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株式会社ムロ井
卸売業,小売業
中部
50〜99人
File.193
ITの活用により業務の効率化とコミュニケーションの円滑化を実現 ―花と緑、そして自然が溢れる生活空間をトータルサポートする「株式会社ムロ井」の場合―
2025.03.25

株式会社ムロ井は、岡山県岡山市に本社を置く企業で、岡山県と広島県で計14店舗を展開。切り花の販売からガーデニング、エクステリアまで、花と緑、自然溢れる暮らしを提案している。創業以来、顧客満足を最優先に考え、品質の高い製品とサービスを追求してきた。働き方改革においては、同一労働同一賃金に取り組み、正社員とパート労働者間での公正な待遇を実現している。さらに、情報共有を促進するためにオンライン会議システムを活用し、全社的なコミュニケーションの活性化を図っている。また、ITやICTの活用により業務の効率化も進めている。今後も従業員が働きやすい職場を目指し、地域社会に貢献しながらさらなる改革に取り組む。
※この事例は、過去に働き方改革推進支援センターの支援を受けて働き方改革に取り組んだ企業が、今回更なる働き方改革、働きやすい職場づくりに挑戦したその過程と成果を取りまとめたものである。
これまでの取り組みとその成果
【取り組み内容】
働き方改革の更なる推進にむけて、自社の時間外労働、年次有給休暇の取得状況、同一労働同一賃金の実態について検討を行った。
その結果、まずは同一労働同一賃金の現状を確認するため職務分析・職務評価を実施することとし、正社員とパートタイム労働者の職務に関する情報を収集・整理して均等・均衡待遇の状況を確認し、課題点を洗い出しした。そして、課題点の改善を図ることで、正社員とパートタイム労働者の公正な待遇を確保し、人手不足の解消のため働きやすい職場環境を構築するとともに人材の定着を目指した。
また、従業員の長時間労働を改めるためITを活用し作業量と労働時間を短縮することにした。
【成果】
職務分析・職務評価を実施したことで正社員とパートタイム労働者の職務内容の比較ができた。これにより人材活用や賃金制度の課題が明確になり、改善策を講じることができた。その結果、正社員とパートタイム労働者の賃金の違いが明確になり、従業員への説明がしっかりと行えるようになった。
また、パートタイム労働者の中には定型業務を担っている者と複数の業務を担っている者がおり、これを整理できたことで経験・能力を持つパートタイム労働者を正社員と同様に活用できるようになり、人材定着につながった。
結果として、人材活用や賃金制度の見直しができ、従業員の満足度がアップするとともに、働きやすい職場環境構築の基礎ができた。
新たな課題
従業員は、本店と県内外14か所のショッピングセンターのテナント店に勤務し、ショッピングセンターの営業時間に合わせて、正社員の店長と数名のパートタイム労働者・アルバイトが交代勤務している。
職務分析・職務評価の過程で、支店の状況と本店との情報共有など会社全体を把握する必要があり、その結果「ムダ・ムラ・ムリ」の多くの改善課題が明らかになった。
【明らかになった取り組むべき課題】
(1)勤怠管理の効率化:手書きのタイムカードをFAXする管理からITによる管理に変更することで、勤怠管理を効率化する。
(2)情報共有と人材育成:支店に分散している従業員をオンラインで結び、会議や研修会を開催する。
課題感を解決し、目標を達成するためのプロセス
取り組みの経過
具体的なアクションステップ、実施方法、プロセス等
▶ステップ1[Plan(計画)]
(1)現状分析
① 支店にはタイムレコーダーがなく手書きしたものを本店にFAX送信。本店では紙のタイムカードをエクセルに転記し、それを印刷し修正している。
② 支店との情報交換は、電話とFAXで行っている。
(2)改善計画
① クラウド勤怠管理ソフトを導入し、作業量を削減し労働時間を短縮する。
② ITのコミュニケーションツールを使って従業員間の情報交換や会議・研修会に活用する。
▶ステップ2[Do(実行)]
① 本店のパソコンにクラウド勤怠管理ソフトを導入し、会社情報、拠点、従業員情報を登録した。インターネットを使えるタブレットを購入し支店に配布した。その結果、クラウド勤怠管理ソフトに全従業員の勤怠データを入力ができた。
② 導入したタブレットを活用し、本店と支店の間でメール送受信やタブレットのコミュニケーションツールを使ってビデオチャットができるようになった。
▶ステップ3[Check(評価)]
① 支店の従業員の勤怠データをリアルタイムに把握できることで、長時間労働にならないよう事前に対応できるようになった。
② 勤怠データの月末集計も支店のFAXを待つ必要がなくなり、本店での勤怠管理に要する労働時間が毎月10時間短縮された。
③ 支店の従業員とビデオチャットで意見交換でき、社内の情報交換と研修会に活用できる。
④ 従業員により勤務時間の違いがあるため、勤怠管理の方法を一部改良する必要が見えてきた。
▶ステップ4[Action(対策・改善)]
様々な勤務形態に合わせて勤怠管理ソフトのシフト管理、有給休暇管理、ワークフロー等の機能を活用することにより労働時間を短縮する。
基本給の設定や各手当の定義を明確にし、従業員から信頼される賃金制度にする。
社内メールやビデオチャットを有効活用し、従業員とのコミュニケーションを強化する。
働き方改革から始まった課題解決
近年、物価高騰などで生花小売業の経営環境は大きく変化している。また、人材不足対策、同一労働同一賃金、年次有給休暇の年5日の取得、長時間労働対策等多くの変化に適応しなければならないため、当社では、職務分析・職務評価の実施等、働き方改革への対応を進めた。
