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株式会社ときわ

業種

生活関連サービス業,娯楽業

地域

中国・四国

従業員数

100〜300人

File.28

全社員オールラウンダー化が可能にする「自律した働き方」 ―「本物」のブライダルを実現「ときわ」の場合―

生産性の向上による処遇改善

2020.09.24

株式会社ときわ

 人生の新たな門出となる結婚式。ブライダル関連事業を手掛ける「ときわ」(徳島市)は、多くの人々のライフステージの節目を彩ってきた。1966年に貸衣装店として出発し、現在は徳島県内だけでなく、香川県や沖縄県でブライダル・コスチューム店や結婚式場、レストランを営む。全社員を「オールラウンダー」として育成することで、「自律した働き方」を実現した。

女性が活躍できる職場を目指して

 髙畑富士子社長は、現会長の宏比さんとの結婚を機にときわに入社。2015年に社長に就任した。「ブライダルは時代とともに変化していくビジネス。それでも『良い衣装と建物を提供する』といった根底は変わらない」と話し、「『本物』は時代を超えていく」と力を込める。

 管理職の男女比率は女性が55.6%に上る。昨年に育休を取得した男性社員4名、女性社員4名が全員復帰。「子育てサポート企業」として厚生労働大臣から認定を受ける「くるみん認定」を16年、今年と2度受けた。今や、女性の新卒採用の倍率は約10倍の人気企業だ。

 女性活躍への取り組みが目覚ましいが、かつては女性社員の定着率の低さに悩んでいた。髙畑社長は「40年以上この業界で勤めてきたが、出産、結婚を機に辞めてしまう。人材確保という部分でいつも苦労していた」と振り返る。

女性が活躍できる職場づくりについて語る髙畑富士子社長

「女性活躍」改革の結果、男性社員も育休取得

 2008年、子育て中の女性社員たちの声によって改革は始まった。業務の性質上、土日も出勤せざるを得ないことから、「土日も子どもを預かってくれる保育所があったらいい」という意見が上がった。髙畑社長はすぐさま動き、地元の保育所と提携。土日祝の単発保育に関しては保育費用の7割を会社が負担した上で、土日に子どもを預けられる仕組みを整えた。

ときわの働き方改革の取りまとめ役を務める小崎みどりさん

 現在、働き方改革を進める上で取りまとめ役を務めるのが、執行役員で3児の母である小崎みどりさんだ。小崎さんは当時を「本当にありがたいと思った」と述懐。その上で「『お母さんは仕事が楽しそう』と子どもによく言われます」と笑顔を見せる。
 2017年には事業所内保育園「カラーズインターナショナル保育園北島園」を開園。土日祝も開園しており、社員の子どもだけでなく、地域の子どもたちも受け入れる。法定では「未就学児まで」とされている子どもの看護休暇を、小学3年まで付与。入学式・卒業式のための休暇制度など、支援は当時よりもさらに手厚くなった。

 同社の制度を利用するのは女性社員だけではない。2児の父でサービス部チーフの福良俊之さんは、長男、長女の誕生時に育休を1週間ずつ取得した。「長男のときもありがたかったが、長女が生まれる際は私が長男の面倒を見ることができ、とても助かった」と振り返る。また、「子育てに対する社長、会長の理解があり、非常に心強く思う」と話した。

「お客様起点」が実現させた完全フレックスタイム制

 同社は2002年に「ノビアノビオ」(徳島市)をオープンし、結婚式場・レストラン・各種宴会などの事業を始めた。それまで日中に勤務していた社員が大多数だったが、夜間に勤務する社員が増え、勤務体系が多様化していた。
 当時、ほとんどの社員がそろった状態で朝礼を行っていたが、「全員がそろう形での朝礼は必要なのか」との問題意識から、レストランのキッチンスタッフなどからフレックスタイム制を導入し、全社員に対象を広げていった。2010年からはコアタイムなしの完全フレックスタイム制となった。
 フレックスタイム制の導入に、プランナーの日下彩香さんは「お客様の予定を見ながら柔軟に自分の予定を作ることで、エステや旅行など、自分磨きに時間を使うことができている」とうれしそうに語る。
 ときわでは勤務状況を日数ではなく、時間で考える。そのため、勤務途中で子どもの授業参観など、学校行事に参加するために「中抜け」することもできる。コアタイムがないため、出社、退社時間も自分で決める、まさに「自律」した働き方だ。
 そうした変化を可能にしたのが、同社の「お客様起点」という考え方だ。日々向き合う顧客の都合はそれぞれ違う。例えば「午前9時~午後5時」といった具合に全社員が対象の「コアタイム」を設定してしまうと、顧客の都合によっては残業が発生する可能性が高い。これを逆手に、勤務時間を固定するのではなく、来客の時間帯に合わせた勤務時間とした。効果は数字にも表れ、月平均残業時間は2014年から2019年には約20%減少し20.8時間となった。

