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株式会社三基

業種

建設業

地域

九州・沖縄

従業員数

50〜99人

File.186

持続可能な経営と地域との共生、人々の 豊かな生活を実現する企業を目指す ―「人と環境との共生」をテーマに事業を展開する「株式会社三基」の場合―

同一労働同一賃金の実現

2024.09.25

株式会社三基

 長崎県長崎市の株式会社三基は、港湾土木事業からスタートし、現在は総合建設業として土木や建築を主としながら、浮桟橋(ポンツーン)事業やバイオマスを中心とした再生可能エネルギー事業、埋蔵文化財発掘事業など多岐にわたり事業を展開している。

 「人と環境の共生」をテーマに活動を続ける株式会社三基は、技術の新時代を迎えた今こそ、その中核を担うのは「人」であると考え、「心」を届ける企業を目指し、社員が快適に働ける環境づくりにも力を入れている。

同一労働同一賃金を人材の定着と会社の発展につなげる

 代表取締役社長の山口雅二氏は、働き方改革に取り組んだきっかけを次のように語った。

 「社員が快適に働けることが会社の成長につながるという思いのもと、様々な取り組みを行っています。その中で、同一労働同一賃金を実現するため、働き方改革推進支援センターに相談しました。働き方改革は、労働時間の削減や職場環境の改善だけではなく、会社全体の文化や風土、在り方を見直すものです。社員一人ひとりが健康に働き、柔軟な働き方を推進していくことで、人材の定着や離職防止につながると考えています。

 今後も積極的に取り組み、持続可能な経営を進めていくことで、社会全体、地域に貢献できる企業を目指してまいります。」

社員が快適に働けるよう働き方改革に取り組んだ代表取締役社長 山口雅二氏

取り組みのポイント

【現状】

 正社員とパートタイム社員の就業規則が一緒に規定されているため、パートタイム社員に適用される規定、適用されない規定の判別がしにくく、分かりづらかった。そのため手当や特別休暇の適用範囲が不透明であり、パートタイム社員への周知も十分にされていなかった。

【取組後】

 パートタイム社員就業規則を別規定として作成したことにより、適用範囲が具体化され、誰にどのように適用されるかがはっきりした。規定されていなかった通勤手当は新たにパートタイム社員就業規則に明示し、不明確だった慶弔休暇等の特別休暇についても正社員との待遇の格差なく規定した。

 

効 果

  • 正社員就業規則とパートタイム社員就業規則を別々に作成することにより、適用範囲が明確に区分され、理解しやすくなったため、従業員にスムーズに周知できるようになった。
  • 手当及び休暇について、正社員とパートタイム社員間の不合理な待遇差が解消し、従業員の満足度が向上した。

パートタイム社員就業規則の作成と正社員就業規則見直し

 従来、パートタイム社員と正社員の就業規則が一本化されていたため、パートタイム社員に適用される規定と除外される規定の区別が分かりづらかった。このため、パートタイム社員へ就業規則の周知が十分にできていなかった。

 パートタイム社員就業規則の作成は、厚生労働省のパートタイマー就業規則規定例を参考に現行の就業規則と突合し、不足部分の追加と実態に沿った運用を確認しながら行った。

 これにより就業規則が分かりやすくなり、パートタイム社員への周知がしやすくなった。

労務管理の改善

 パートタイム社員就業規則の作成過程では、専門家より必要な労働基準法の説明を受けるとともに、1つ1つ疑問点を解消しながら理解を深めていくことにより、就業規則の運用がスムーズに行えるようにした。

 パートタイム社員が従事するのは現場作業であることを踏まえた上で、就業規則の周知方法や労働条件通知書の記載内容等について検討した。その結果、作業現場休憩室に就業規則を掲示し、情報が行き渡りやすくなった。同時に行った正社員登用制度や相談窓口の告知掲示は、パートタイム社員の安心と将来への期待感につながり、仕事に対するモチベーションが向上した。

パートタイム社員の処遇改善

 専門家に相談した結果、パートタイム社員の処遇改善にあたり、手始めに比較検討しやすい手当や休暇について見直し、検討を進めた。今後は基本給について見直し、検討を進める予定である。

①手当の支給基準と適用範囲について

正社員とパートタイム社員の間でどのような違いがあるかを調査した結果、通勤手当の支給に違いがあったことを受け、パートタイム社員にも正社員と同等の支給規定を新たに設け、公平な待遇を実現した。

