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株式会社ホテル泉慶

業種

宿泊業,飲食サービス業

地域

中部

従業員数

100〜300人

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旅館の“企業風土”を一新、温泉街全体に活力を! ―月岡温泉 「ホテル泉慶」の場合―

生産性の向上による処遇改善

2020.02.28

株式会社ホテル泉慶

 「エメラルドグリーンの湯」で知られる新潟県新発田市の月岡温泉。大型旅館を運営するホテル泉慶は、旅館での働き方改革に乗り出している。

残業上限は月45時間、30分単位シフトで勤務効率化

 稲の穂が実った田んぼを抜けると月岡温泉がある。最大の客室数を持つ旅館を運営するホテル泉慶は、従業員の残業時間の上限を月45時間に設定するなど、旅館業の働き方改革に乗り出している。旅館が理想とする仕事を「裏で笑顔を絶やさず、表ではもっと笑顔で接客」として、従業員が働きやすい環境を整えるのが狙いだ。

 陣頭指揮をとるのは、後継ぎの飯田武志常務だ。「社員が働きやすい環境を作らない限り、旅館業としてお客様に満足のいくサービスを提供できない」との問題意識がある。
 飯田常務は、まず、業界の慣習として続いてきた残業を助長する働き方の見直しに着手した。2018年10月から新たな制度を導入し、労働時間は、業務内容に関係なく拘束時間8時間45分で実働7時間15分に統一し、残業時間の上限を原則として月45時間に設定した。

 飯田常務は、大学卒業後、東京でベンチャー企業や外資系企業などで働き9年ほど前、実家が経営するホテル泉慶に戻ってきたが、「当初は企業経営のスピード感の違いや旧態依然とした業界の慣習に驚くことが多かった」という。「旅館業はお客様を一番、大切にするのはもちろんだが、サービスを提供する従業員を大切にしなければ未来はない」との思いを強くし、従業員が働きやすい環境を整えようと、自社の課題の洗い出しを始めた。

「旅館業界全体の働き方を変えていきたい」と飯田常務

 固定給として残業代を定額で支払う「固定残業」について、「職場全体の長時間残業を助長する原因となる」として廃止。残業時間の上限についても、「月45時間と決めないと長時間になってしまう」と判断した。
 長い間、固定化していた従業員の勤務シフトも見直した。朝から夕方と昼から夜までの2つのパターンをやめ、30分、1時間単位の細かいシフトを作った。従来は、特に朝食時間帯など最も人数が必要な時間に多くの人が一斉に出勤していたが、時間帯によっては人員配置の無駄が目に付いたという。勤務シフトを細分化することで、適正な人員配置を可能にし、効率的に働けるようにした。業務内容を見直し、部署の統廃合も行った。

  「10年以上、全員が同じシフトで働いていた。業務内容や忙しさの度合いによって柔軟に対応する必要があった」と飯田常務は振り返る。従業員の負担軽減を進めようと、全客室にタブレット端末を配置し、宿泊客が備品レンタルの注文などができるようにした。これまでは、固定電話で宿泊客が従業員に直接、注文していた。

現場から次々にアイデア提案、プライベートも充実

 働き方を改善したことによって、現場から新たな取り組みの提案が増えてきた。飯田常務は「まだやりたいことの10分の1もできていないが、企業風土、土壌が変わってきた」と手ごたえを感じている。従業員の発案で、新たに卓球場や常設の挙式場、エステサロンを設けるなどした。
 また、ホテル泉慶では、高いサービスレベルを維持するため、研修などを受ける機会の多い正社員比率を高めている。実際、従業員約300人のうち正社員は280人と9割を超える。また、従業員の約7割が女性で、勤務シフトの細分化で育児など家庭の事情に合わせて働くことができるようにした。基本給も増やし、賞与も会社の業績と連動させ、夏と冬だけでなく利益が出ていると期末賞与として別途支給することにした。

働き方改革によるプラスの効果で、明らかに企業風土が変わった

 総務部の肥田野貴志さんは、「みんなで今の時代の働き方に合わせようとしている。お客様へのサービスの質を下げずに従業員の働き方に配慮しながら実践している」と、働き方改革の効果を実感している。肥田野さん自身、小学校と保育園の子どもを持ち、子どもの送迎など家族との時間を持ちやすくなったという。
 会社全体でも、仕事が終われば早く帰る風土が生まれ、社内の野球部など運動部の活動が活発化するなど、目に見える変化も出てきた。

「プライベートの時間も充実してきた」と肥田野さん
「子どもたちとの時間を大切にしている」と肥田野さん

「若い人が働きたい温泉地」へ、街づくり・人づくり

 現在、飯田常務が、ホテル泉慶の働き方改革とともに注力しているのが、月岡温泉全体の整備だ。月岡温泉は、石油の掘削用に開けた穴から湯が湧き出したのが始まりで、開湯から100年余りと温泉地としての歴史は比較的新しい。バブル期に団体客らでにぎわい発展したが、バブル崩壊後の景気低迷で団体客が減った。個々の旅館は個人客を取り込んでいるが、2000年代以降、温泉街としての元気を失っていた。

 飯田常務は月岡温泉の旅館経営者らとともに2014年、合同会社ミライズを設立、古民家を再生するなど「歩きたくなる温泉街」の整備を進めている。これまでに新潟の地酒を楽しめる店舗などを開業し、日帰り客が増加するなどにぎわいが戻りつつある。
 飯田常務自身も2年後には、ホテル泉慶の3代目の社長に就任する。「月岡温泉の魅力を高めて、若い人が働きたいと感じてもらえるような温泉地にする」。月岡温泉全体のリーダーとして、将来を見据えた街づくりと人づくりに挑んでいる。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

残業上限時間の設定

効果
月最大45時間まで(繁忙期は除外あり)
取組2

勤務シフトの細分化

効果
始業時間など勤務シフトを細分化することで、従業員の生活スタイルに合った働き方を提供する。

COMPANY DATA企業データ

株式会社ホテル泉慶

代表取締役社長:飯田 浩三
本社:新潟県新発田市
従業員数:300名(パート、アルバイト含む)
設立:1967年
資本金:4,600万円
事業内容:旅館、ホテル業

経営者略歴

飯田浩三(いいだ・こうぞう) 1969年明治大学卒業。78年にホテル泉慶に入社、93年から代表取締役社長。新発田市出身

飯田武志(いいだ・たけし) 1982年生まれ。独協大学卒業後、ベンチャー企業や外資系企業、神戸市の有馬温泉のホテルで勤務。2010年、ホテル泉慶取締役、13年から常務取締役。新発田市出身。