ホーム > 株式会社トレンディ茨城
株式会社トレンディ茨城
その他
関東
30〜49人
File.77
業務マニュアルの作成で業務の効率化と年次有給休暇取得を向上 -茨城県下に配送網を敷く「トレンディ茨城」の場合-
2021.10.29
水戸ヤクルト販売のグループ企業として1978年に設立された株式会社トレンディ茨城(茨城県水戸市)。ヤクルト製品の配送事業を主軸に、自動販売機のベンダー事業、物販事業、保険事業など、さまざまな事業を展開している。ヤクルト製品の配送エリアは県内の東半分という広範囲をカバーしている。
ドライバー全員が自ら考えた配送ルートの標準化
七代目の社長に就任した伊藤忠士さんは、社内に時間的な余裕が感じられないことや年次有給休暇の取得率が低く、社員の定着率もよくないことなどが気がかりだった。また、社員教育や能力育成の時間も充分に確保できていないことも課題と考えていた。運輸業は長時間労働で休みが取りづらいというイメージを払拭し、職場環境の改善や人材確保も考慮したうえで、2018年から働き方改革に取り組んだ。
まず取り組んだのが配送ルートの標準化。32あるヤクルトの宅配センターへのルート選びはドライバー任せだった。遠回りだが安全なルートを走る、目的地に早く着くが気を遣うルートを走る、という具合に一人ひとりの判断で行われていた。新人への教え方もバラバラで統一されていなかったのだ。
そこで、すべてのドライバーを2チームに分けて普段走っているルートを出し合う会議を開き、「どれだけ効率的に走れるルートか」「事故を起こしにくい安全なルートか」という2つの視点からルートを絞り、最終的にはA、B両チームが納得できるバランスの取れたルートが選定された。
それに伴って業務マニュアルを作成した。各部署のヒアリングを通して業務の標準化と手順が共有化され、業務効率が向上した。ドライバー用には文書ではなく、運転席からの視点による動画マニュアルも作られた。ルートを標準化したことで新人の育成時間やコストが削減されただけでなく、どの先輩と一緒に走っても同じルートを教えてもらえることで混乱も解消したという。ルートによって特定のドライバーに負担が集中することもなくなったことは大きなメリットだ。
「動画マニュアルの作成では、みんなで話し合う、自分たちで決める、という意識が定着しました。ドライバー同士が議論する過程が重要でしたが、全員が業務の標準化に前向きに取り組んでくれたことは大きな成果でした」と伊藤社長。さらに、デジタルドライブレコーダーの導入でリアルタイムな運行状況が可視化され、安全運転やエコドライブなどへの視野も洗い出せるようになった。それまで手書きだった日報は作成時間が短縮されただけでなく正確な記録が残るようになった。
入社後6年になる萩谷太守さんは、マニュアル作成時の印象を「安全度が高くても時間がかかる、時間はかからないけど気を遣う。どのルートがいいのかをドライバー全員が参加して話し合えたのはよかった」と振り返る。新人が入ってきても動画でルートを教えられるメリットは大きいとも。気を付けているのは安全。「配送中でも、ヤクルトという看板を背負っていることを自覚しながら安全運転を心がけています」。
コミュニケーションを深めたユニークなチーム制
物流部門では、社員同士のコミュニケーションを深め、情報共有を活性化するために「チーム制」を採用している。発案者の谷萩寬子取締役は「人にはそれぞれ得意な分野、これだけは負けないという分野があるはずです。そうしたそれぞれの持つ強みを発揮してもらうために作りました」と語る。
人とのコミュニケーションが上手な人の「ひとチーム」、車の運転が得意な人の「おくるまチーム」、いろいろなものにこだわる「ものチーム」、業務上の各種認証に携わる「認証更新チーム」。管理職以外の物流部門全員がどれかのチームに参加する。チームリーダーが1人付き、業務のマネジメントだけでなく、年次有給休暇取得を勧めたり、個人的な相談にも乗るという。
チーム制ができてから横の繋がりが強くなったという。それまでは自己流だった社員もチームの一員としての自覚を持ち、メンバー間には業務への積極的な意識と責任感も芽生えたそうだ。