今年7月に育休から復帰した日下彩香さん

 日下さんは長女を出産し、1年の育休を経て7月に復帰した。今後の目標について「仕事を楽しんでいる姿を見てもらって、娘に『私のママかっこいいな』と思われたい。背中で語る母が理想ですね」とはにかむ。

長男、長女の誕生時に育休を取得した福良さん。取得中は「子育てについての母親の苦労が分かった」と話す
「背中で語る母が理想」と話す日下さんと家族の様子

自分の働き方、役割を自ら考えられる社員を育てる

 充実した子育て支援、柔軟な働き方を可能にする秘密は「全社員のオールラウンダー化」だ。部署を超えたジョブローテーションを頻繁に行い、全く違う分野の業務を複数経験させる。
 髙畑社長は「どうしても育休などで人手が足りなかったり、季節ごとに忙しかったりする部署が出てくる。そういった際にすぐにフォローできる体制を作るためです」と説明する。
 全社員が複数業務を行える「オールラウンダー」になることで、お互いをフォローし合える。また、どんなにキャリアを積んでいても、気が付くとそのスキルが古いものとなっていることもあるかもしれない。そうした考えが根付くことで、「異動をチャンスと捉える社員も多い」(髙畑社長)という。これもジョブローテーションの効果といえるだろう。

 社是は「自由・自律・自走」。髙畑社長は「ときわには自走が得意な社員が多い」と語る。自分の働き方、役割を自ら考えられる社員が育つことで、社員一人一人が納得した働き方を実現できる。働き方改革成功の裏には、「自律」を目指した組織づくりがある。

アフターコロナを見据え……

 新型コロナウイルスの感染症の拡大に伴い、挙式の延期、キャンセルなどで5月の売り上げは大幅なマイナスとなった。そうした状況下において目指すのは、「ブライダル事業以外の売り上げ強化」だ。すでに自社レストランでのケータリングサービスに着手。ほかにも「原点回帰の貸衣装部門の新規事業」「さまざまなノウハウを持った社員の能力を生かしたコンサルティング・講師派遣事業」を実現すべく、構想を進めている。
 働き方にも変化があった。各自が業務状況に応じ休暇を取得し、また、フレックスタイム制を利用した。そのほか、コロナ禍の中、福利厚生の一環として6~7月には、社員がレストランのキッチン担当が腕を振る舞った料理を原価内の料金で持ち帰ることができる取り組みを実施した。

レストランのキッチン担当が作った料理を持ち帰る社員。一連の取り組みは「ときわサポーターズクラブ」と呼ばれている

 髙畑社長はこれらの取り組みについて、「スタッフ同士の結束を強めることはもちろん、時間がたくさんできてしまったことによるモチベーション低下を防ぐ意味もある」と説明する。その上で「ウィズコロナ、アフターコロナでも勝ち続けられる事業、働き方を作ることが理想」と前を見据えることで、同社の働き方改革は、新しいステージへと進もうとしている。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

女性活躍の取り組み

効果
事業場内保育園を含む指定2カ所の保育所の土日祝の利用費70~80%を会社負担。法定以上の子ども看護休暇制や入学式・卒業式のための休暇制度など、充実した子育て支援制度を整えている。
取組2

コアタイムなしの完全フレックスタイム制

効果
勤務状況を日数でなく時間で考え、コアタイムなしの完全フレックスタイム制を実施。勤務途中での「中抜け」も認め、柔軟な働き方を可能にした結果、月平均残業時間が20%減少した。
取組3

ジョブローテーションによる全社員オールラウンダー化

効果
部署を超えたジョブローテーションを頻繁に実施。全社員をオールラウンダー化することで育休や繁忙期に人手が足りなくなった部署にすぐにフォローできる体制を構築した。

COMPANY DATA企業データ

伝統と未来を結ぶ、感動ウェディング。

株式会社ときわ

代表取締役社長:髙畑富士子
本社:徳島県徳島市
社員数:140名(正社員110名、パート30名)(2020年7月現在)
設立:1966年11月
資本金:3,600万円
事業内容:ブライダル関連衣装のレンタル並びに関連商品の販売、旅行・保険・式場紹介・国内外リゾート挙式プロデュース、結婚式・披露宴他各種パーティの企画運営・婚活支援・宿泊

経営者略歴

髙畑富士子(たかはた・ふじこ)1955年生まれ。1978年、早稲田大学教育学部卒業。同年に青森放送入社。1980年に結婚を機にときわに入社し、1993年に取締役常務に就任。代表取締役専務を経て、2015年から社長。