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学校法人東雲学園イナバ自動車学校
教育,学習支援業
中国・四国
50〜99人
File.202
業務の平準化を進め、繁忙期の休日出勤ゼロ、年間休日の増加を実現 ー県内トップクラスの広さで、丁寧な教習を実施する「学校法人東雲学園イナバ自動車学校」の場合ー
2026.03.27
学校法人東雲学園イナバ自動車学校は、1962年1月に開校し、鳥取県下一の広々とした教習コースを持ち、大型二種をはじめフォークリフトやドローンまで、あらゆる免許を取得できる自動車教習所である。丁寧な指導を心がけ、「お客様本位の自動車学校」という理念のもと、地域の交通安全センターとしての役割を担い、企業や幼稚園、学校向けの自転車を含む交通安全講習や、高齢者講習などを多数実施し交通事故のない社会を目指し、地域への貢献を目指している。働き方改革においては、業界特有の業務の繁閑実態に合った労働時間制とするため、所定労働時間の設定について見直しを図り、時間外労働の削減に取り組んできた。
※この事例は、過去に働き方改革推進支援センターの支援を受けて働き方改革に取り組んだ企業が、今回更なる働き方改革、働きやすい職場づくりに挑戦したその過程と成果を取りまとめたものである。
これまでの取り組みとその成果
【取り組み内容】
自動車学校の特徴である繁忙期と通常期における業務の繁閑の差がかなり大きく、繁忙期の時間外労働がかなり多くなるという状態であった。そのため、働き方改革関連法への対応の一つとして、業界特有の業務の繁閑実態に合った労働時間制度とするため、所定労働時間の設定について見直しを図った。具体的には3ヵ月単位の変形労働時間制の導入を行い、より繁閑の差に対応できる勤務計画を立て、時間外労働の削減に取り組んだ。
また、時間外労働の削減に伴い職員の収入が減少することがないように、時間外労働の割増賃金率について法定以上の50%へ引き上げを行った。
【成 果】
実態に合った労働時間制度の導入により、時間外労働の削減にはつながるが、同時に書き入れ時である繁忙期の時間外労働削減による職員の収入減少が懸念された。これを防ぐために、どの程度の時間外労働割増率を設定すれば職員の収入を維持することができるかという、シミュレーションを綿密に行い、法定以上の割増率を設定したことで、時間外労働の削減と職員の収入維持を同時に達成することができた。それにより「しっかり働く、しっかり休む」というメリハリのある働き方を実現することができ、職員のモチベーションアップにもつながった。
繁忙期の時間外労働最長100時間程度が、最長でも60時間程度と大幅な短縮に繋がった。
新たな課題
上記の取り組み後、メリハリのある働き方を実現できた。しかし、顧客ニーズの増加する繁忙期(1~2か月程度の繁忙期が年2回)については、教習数を確保するため、元々所定休日の設定自体も少ないところにさらに、休日出勤を命じざるを得ないことも多く、実休日数としては極めて少ない状況が多年に渡り継続していた。そのため、いくら「メリハリのある働き方」とはいえ、繁忙期の期間は、職員にとって身体的・精神的に負担が大きい時期となっていた。そこで、さらなる取り組みとして、繁忙期の職員の負担減について取り組みを進めていくこととした。
課題感を解決し、目標を達成するためのプロセス

