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和光技研工業有限会社

業種

製造業

地域

北海道・東北

従業員数

10〜29人

File.85

きめ細かくユニークな改革で大きな結果を生んだ ―精密挽物加工の「和光技研工業」の場合―

多様な休暇制度

2021.11.09

和光技研工業有限会社

 宮城県南部、人口3万8000人ほどの柴田町にある「和光技研工業有限会社」。1977年の創業以来、高精度・高性能を追求するという基本方針のもと、精密挽物部品加工を通じ地元はもとより東日本全般に貢献してきた。

「個人商店化」の解消を目指して

 2020年に代表取締役に就任した渡邊琢也社長は創業家の3代目。統計学を学び製薬会社勤務を経て29歳の時に和光技研工業に入社した。折しもリーマンショックの影響で仕事は少なく、残業もなくなっていた時だった。「仕事が戻っていく段階でも残業をしないままやっていける方法はないかと、そのタイミングから考え始めました。私自身、残業はするのもさせるのも嫌いなので、どうしたらしないで済むかと」。

入社以来働き方改革に挑んできた渡邊琢也社長

 職場をよく観察してみると、忙しくない人と常時仕事が集中する人がいることに気づく。前職はプロジェクトチーム単位でする仕事だったため強い違和感を覚えた。特定社員にしか動かせない機械、できない仕事があるなど、人によって業務の隔たりが生まれるいわゆる「個人商店化」(渡邊社長)が顕著だった。加工〜検査〜二次加工と個人で完結する仕事ではないにもかかわらず、コミュニケーションが取れていない。他の人の仕事は自分には関係ないというのが当たり前だった。

 年次有給休暇の取得率も20%程度と低いのも気になった。これも業務の属人化が影響していると思い当たった。休んでも自分の仕事はそのまま残り、自分で解消しなければならずかえって辛くなるので休みたくない。休みを取ってもいいことがあまりないという悪循環が起きていた。子どもの行事などで取得するケースはあったが、取らない人はまったく取らない状況だった。

多能工化を推進

 解決策の第一は「多能工化」だった。「この機械はAさんしか使えない」という状態をなくすため、4〜5年前に担当の機械をすべて変えた。1人が2〜3台を担当するうち1台を隣の人に渡す。初めて触る機械は習得に1年ほどかかる。それを社員間で教わりながら、教えながら、コミュニケーションを取りつつ学んでいく。これを続けることで個人が扱える機械が増え、誰かが休んでも大丈夫という基盤ができた。

2代目の渡邊惣吉会長自らも様々な機械を操る

徹底した時間管理

 週初めのミーティング時に管理職がスケジュールを調整し、各人の手が空いている時に「仕事が滞っている社員のサポート」をするようにした。

 人がつききりでないと動かせず、1人が同時に1台しか扱えない機械もある。昼休みを11:30〜と12:30〜の交代制にし、当初の12:00から30分ずつずらすことで1台しかない機械の1時間分の残業を解消した。

 出勤時間を7:00、7:30、8:00の3パターンから選び担当を調整することで、お昼休みと合わせて2時間の残業の解消になった。こうした細かい工夫が大きく影響するのだという。

社員間コミュニケーションの活性化

 以前は工場内に各々個人の机があったが2年ほど前に撤廃し、フリーアドレスにした。それまで机は私物で占領され作業には使われておらず、機械の前に座るのでそもそも机を置く必要性もなかったからだ。思い思いの場所で作業ができることで、コミュニケーションの活性化にも役立っている。

個人の机を撤廃しフリーアドレスを導入

 

 以前は他の社員が何をしているかわからない。言ってくれれば手伝うのに誰にも言えない・言わないという状況だったが、皆が仕事のシェアを快く受けるようになった。これが「この日休む」と言える環境にも繋がったのではと社長は考える。

「自由な金曜日」の創出

 年次有給休暇取得の奨励もしたが、子育ての都合で年休の残日数に余裕がない社員もあり、使いたくないのに使わされるという状況が起きた。そこで思いついたのが「自由な金曜日」だ。月初めの金曜日に設定し、年休を取りたい人には取ってもらい、取らずに出社した場合は何をしてもよいという内容だ。「極端な話、談話室の大型テレビでゲームをしていてもいいのです。多能工で全員が協力して仕事を前倒しし、1日休める余裕を作ろうというモチベーションにもなっていると思います」。

 経営側のこうした考えが浸透し始め、「自由な金曜日」に出社せず、年休を取る社員も多いという。同時に時間単位の有給制度を導入し、より気軽に取得できるようにした。こうして20%程度だった年休取得率は97%を達成したという。

 かつて年間休日は99日だったが少しずつ増やし、2021年には103日に。目標は完全週休2日制を達成し120日をクリア、ゆくゆくは週休3日までもっていきたいと社長の中で長期計画を立てている。会社を成長させていくために経営企画室などを作り専門の社員を置きたいというのも目標のひとつ。正社員だけれど週3日や4日の出勤でプロジェクトに参画するとか、時短勤務など個人の都合や家庭環境に対応するための働き方を選べるようにしたいと話す。

社員の声

 転職で和光技研工業に入社し7年目の伊藤さんは製造・工作機械のオペレーターとして働く。「この会社に入って、人生で初めて遊びにいくために年休を取りました。前職では年休は毎年すべて捨てていたので、取れた時の感動はいまだに覚えています」。年休の申請時に理由を聞かれることがなく、1日休も半日休も気軽に取れるという。会社近くの自宅から7:00に出勤し16:00過ぎに退社、残業はなく時間に余裕のある生活が送れているという。

半休、時間給なども申請しやすく理由欄もない休暇届け

 

 入社13年目と渡邊社長より社歴が長い西根さんは「自由な金曜日」をすべて年休にあてている。「もともと自分は年休をほとんど取りませんでしたが、働き方改革の後の一番の違いは、年に最低5日は取るようになったことです」。特に予定がなくても自分のタイミングで取り、家でリフレッシュしているという。

 多能工への取り組みや勤務時間の見直しなどで仕事の進め方が変わるため、一部の社員からは「今までのままでいいのでは」との声もあった。個人商店を解消し組織として機能するには10年かかったというが、結果として社員にとってもより良い働き方が生まれたようだ。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

多能工化を推進

効果
特定の社員に仕事がかたよるのを避けるため多能工化を推進することで、社員間のコミュニケーションが活発になり、時間はかかったが「個人商店化」の解消につながった。
取組2

徹底した時間管理

効果
3パターンの出社退勤時間、30分ずらした昼休みの設定、各人の業務内容のスケジュール管理などを行うなどの細かい工夫で、残業時間を大きく減らすことに成功した。
取組3

「自由な金曜日」の創出

効果
多能工で全員が協力して仕事を前倒しし、1日休める余裕を作ろうというモチベーションになっている。休みやすい社内風土にもつながり、20%程度だった年休取得率は97%を達成。

COMPANY DATA企業データ

創業以来、高精度・高性能を追求

和光技研工業有限会社

代表取締役社長:渡邊琢也
本社:宮城県柴田郡柴田町
従業員数:13名
設立:1977年4月
資本金:1200万円
事業内容:NC自動旋盤、精密挽物加工、検査機の開発・設計・製造・販売

経営者略歴

経営者略歴 渡邊琢也(わたなべ・たくや) 1980年宮城県出身。2004年成蹊大学工学部経営情報工学科卒業。2006年同大学院を修了し万有製薬株式会社(現・MSD株式会社)に入社。2009年和光技研工業有限会社に入社。2020年代表取締役に就任。