その過程で会社経営全体を見直すことができ、点在する店舗の課題が明確になり、具体的な改善策の策定につながった。
ITとICTが変えた会社の業務改善と従業員意識改革
〇 今までの勤怠管理の方法
支店にはタイムレコーダーがないため、勤怠管理は手作業で行っていた。具体的には、タイムカードに出退勤時間を手書きし、その情報を本店にFAX送信する。本店では、受け取った勤怠データをエクセルに手入力し、印刷した後にデータの修正をしていた。
〇 新たな勤怠管理の方法
勤怠管理の簡素化と労働時間の短縮のためにクラウド勤怠管理ソフトを導入した。
導入にあたっては、まず本店で勤怠管理ソフトを試験的に導入して検証した後に正式に全店で導入した。本店以外はインターネット環境がなく、支店にインターネット環境を新設しなければならず、検討の結果、LTEタブレットを全店に設置した。
その結果、従業員全員がクラウド勤怠管理ソフトを使って勤怠入力し、締切日の翌日には本店で全員の勤怠データを確認できるようになり、毎月約10時間程度あった転記作業が不要となりその効果は顕著であった。
また、全従業員が、勤怠管理方法が変化したことで、会社が働き方改革に取り組んでいることを認識でき、従業員の意識改革につながっている。
〇 タブレットによるメールとビデオチャットの活用
これまで本店と支店との情報交換は電話とFAXであったが、全店がインターネットでつながったことで、メールやビデオチャットを活用できるようになり、顔を見ながらの全体会議や研修会の取組は、従業員の意識を変えるとともにコミュニケーション強化につながっている。
働き方改革から始まった経営改革の道
〇 成功事例の振り返り
働き方改革の過程で、ITとICTを活用して勤怠管理や会社内の情報共有に関して顕著な成果を出したが、勤怠管理に関しては、まだ改善すべき点もある。
〇 次のステップへ
従業員が、ビデオチャットを使った、接客の研修を企画するなどの動きもあり、今まで取り組んできたITとICTを活用して成果を出した経験である「業務の洗い出し→課題の掘り起こし→解決策→成果」の過程は、他の業務でも応用することができる。
この経験をこれで終わらせるのではなくこれをスタートとして更なる経営改革を継続することが大切であり、会社発展の新たな道が開けると考えている。
今後の展望
働き方改革をきっかけとして、職務分析・職務評価に取り組む過程で、会社全体の業務状況等を把握した結果、業務効率化等の課題が見つかり、勤怠管理や社内の情報共有にITを活用することになりました。
点在する支店の勤怠データをクラウド勤怠管理ソフトで処理することができるようになったため、手作業の集計作業がなくなり労働時間を大幅に短縮できました。また、ビデオチャットを使い遠方の支店従業員と顔を見ながら会議や研修ができる環境が整備され、今後は人材育成などへの活用を考えています。これを契機に更に従業員が働きやすい職場になるように働き方改革を進めていきたいと思います。
代表取締役の室井賢次氏
VOICE 従業員の声
タブレットの活用で意思疎通が円滑になり、一体感が生まれました
2017年入社の本社販売管理の河原倫巳さんは、今回の取り組みを振り返って次のように話してくれた。
「全支店にネット環境が整備され、ビデオチャットを通じて遠方の支店と顔を見ながらコミュニケーションができるようになりました。これにより、意思疎通が一層スムーズになっています。
また、タブレットを活用することで、メールの一斉送信ができ時間の短縮につながりました。
従来の紙のタイムカードによる出退勤の打刻もタブレットで行えるようになり、利便性が向上しました。支店の全従業員が一緒に会議や研修に参加できることで、会社全体の一体感が生まれています。
今後、タブレットを活用しながら、みんなで工夫を凝らし、より良い会社を目指していきたいと考えています。」
本社販売管理の河原倫巳さん(2017年入社)
株式会社ムロ井の取り組みを支援した社会保険労務士の宮地義孝氏は次のように語っている。
「クラウド勤怠管理ソフトを支店に導入した後のイメージを説明し、その結果や、作業量の削減と労働時間の短縮の効果を説明しました。この際、事務担当者に負担がかからないように配慮しました。
点在する支店にインターネット環境がなく、当初はポケット型Wi-Fiでインターネットにつなぐ計画でしたが、法人での契約ができない想定外の事態がありつつも、最終的には大幅な作業量と労働時間の削減ができました。
技術革新は急速に進んでいますので、ITやICTの活用により、働きやすい職場環境を目指してもらいたいと思っています。新たな挑戦で前進されることを期待しています。」
支援を担当した社会保険労務士の宮地義孝氏
CASE STUDY働き方改革のポイント
働き方改革から始まった問題解決へ
- 効果
- 職務分析・職務評価で職務の棚卸を実施した。その過程で経営課題が明確になり、それを改善するためにITとICTを活用することになった。
ITが変えた業務改善と従業員意識改革
- 効果
- クラウド勤怠管理ソフトの導入による、作業量と労働時間の劇的削減の取り組みは、毎日の勤怠記録の効率化とともに、従業員の意識改革となる。
働き方改革から経営改革の道へ
- 効果
- 業務の洗い出し→課題の掘り起こし→課題解決した経験を、業務全般で取組み、挑戦しながら、経営改革と働きやすい職場をめざす。
COMPANY DATA企業データ
株式会社ムロ井
代表者:代表取締役 室井 賢次
所在地:岡山県岡山市
従業員数:69名(2024年12月現在)
設立:1990年12月
事業内容:岡山市の本店と岡山県内及び広島県福山市のショッピングセンター内テナント14店で生花と関連商品を販売