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社会福祉法人郡山コスモス会
医療・福祉
北海道・東北
50〜99人
File.185
多様な活躍ができる 職場環境を目指して、職務評価を見直す ー障がい者の地域生活を支える「社会福祉法人郡山コスモス会」の場合ー
2024.09.25
社会福祉法人郡山コスモス会は、「共に歩み、共に幸せになる」を企業理念に掲げ、福島県郡山市で就労継続支援A型・就労継続支援B型のキッチンコスモス、就労継続支援B型のワークコスモスでの就労支援をはじめ、地域生活支援、相談支援、住まいの支援と障がい者の地域生活を支える様々な事業を展開することで、地域とともに歩み、地域の発展に貢献している。
利用者と職員が一体となり、安全・安心・快適なコスモス会を創り、おもいやりとやりがいに満ちた職場を目指していくためにも、職責に応じた公正な評価と処遇を実現する必要を感じ、今回の取り組みに着手することとなった。
パートタイム職員の職責に応じた公正な評価と処遇の実現
理事長の水野博文氏は、今回の取り組みのきっかけについて、次のように語った。
「当法人では、障がい者の地域生活を支えるうえで必要な事業や活動をされている皆様の応援、ご支援をさせていただいております。今後も、地域貢献活動として、お互いの活動を支え合える地域づくりを目指していきます。
最近の事業内容の広がりにより、正規職員はもとよりパートタイム職員に担っていただく業務のボリュームが増してきました。そのなかで、専門性に応じた限局した作業が混在していること、 労働時間の多様性、賃金や手当等の問題(同一労働同一賃金)が顕在化してきたため、今回の取組に着手することとなりました。」
働き方改革の取り組みを推進した 理事長 水野博文氏
取り組みのポイント
【取り組み前】
- 各事業所でのパートタイム職員の職務内容とその対価の基準が曖昧である。
- パートタイム職員の評価が、評価者や事業内容の違いにより差異がある。
- パートタイム職員と正規職員との間でその対価や労働の比較をする機会がなかった。
【取り組み後】
- 今回の取組を通じて、あらためて、職務内容に応じた労働の成果の評価基準の違いが共有できた。
- もともと備え持っている、職員のコミュニケーション力や柔軟性などが、評価結果に大きく影響していることも認識できた。
- パートタイム職員の専門性や職種に応じた賃金基準や昇給方法などを設定できた。
効 果
- パートタイム職員の職務評価の検証
- 賃金設定(時給換算)の適正化
- 正規職員への転換に向けたキャリアアップ基準の設定
- 正規職員とパートタイム職員の職務や職責の区別の可視化
正規職員とパートタイム職員の待遇差の検証
職務評価により仕事の大きさである職務評価点数(ポイント)と現状の賃金について検証した。
対象は3つの部署で、それぞれの正規職員・パートタイム職員について職務評価を実施した。評価もそれぞれの部署の責任者3人で実施してもらった。評価者には事前に集まってもらい、目的や進め方などを理解してもらい、評価のレベル合わせも行った。
その結果、正規職員とパートタイム職員の方の処遇の均衡(職務評価と賃金)はほぼ確保されていることがわかった。
各事業所におけるパートタイム職員の役割や職務内容の見直し
- 職務(役割)評価の実施により、事業種別(入所系・通所系・訪問系)の軸と職種別(①就労訓練を受ける上で、利用者の生活面や健康面の把握、生活訓練、生活介護を行う生活支援員・②利用者と作業をしながら作業指導や準備、段取り、作業環境の整備、安全確保を行う職業指導員や作業指導員)の軸で再考し、職務や業務を明文化した。
- 福祉・心理職の専門性を活かした限局的な業務や、専門的な助言指導のような役割をパートタイム職員にも担っていただけるように積極的に取り組んでいくことになった。
パートタイム労働者の等級表の作成
- 等級表は、職種・業務・ランクと基準・職務評価ポイント・基本給(時間賃率)として一覧表で作成した。職種は、生活支援員と作業指導員・職業指導員とに区分し、それぞれが担っている業務の内容を細かく記載した。また、ランクと基準(等級定義に相当)では支援員と指導員で3ランク(A・B・C)を設定し、それぞれ求める基準を具体的に表現した。職務評価ポイントもA・B・Cで設定するとともに、対応する基本給もそれぞれ設定した。
- 職務を明文化したことで、その評価(職務・賃金)も連動して整理することができた。
パートタイム職員の等級表
パートタイム職員の待遇改善状況
■パートタイム職員の等級制度の実施
パートタイム職員の待遇改善のための等級制度を策定し、職員会議等で目的・内容・実施方法について検討を進めた。