具体的なアクションスッテップ、実施方法、プロセス等
▶ステップ1【Plan(計画)】
前回の取り組み後の時間外労働時間の状況を改めて調査・把握。取り組み前に比べると大幅な削減は達成し、36協定で定めた上限時間数は遵守できていたものの、繁忙期の時間外・休日労働は、最も多い職員で月78時間程度と決して少なくない状況であった。そのため、今回の計画では、繁忙期の時間外・休日労働をより削減し、職員の精神的・身体的負担を軽減させることを計画。
▶ステップ2【DO(実行)】
繁忙期の勤務において、職員の大きな負担となっているのが、休日出勤であったため、その削減に取り組むこととした。これまでは休日出勤することを前提とした勤務計画を組むことが慣例となっていたため、まずはそこにメスを入れることとした。「繁忙期にいかに多くの教習数を確保するか」を重視し、繁忙期頼りの経営にもなっているという実態もあったため、受け入れ生徒数を見直し、休日出勤をしなくても教習運営に影響がないよう調整を行った上で勤務計画を立てた。また、繁忙期の売上げ減少の影響を緩和させるため、繁忙期以外の通常期における普通車以外の教習の充実を図った。
▶ステップ3【Check(評価)】
繁忙期(8~9月)の中間段階で評価を行い、その時点で休日出勤0を達成できていることを確認した。当期間の売上げの減少を最小限に抑えつつ、休日出勤なしで教習業務が遂行できる最適なバランスとなるよう、勤務計画表を作成した結果、繁忙期終了時点の再評価の結果、繁忙期全期間を通じて休日出勤を0とすることができた。
▶ステップ4【Action(対策・改善)】
年間を通じた月々の時間外・休日労働(業務量)の差は徐々に平準化されてきてはいるが、今後さらなる平準化を目指す。具体的には、所定休日数の増加、年次有給休暇の取得促進についての取り組みを部署毎の体制にあった形で開始する。
繁忙期の休日出勤を0に
繁忙期においては、休日出勤をすることが当たり前となっており、休日出勤が予め計画的に組まれている状態だったところ、休日出勤を命じなくても教習業務が遂行できる程度に受け入れ生徒数・教習数の設定の見直しを行い、勤務表の作成の仕方を改めた。職員の勤務状況や教習状況等について中間評価、最終評価を行った結果、2か月間の繁忙期において休日出勤0を達成することができた。これは、受け入れ生徒数・教習数の減少を最小限に抑えられるよう配車計画の工夫を行った、配車担当職員の尽力もあって達成できた部分も大きかった。稼働日数が減少する分、売上げの減少に直結してしまうという懸念はあったが、いくら繁忙期とはいえ頻繁に休日出勤を命ずることは、身体的・精神的に大きな負担がかかるうえ、モチベーションの低下にも繋がりかねないため、覚悟をもって取り組みに着手した。
・取り組み前から本年繁忙期終了時点までの改善状況は以下の通りとなっている。
(取り組み前) 2017年9月:最も多い者100時間 学校全体の平均82時間
(前回の取り組み後) 2022年9月:最も多い者 78時間 学校全体の平均43時間
(今回の取り組み後) 2025年9月:最も多い者 60時間 学校全体の平均24時間
売上げ・業務量の平準化のため通常期の教習を充実
繁忙期の受け入れ生徒数を制限することで、繁忙期における「学校全体の売上げ減少」、「職員の残業時間の削減による収入低下」に繋がってしまうことを懸念。
そこで、繁忙期以外の通常期における教習の数・種類を例年以上に充実させ、大型特殊免許・二輪など、普通車以外の教習を増やし、積極的に受け入れることとした。そして、こうした普通車以外の教習は、普通車の教習に比べると職員にとって負担が大きいため、普通車以外の教習を担当した場合に支給される「特車手当」を新設し、職員のモチベーションアップを図った。
また、ドローン資格の取得講習や子供むけのプログラミング教室など、自動車教習以外の新たな事業にも取り組んでいる。
これらの取り組みにより年間通じた売上げの維持、業務量の平準化につなげることができた。

大型免許などの教習も充実
さらなる取り組みとして休み方の改革へ
「休み」部分のさらなる改革として、所定休日の増加について取り組んだ。現在3か月単位の変形労働時間制を採っているため、各変形期間に例年と比べ1日ずつ休日を増やし、結果的に年間4日の所定休日の増加につながった。ただし、部署によっては、直ちに所定休日を増やすことが難しい部署もあったため、まずは特定の部署から取り組み、今後他部署へも横展開していく。所定休日の増加が難しい部署については、それに代わる取り組みとして年次有給休暇取得促進のための周知文書を作成することとした。具体的な数値目標等の設定を行うとともに、職員に、より自分事に感じてもらい、やらされている感を軽減させるための工夫としてトップと職員代表との連名でのメッセージ発信を行った。
また、職員から孫のために使える休みがあると嬉しいとの声もあったため、積立年次有給休暇制度の運用に向けたルール等も検討している段階である。

