力で初心者からビジネス活用まで、趣味から資格取得まで地元の人たちの「パソコンで○○したい!」の実現をサポートしている。

 現在は、老若男女を問わず利用者が安心して利用できる教室づくりのため、正社員とパートタイム従業員それぞれの働き方を活かしたスムーズな教室運営と品質向上を進めている。

パートタイム従業員の活躍を期待し納得性の高い待遇を提示

 代表取締役である和久田由美氏は、働き方改革に取り組むきっかけについて、次のように語った。

 「パートタイム従業員には、育児や親の介護等の理由で正社員としては働けないが、働く意欲のある優秀な方々が少なくなく、そのような方々の受け皿になりつつ、正社員の労働環境についても整えることで、パートタイム従業員と正社員の双方が働きやすい環境を作れないかと考えていました。

 また、教室のスムーズな運営や品質向上のためにも、パートタイム従業員には、今後とも、より一層活躍してもらいたいと考えており、そのためには基本給を含めた納得性の高い待遇を提示することが重要であると感じていました。

 しかし、適正な賃金水準がどのくらいか不明瞭なうえ、パートタイム従業員と正社員は仕事の範囲や責任も違うため、正社員の基本給とは比較ができないのではないかと思い、静岡働き方改革推進支援センターに相談したところ、職務評価の手法を使えば、働き方・貢献に見合った待遇が実現できると聞き、今回の職務評価の実施に取り組みました。」

代表取締役 和久田由美氏

働き方改革に取り組んだきっかけを語る代表取締役の和久田由美氏

取り組みの概要

 2013年の会社設立当初は、パートタイム従業員のみの雇用だった。その後、正社員の採用を新たに始めたが、正社員を雇用するにあたっても、安い賃金では安定した雇用に繋がらない事を実感したため、働く従業員の賃金アップを経営の目標にしたところ、2024年に目標に到達することができた。

 次に定めた目標は従業員の働く環境を整えること。そのために正社員とパートタイム従業員の役割や職務、賃金等の内容について、同一労働同一賃金の考えをもとに整理を行った。そうして正社員とパートタイム従業員の職務や賃金等の整理ができた事で、正社員だけでなくパートタイム従業員の雇用を進める土台を作ることが出来た。今後も従業員が働きやすい職場環境を整えていく。

効 果

  • 処遇の透明性、納得感の高まりを通じた働きがいの向上
  • 均衡待遇の実現、正社員転換制度の整備によるパートタイム従業員の処遇改善
  • 評価基準の明確化による正社員の離職率の低下

職務構造表を用いた職務の棚卸

 各従業員それぞれの業務内容を、今回の取組を機に改めて棚卸し、権限・責任の度合いも含め、上司・部下、同僚の関係で整理しなおし、下記職務構造表の作成を行った。これにより、従業員の区分ごとに、職務を構造的に把握することができた。

プロット図を活用した待遇差の検証・賃金改定

職務構造表で整理した従業員区分ごとの職務について、職務評価を実施し、仕事の大きさである職務ポイントを算出した。

 この職務ポイントと、各従業員の時間賃率(1時間あたりの賃金)を用いて、人材活用の仕組みや運用も踏まえながら、均等・均衡待遇が実際に図られているかを確かめられるプロット図を作成した。その結果、同じ職務ポイントでも、一部賃金が低い者がいるなど、プロット図の分布にバラつきが見られた。

 そこで、職務評価結果を活用して、職務ポイント単価を設定し、賃金水準を再計算したところ、社員の定着を図るためにも現行の賃金テーブル改定の必要性を認識した。

 そのため、総額人件費の観点からも検証を重ねた結果、正社員とパートタイム従業員ともに、基本給のベースアップを実施した。特にパートタイム従業員については、既存の正社員の職能資格制度との対応関係について整理したうえで、職務ポイントを用いた格付け(役割等級)制度の設計を行い、それに当てはめたかたちで、新しい賃金制度を適用した。

格付け制度により正社員転換を実現

 今回設計した格付け(役割等級)制度や賃金制度により、パートタイム従業員と正社員等級の対応関係を把握することができるようになったため、正社員転換の対象範囲が明確になり、転換の基準などを適正に設定することができた。

非正規雇用労働者の待遇改善状況

■職務構造表の作成により職務内容、権限・責任を明確化

 職務構造表の作成により、今まで、正社員とパートタイム従業員の役割分担が曖昧になっており、非効率な面が多くあったことに気づいた。例えば、パートタイム従業員が過度に負担の大きい仕事を行っていたり、役職者が本来担うべきではない簡易な入力作業を行っていたりした。