当法人の事業内容が、パンや焼き菓子、手作りの心のこもった温かい弁当の製造販売、自家農園でのにんにくなどの農産物等の栽培販売と多岐にわたるため、働き方も多岐にわたる。
その中で、特定の季節に限り農作業の補助業務に従事するアルバイトの方や、調理の補助業務のみに従事する一部のパートタイム職員の方にも等級制度を適用するのかどうかが特に議論となった。
結果として、職員の職種を①支援員②指導員③作業員と区分し、調理や農作業の補助業務のみに従事するアルバイト・一部のパートタイム職員などの作業員は等級なしとしパートタイム職員の等級制度の対象としないこととした。
等級表にある職種の他、相談員や事務員、専門職等の詳細についても現在作成中である。
■パートタイム職員等級制度の運用
等級制度の運用は、現在雇用されているパートタイム職員については契約更新時に職務評価を実施し、等級に照らした賃金に変更することを順次実施していく。また、あらたに雇用されるパートタイム職員については、等級制度の業務内容・ランク・基準・運用を契約時に説明した上で、次の契約更新時に職務評価と賃金改定を行うこととした。
■研修等教育機会の拡大
正規職員を対象とした従来からの外部研修を継続するとともに、パートタイム職員にも外部研修の機会を積極的につくり、レベル向上につなげることとした。さらに福祉関係の資格取得についても積極的に支援している。
■処遇改善手当の見直し
主に利用者を直接援助する職員を対象として、賃金アップの仕組みや働きやすい職場環境を整えることで、申請して得られる福祉・介護職員等処遇加算について、パートタイム職員についてもより反映できるよう、「職務」「労働時間」「資格」等の設定を工夫した。
■正規職員への転換の推進
非正規雇用社員の契約期間が5年を超えた場合における、有期契約から無期契約への転換、非正規雇用社員の正規社員への転換措置などの先の法改正も踏まえた上で、パートタイム職員のモラールアップを目指し、前向きに正規職員への転換に取り組んでいる。
また、短時間正社員など多様な正社員制度について検討している。
働き方改革を進め、若手社員への技術継承に臨んでいます
コスモスリカバリーセンター 施設長の安司 彩さんは、今回の取り組みを振り返って次のように話してくれた。
「当事業所は、入所または通所によるサービスをチームで支援しながら進めるのが特徴です。いままでは、各々の対人援助職の経験や技術的な習得状況、またはコミュニケーション力や特性に合わせた業務遂行や評価をしていました。今回の取組を通して、正規職員の職責や業務遂行の内容と、パートタイム職員に求める業務や求める役割についての差異を整理することで、これまではっきり見えていなかった賃金基準や職務評価基準を可視化することができました。」
コスモスリカバリーセンター 施設長 安司彩氏(2009年入社)
頑張っている職員に働きがい持ってもらいたい
今回取り組みの支援をした社会保険労務士の田部良夫氏は、支援を振り返り次のように語った。
「就労継続支援では、障がいを持った方が自分でお金を稼ぎ、好きなものを買うことを通じて、お金の大切さを学びながら、 楽しみや生きがいを見つけて充実した生活を送ってほしいと頑張っている職員が大勢おられます。当法人ではそういう職員がもっと意欲的に働けるよう、いろいろな取組をされています。すでに正規職員については等級制度がありましたが、パートタイム職員の方々にも働きがいを持ってもらいたいと今回の職務評価制度を活用され、正規職員とのすり合わせも実施されました。」
取り組みを支援した社会保険労務士の田部良夫氏
CASE STUDY働き方改革のポイント
働き方によらない 均等・均衡な待遇の確保
- 効果
- 正規職員と同等の役割を担うパートタイム職員の職務評価を実施し、均等・均衡な待遇の確保を検証した。
職務基準の明確化で 職員の気づきによる業務改善
- 効果
- 職務基準を示すことにより、業務や作業ごとに求めるレベルが明確になり、職員自らの気づきによる取組姿勢や業務改善が期待できる。
等級制度の運用により 働きがいアップ
- 効果
- パートタイム職員の職務評価に基づいた等級制度を設定し、パートタイム職員の働きがいのアップにつなげた。
COMPANY DATA企業データ
障がい者の就労支援を通じ支え合える地域づくりを実現し地域に貢献する
社会福祉法人郡山コスモス会
社会福祉法人郡山コスモス会
代表者:理事長 水野 博文
所在地:福島県郡山市
従業員数:70名(2024年5月現在)
設立:1997年9月
事業内容:障がい者のための就労継続支援A型・B型でキッチンコスモス、ワークコスモスを運営、他に自立訓練、地域活動支援・相談支援・共同生活援助等を行っている。