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株式会社ダイドー

業種

製造業

地域

近畿

従業員数

100〜300人

File.105

積極的なDX活用と自社オリジナル開発製品で生産性と働く意欲をアップ -改革の鍵は、自社開発の現場システム「KKSK」ダイドーの場合-

時間外労働の削減

2022.01.24

株式会社ダイドー

ダイドーが自社のために製作したアルミ切断機は、同社発の働き方改革製品でもある

 住宅設備メーカーから発展し、独自の製品開発で注目を集めるダイドー(大阪府河内長野市)は、2021年に創立70周年を迎えた。旧社名の大同化工機工業とグループ販売会社のダイドーが合併。

 製販が一体化して、高品質・高付加価値の製品づくりとともに、働きがいのある職場環境づくりに一層の拍車がかかった。その働き方改革への熱意は、社内環境の整備だけでなくユーザーの働き方改革をサポートする製品開発や、その海外展開にも及ぶ。

 攻めの姿勢を支えるのは、追田尚幸社長が旗振り役となって進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用だ。発端は2014年「過労死等防止対策推進法」の成立当時にさかのぼる。

超過する残業は企業のコンプライアンス・リスクに

残業を抑え、働きがいのあるダイドーを目指して、DXに乗り出した追田尚幸社長

 大手メーカーから受注する建材や設備製品の製造に携わってきたダイドーは、社員の健康や作業の安全に関することに対しても積極的に取り組む社風があった。しかし、同社の生産周期は繁閑の差が大きく、繁忙期には残業が集中する傾向にあった。

 そのため同社は、早くから労使協定を結び、1年単位の変形労働時間制を導入するとともに、余裕のある夏季・冬季に年休の取得を推進することで年間の残業時間の低減を図ってきた。

 2014年の過労死等防止対策推進法成立への動きに危機感を抱き、追田社長ら経営陣に意見具申したのは、総務経理部 課長の向 雄一さんだった。入社当時から人事労務に携わり、日本のワーク・ライフ・バランスの状況を見続けてきたが、残業時間の規制は今後ますます厳しくなるとの大局観を持っていた。

 そして、追田社長らに「これからは徹底して残業時間を削減し、『36(さぶろく)協定』を遵守しなければ、コンプライアンスに敏感な大手企業が発注を控える事態になりかねない」と進言。社員への地道な説明をくり返し、丁寧に労働環境情勢を伝えた上で、理解の浸透を図り、取り組みに至った。

 「2014年には月80時間を超える時間外労働の回数が延べ56回あったのを、徹底して作業を分散させることで、翌年は何とかゼロ回を達成した」と、向課長は当時の対応を振り返る。

 さらに「古くからあった皆勤賞を廃止して、年休の取得を奨励。その代わりに今は社員の健康診断の結果をランク分けして健康になるほど手当が増える仕組みを取り入れた」(向課長)と、社員の意識改革と行動変容の成果を強調。2019・2020・2021年と、3年連続で経済産業省から「健康経営優良法人」の認定も受けた。

 それを受けて、「当社として将来のコンプライアンスのためにも、残業を抑える継続的な仕組みが必要と思い、DXの導入に着手した」と追田社長が語る。

総務経理部に所属する向 雄一課長は、日々のデータから働く現場の課題を発見し、解決にあたる

作業効率を上げて、ワーク・ライフ・バランスを重視

 「DXを使わない会社は、経費のスリム化ができない。また、我々のような中小クラスの企業だと、いつまでも部下に権限委譲ができず、トップがずっとやり続けないといけない。率先してDXを進めることが、データ経営による高収益体質への変革をもたらす。その先には、より密な人間関係の構築や人間らしい価値のある働き方ができる。それが我々の目指すDXの究極の目的」と追田社長。

コロナ禍による行動変容が求められ始めた、ちょうどその頃、ワーク・ライフ・バランスの推進に向けて、ダイドーの働き方改革が本格的に始まった。

● データ経営及びDXを進めるにあたり、クラウド環境への移行を推進 ● 基幹システムをオンプレミスからクラウド環境へ移行 ● コミュニケーションツールを既存のTEL・メールから、クラウドサービスを活用したチャット・リモート会議へ軸を移す(ただし、重要事項はface to faceで密に行う) ● 勤怠・労務・給与関連の改革

 まず手掛けたのが、Webカメラとリモートカメラシステムの導入だ。これらリモートの推進により、働く時間の効率化を図った。同社には全国に5工場があり、毎朝の全社朝礼では、それぞれの事業所に居ながらトップや幹部たちと社員との顔が見える関係が築かれている。

 これに加えて、それまで数人単位で行っていた出張も、1人が代表で出向き、他は担当ごとにリモートで参画。また営業もCRMツール(顧客関係管理システム)とリモートを活用してオンライン商談。システム開発部門や設計トレース部門もテレワークを積極的に導入し、特に子育て中の女性社員の働きやすさを支援した。