②休暇について

特別休暇:慶弔休暇などの特別休暇についても、正社員とパートタイム社員との間で不合理な待遇差が生じないよう制度を見直した。

③基本給について

現状パートタイム社員には昇給制度がなく、勤続年数にかかわらず基本給(時間給)が同額となっている。今後は、正社員と同様に人事評価制度を導入し、能力に応じた基本給を決定する方向で検討の予定である。

パートタイム社員の待遇改善状況

■手当について

調査の結果、通勤手当の支給に不合理な待遇差があることが判明した。

改善前

非正規雇用労働者のうち本社勤務の契約社員1名については、通勤手当が支給されていたが、パートタイム社員の文化財発掘作業現場作業員50名については、支給されていなかった。

改善後

作業現場までは、公共交通機関の利用が不便なため、自転車、乗用車、徒歩による移動が主であったが、公共交通機関を利用した場合は、正社員と同じく通勤手当を支給する制度をパートタイム社員就業規則に新たに規定、導入し、職場全体の公正な待遇を実施した。

■休暇について

①慶弔休暇等特別休暇

改善前

就業規則の規定が不明確なため、パートタイム社員が特別休暇を取得できることを分かっていなかった。

改善後

パートタイム社員就業規則に明示することで、パートタイム社員も特別休暇を取得しやすくなった。

➁年次有給休暇

改善前

就業規則のほかに内規があった。パソコンで自由に規程を閲覧できる正社員と異なり、パートタイム社員は作業現場に勤めているため、その内規を見ることができない状況にあった。

年次有給休暇の付与は、就業規則に「斉一的取扱い」の規定があったが、就業規則が分かりづらかったため、パートタイム社員については実質規定が適用されていないような状況であった。

改善後

㋐パートタイム社員就業規則を作業現場休憩室に掲示し、パートタイム社員も年次有給休暇が取得しやすくなった。

㋑パートタイム社員就業規則に、正社員と同様に「斉一的取扱い」を規定した。

日常の労務管理には就業規則が基本になることを説明した。就業規則を日常の労務管理のルールブックとして意識し、活用するようにした。

 

労働条件が明確化されモチベーションが向上しました

 危機管理部主任の山下佳子さんは、今回の取り組みを振り返って次のように話してくれた。

 「パートタイム社員が従事する文化財発掘業務は屋外での作業となりますが、冷暖房完備の休憩室があります。その休憩室の中には就業規則が掲示され、いつでも内容が確認できるようになり、労働条件がよりはっきりするようになりました。また、社内相談窓口や正社員登用制度の掲示もあり、安心して、今後への期待感を持って働くことができます。モチベーションが向上しました。」

危機管理部 主任 山下佳子氏(2014年入社)

非正規雇用労働者の働きやすい・働きがいのある職場環境作りを支援

 株式会社三基の取り組みを支援した社会保険労務士の吉田俊哉氏は次のように語っている。

 「会社のルールブックである就業規則は、その理解と運用の知識が必要です。その前提となる労働基準法にも触れながら支援しました。非正規雇用労働者には伝わりにくい内規や慣習の見える化をし、正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差が生じないようにすることを助言しました。今回は手当・休暇の処遇改善でしたが、非正規雇用労働者の働きやすい・働きがいのある職場環境作りに更なる見直しをすることで、人材の採用・定着、労働意欲の向上、生産性向上につながります。非正規雇用労働者の活用が企業の存続・成長には欠かせません。」

取り組みを支援した社会保険労務士の吉田俊哉氏

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

パートタイム社員 就業規則を作成

効果
就業規則を正社員、パートタイム社員別々に作成することで規定の内容と適用範囲が明確になり、就業規則を周知しやすくなった。
取組2

労務管理の改善

効果
作業現場休憩室に就業規則、相談窓口・正社員登用制度に関する情報を分かりやすく掲示し、パートタイム社員の会社に対する信頼感が増した。
取組3

パートタイム社員の不合理な待遇差を解消

効果
手当、休暇についての透明性、公平性の確保は、従業員の満足度、仕事に対するモチベーションの向上につながった。

COMPANY DATA企業データ

Live Together  すべては共生のために

株式会社三基

代表者:代表取締役社長 山口 雅二
所在地:長崎県長崎市
従業員数:74名(2024年6月現在)
設立:1951年7月
事業内容:総合建設業(木造・鉄筋・鉄骨建物の建築・設計及び管理・一般土木)、船舶・港湾土木工事、浮体構造物の設計・制作・販売、調査・測量・設計業務、バイオマスボイラ・焼却炉の製造・販売、廃棄物処理機の設計・製作及び販売、埋蔵文化財発掘事業、不動産にかかわる企画・造成・開発