 職務構造表は従業員の階層に応じて職務内容が書き込まれているため、業務の内容、権限・責任の程度等を構造的に理解できる。これを従業員間で共有したことにより、それぞれの役割や立場の違いを再認識できたため、「指示がしやすくなった」、「教室の雰囲気も良くなった」との声が上がったほか、職務構造表で次のステップアップが可視化されたことで、資格取得など自己啓発に取り組む従業員が出てきた。

 また、労働基準法施行規則改正により、新しく追加された明示事項(業務の変更の範囲)についても、スムーズに労働条件通知書を改定することができた。さらに、採用面接時に職務構造表をもとに、業務内容や責任の程度を説明できるようになったことにより、「思っていた職務と違った」という仕事のミスマッチリスクが軽減されることを見込んでいる。

■職務分析・職務評価に基づきパートタイム従業員の均衡待遇を実現

 パートタイム従業員について、設計した格付け段階(役割等級)に当てはめ、新しい賃金制度への移行措置を行った。これにより、格付けされた役割等級に対し、賃金が少なく支払われている状態を解消し、正社員との均衡待遇を確保することができた。

 また、職務分析・職務評価を実施して賃金水準を設定したことで、基本給の待遇差についても、より明確に説明ができるようになった。格付け(役割等級)表は、パートタイム従業員の等級定義が明文化されており、正社員等級との対応関係が一目でわかる。職務評価(職務ポイント)を均衡待遇の客観的資料として活用することで、合理的な説明が可能となった。

 

■職務構造表を基にした評価により正社員転換を実施

 正社員転換を実施するにあたり、職員ごとの業務内容や権限、責任の程度等を一覧にした職務構造表を作成したことで、これを基に職務遂行基準などを定めた評価シートを作成することができた。

 また、正社員転換の支援策として、OJTプログラムも作成することができた。3カ月間のOJT訓練後に実務試験を実施し、実際に合格した1名を正社員登用した。

 これらは、従業員と会社が「自社の正社員に必要な職業能力は何か」を共有することができた結果だと認識している。従業員も、自分がどこまでやればいいのかわかりやすかったと話している。

職務内容や権限・責任の明確化により仕事に取り組む上での迷いが減りました

 本部長の後藤貴之さんは、今回の取り組みを振り返って次のように話してくれた。

 「入社してから7年になりますが、1年経つごとに人事考課制度の可視化、現代に合わせた就業規則の改定、年次有給休暇取得の促進など様々な会社の規則が抜本的に変わり、一言でいうと「わかりやすく」なりました。また規則以外にも社長との交流する機会が増えたこともあり、仕事の取り組むスピードが年を追うごとに早くなっていると思います。私たち従業員の働くことについて具体化され、意思決定が明確になることで目的と手段となる取り組みに迷いが減って積極的に過ごせるようになりました」。

取り組みによる変化について話す本部長の後藤貴之氏

多様な働き方やワークライフバランスを重視した労働環境の整備

 株式会社アル・マイームの働き方改革への取り組みを支援した社会保険労務士の市川正巳氏は次のように語っている。 

 「従業員との対話を重ね多様な働き方やワークライフバランスを重視した労働環境の整備に取り組んでいます。今回、各従業員に自分の強みを発揮してもらえる賃金制度の構築を目指し同一労働同一賃金に取り組まれました。職務評価は、時給とういう「ものさし」で、パート従業員と正社員の仕事を比較でき、業務内容、責任の程度、会社の独自性、人材活用戦略の要素が含まれているので、従業員にわかりやすく、納得できるものになっています。働き方、貢献に見合った待遇の実現が企業活動の活性化に繋がることを期待します」。

支援を担当した社会保険労務士の市川正巳氏

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

職務分析・職務評価を実施して正社員との均衡待遇を確保

効果
職務分析・職務評価の実施結果を元にパートタイム従業員の処遇を改善したことで、処遇の納得感等が高まり働きがいが向上した。
取組2

基本給のベースアップによる人材の定着

効果
正社員とパートタイム従業員の均衡待遇を確保しつつ基本給のベースアップを実施したことで、正社員の定着を図れた。
取組3

格付け制度により正社員転換を実現

効果
格付け(役割等級)制度により正社員転換の対象範囲及び転換の基準などが明確になり、パートタイム従業員の向上心が醸成された。

COMPANY DATA企業データ

パソコン初心者から資格取得まで 地域のIT普及に貢献

株式会社アル・マイーム

代表取締役:和久田 由美
所在地:静岡県浜松市
従業員数:6名(2024年7月現在)
設立:2013年
事業内容:全国に約200教室を展開するIT教室「わかるとできる」に加盟し、「イオン浜松西校」と「サンストリート浜北校」の2教室を運営。2校舎の延べ生徒数は2,000人越え。常に各教室に100人以上の生徒が通っている。パソコン初心者から資格取得、スマホ講座と幅広い講座内容で、地域のIT普及に貢献している。