今後の展望
今回の取り組みを踏まえ、理事長の安住学氏は、今回の取り組みを振り返り、今後の展望について次のように語っている。
「市場の変化と従業員の価値観の多様化に対応し、企業も変わらなければなりません。『現状維持は後退』との危機感を持ち、労務改善に取り組んでいます。繁閑の波が大きい業界ですが、残業や休日出勤の削減を進め、従業員が実感できる改善を実現できたと思います。
今後は継続的な変化を追求し、安心して働ける環境つくりを推進します。さらに、地域に根ざした『学びの場』の提供や年次有給休暇の取得促進を通じて自主性と活力ある組織の構築を目指しています。」

今後の展望を語る理事長の安住学氏
プライベート時間の確保ができることでもっと仕事が好きになれました!
2023年入職の教務課の小島沙嬉さんは、今回の取り組みを振り返って次のように話してくれた。
「繫忙期になると心にゆとりがなくなっていると思うことがありました。今回、労働時間と休日数の見直しにより、繁忙期でも週一回の休日を確保できるようになり、趣味やプライベート時間を持てるようになりました。
この時間確保が心のゆとりにつながり、仕事への気持ちも前向きになりました。
休日の増加により仕事と休みのメリハリがつき、職員や友人からも『最近楽しそうだね』と言われることが増え、仕事と私生活のバランスが改善されました。」

今回の取り組みについて語る 小島 沙嬉氏(教務課 2023年入職)
学校法人東雲学園イナバ自動車学校の取り組みを支援した社会保険労務士の吉田佳寿美氏は次のように語っている。
「これまでも様々な課題の改善に向けて取り組み、成果を出しておられる事業主ですが、それに満足することなく、さらなる改善に取り組む姿勢を大変素晴らしいと感じ、より働きやすい・働き続けたいと思える職場づくりのサポートに努めました。
『こういう風な職場にしたい、こういう感じの雰囲気になれば…』という担当者の理想やイメージを丁寧にヒアリングし、より具体的な取り組みとして落とし込み、アドバイスや提案を行いました。業界特有の「繁閑差」もあり一辺倒な制度導入ではうまくいかないため、『どうすればこの職場になじむ制度となるか』について特に重点を置き、協議・検討を重ねました。」

取り組みを支援した社会保険労務士の吉田佳寿美氏
CASE STUDY働き方改革のポイント
繁忙期の休日出勤を0へ
- 効果
- 受け入れ生徒数、教習数の見直しにより、繁忙期においても「所定休日は休みの日」という当たり前の状態をつくることができた。
年間通じた業務量を平準化へ
- 効果
- 通常期における教習の充実、さらに手当の新設により職員のモチベーションアップを図ったことで年間の業務量を平準化することができた。
さらなる休み方の改革へ
- 効果
- 所定休日の増加、年次有給休暇取得促進の取り組み、積立年次有給休暇制度の導入など「休み」の部分に対しさらなる改革を実施。
COMPANY DATA企業データ
安全運転の普及を通じて社会に貢献する
学校法人東雲学園イナバ自動車学校
代表者:理事長 安住 学
所在地:鳥取県鳥取市
従業員数:67名※2025年12月現在
設立:1962年1月
事業概要:鳥取県公安指定自動車教習所として1962年に開校。以来50年以上にわたり優良なドライバー育成に努めている。鳥取県下一の広いコースを使用した快適な教習、親切丁寧な教習を職員一同心がけている。近年ではドローン国家資格講習や小中学生を対象としたプログラミング教室の運営など、地域に必要とされる学校を目指している。