そんな会社の雰囲気を、今年の4月に入社したばかりの中野桜花さんが語る。「去年の8月に職場見学をしたとき、働きやすそうな雰囲気に引かれて入社を決めました。入社後もその印象どおりで、先輩や上司は丁寧に教えてくれるので無理なく働けています」。自分に後輩ができたら、同じように優しく丁寧に接したいとも。休日はちょっと年の離れた小学4年生の妹に会うのが楽しみ。「ずっと働いていたくなる会社です」と笑顔で話してくれた。
さまざまな施策が年次有給休暇の取得率を大幅に向上
働き方改革を開始してからの3年間で、若手ドライバーの離職率が大幅に減少し、平均勤続年数も伸びた。経験と知識が豊富なベテラン社員が若手を育成するという好循環が生まれている。ジョブローテーションの推進もあって、社員同士が業務を調整し合い、いつでも休めるという、働きやすい社風が根付いた。その結果、年次有給休暇取得率は2017年の16%から2019年の80%へと大幅に向上した。これはチーム制による良好なコミュニケーションも大きく影響しているようだ。
年次有給休暇が取りやすいと語るのは富永宗孝さん。「平日に子どものイベントなどがあっても休みが取りやすくて助かります」。入社して3年目だが、当初からすんなりと仕事になじめた。「3交代制ですけど、どのシフトも残業もなく所定の終業時間どおり終わります。朝早く終わる日はすぐに帰るのがもったいないので、趣味の釣り具店に直行しています。時間を有効に使って楽しんでいますよ」と笑う。
健康面にも力を入れている同社は、県内でもいち早く「健康づくり推進宣言」を行い、2016年に「健康づくり推進事業所」の認定を取得。翌年には県内で第1号となる「健康経営優良法人2017(中小規模法人部門)」となり、2019年まで3年連続で認定された。
また、1日1本のヤクルト支給、血圧計、体重計などの健康器具も設置している。2020年からドライバーには脳ドックを、女性にはマンモグラフィ検査を実施。さらに、歯の健康教室や薬剤師を招いての健康教室も開催。敷地内もトラック内も禁煙と徹底している。
こうした健康経営も含め、2021年4月には「働きやすい職場認証制度」の一ツ星に認証された。伊藤社長は「基本は人。社員一人ひとりの健康を考えながら、全員が満足度の高い会社と誇れるよう、業務改善を推進していく」と結んでくれた。
「いい人ばかりで、変に気を遣うことはありません。皆でひとつの仕事をやろうという仲間意識があります」と入社14年目の浅川雄一さんは働く人への配慮が行き届いていると語る。「休日や有給休暇の取り方でも要望を聞いてくれるので、小さな子どもがいる家庭は助かります。会社で実施してくれる脳ドック検診はドライバーとしてはとてもありがたいと思っています」。健康面のフォローを始め、働きやすい環境が実感できると語った。
CASE STUDY働き方改革のポイント
業務マニュアルの作成
- 効果
- マニュアル作成に向けたヒアリングから、組織としての業務標準化や効率化に繋がった。ドライバーによってバラバラだった配送ルートを標準化したことで配送の効率化ができ、動画によるマニュアルは新人への教育や習熟の短時間化が図れた。
物流部にチーム制を採用した
- 効果
- 業務目的に応じたチームを編成することで、リーダーを中心にメンバー間のコミュニケーションが深まった。年次有給休暇の取得促進、個人面談など、一人ひとりに丁寧に接することで個人の持つ能力を引き出すことができ、風通しのよさ、社員の定着化にも役立った。
ICTシステムの導入
- 効果
- デジタルドライブレコーダーの導入で、リアルタイムの運行状況、日報作成、安全運転状況などの把握が容易になった。これによって作業時間の可視化、効率化できる時間の洗い出しができ、動画の業務マニュアルへの活用も可能となった。
COMPANY DATA企業データ
健康経営で働きやすい環境作りと生産性をアップ
株式会社トレンディ茨城
代表取締役:伊藤忠士
本社:茨城県水戸市
従業員数:34名(2021年6月現在)
設立:1978年12月
資本金:2,000万円
事業内容:一般貨物運送業、保険代理店、ベンダー、ウォータ-サーバー、販売事業、労働者派遣
経営者略歴
伊藤忠士(いとう・ただし) 1980年10月水戸ヤクルト販売(株)入社。2016年5月水戸ヤクルト販売(株)常務取締役、同年12月(株)トレンディ茨城代表取締役社長。2018年5月水戸ヤクルト販売(株)専務取締役に就任。