 また、現場で働く全社員にもカメラ付きノートパソコンやタブレットを配布。各人が勤怠やワークフローをオンラインで自己管理する。

毎朝、それぞれの事業所にいながら全社朝礼を実施。「顔が見える関係」をリモートでも築く

 さらに、現場作業を円滑にし、正確さをサポートするのに大きな力を発揮しているのが、自社で開発した「KKSK(加工・検査・出荷・検品)システム」だ。

 担当者ごとに当日の「加工指示書」とその図面が表示され、加工後は「検査機能」で検査基準どおりにできているかをセルフチェック、基準と異なればエラーが出る仕組みで、加工不良の発生を未然に防ぐ。

 「KKSK」は他のクラウドサービスとも連携させ、各工場・各現場の誰もが共有でき、製造業・ダイドーで最も重要な「品質の安定」を支える。同時に全社で1日5~6000枚と大量に発生する文書のペーパーレス化や、万一問題が発生したときもデータで容易にトレースできるなどの数々のメリットをもたらしている。

現場では独自開発した「KKSKシステム」の画面で、その日の加工指示書を確認しながら作業する

 また、DXのもうひとつの開発目的であった製造ラインの「見える化」にも取り組んでいる。工場内のカメラと機械ごとに超小型コンピュータ「ラズベリー・パイ」を設置して、作業の詰まっている工程や、機械から作業者が離れる時間が多い生産性の低い工程をしっかり見極めるといった、データ解析に活用。

 さらにはデータを基に人員の配置を見直したり、業務の効率化を促して作業の公平性を担保したりすることで、残業を減らし、生産性を高めて誰もが気持ちよく働ける仕組みの構築を目指す。

社内の働き方改革を推進しながら、「働き方改革製品」で社会貢献

 企業にとって、社員を幸せにする鍵は受注量を上げること。今、追田社長はグローバル市場への自社オリジナル製品の拡販に力を注いでいる。

 ばねとダンパーを駆使した「動く機構収納」のパイオニアである同社は、高いインテリア性と「手の届く高さに下ろせる」機能性を合わせた製品群を海外にも展開。その製造を閑散期に行い、年間を通じた仕事量の平準化に役立てている。

 ヨーロッパなど世界の大型展示会にも出展を重ね、2020年には中国広東省中山市に現地法人を設立して、中国市場へ本格的に乗り出した。

同社の動く機構の技術を活かした「上腕アシストスーツ」が上向き作業を支える

 同社の製品開発のコンセプトは共通している。ユーザーの働き方改革、家事や作業の負担軽減をサポートすることだ。

 例えば、作業者の高齢化が進む建設の現場での課題が、作業負担の軽減。なかでも最も重労働とされるのが、上向きに長時間手を上げ続けなければならない天井の石膏ボード貼りだが、これを同社の「上腕アシストスーツ」が手助けする。

 電力を使わず、自然に腕を持ち上げ胸の高さから頭上までの作業がラクにできる。今では施工やメンテナンスの現場だけでなく、果樹の農作業にも、男女を問わず愛用されている。

 他にも同社内で開発され、現場で活躍するアルミ建材専用の切断機も「働き方改革製品」として商品化。数々の改良を重ね、進化させてきたこのマシンは、切断角度・速度を自動制御する加工データをバーコードで入力できるため、図面の見間違いや入力ミスなどによる加工不良を削減でき、加工精度や作業効率の向上にも貢献する。ダイドーは製品を通して、ユーザーの現場の働き方改革をも担っている。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

残業や年休、健康への取組で社員の意識を改革

効果
過重な残業が企業のリスクになることや、年次有給休暇の取得奨励、旧来の皆勤賞の廃止で休みやすい職場環境ができた。健康への意識を高める新たな制度を導入して、社員一人ひとりの健康増進をサポート。企業としての基礎体力を強めることにつながった。
取組2

社員全員がデジタルで勤怠や作業を自己管理

効果
タイムカードが廃止され、業務が終われば帰る習慣や年休取得が奨励され、社員のワーク・ライフ・バランスが向上した。作業の指示や加工後のセルフチェックで製品の精度と品質が安定し、ラインの「見える化」で残業の発生を抑えると同時に、作業の公平性が担保された。
取組3

自社開発製品を通じて働き方改革に貢献

効果
業務の閑散期を活用して、自社企画開発製品の製造にあて、作業量を平準化。幅広い業界の働き方改革を支援する社会貢献度の高い製品や、グローバル展開できる製品をオリジナル開発することで、社員のモチベーションや新たなダイドーの企業価値を高めている。

COMPANY DATA企業データ

人間生活の基盤となる「住働環境」において、価値ある製品サービスを提供するソリューション企業

株式会社ダイドー

代表取締役社長:追田尚幸

本社:大阪府河内長野市
従業員数:285名(2021年7月現在)
設立:1951年2月
資本金:2000万円
事業内容:エクステリア商品・インテリア商品・住設商品・ヒューマンオグメンテーション商品(アシストスーツ等)・メカトロニクス商品の企画・設計・製造・販売の事業

経営者略歴

追田尚幸(おいた・なおゆき)
1968年生まれ。1991年龍谷大学経営学部卒業、1991年岡谷鋼機株式会社入社、1995年株式会社ダイドー入社(営業部配属)。2000年取締役営業部長、大同化工機工業株式会社取締役就任。2009年大同化工機工業(株)代表取締役社長就任、2010年株式会社ダイドー代表取締役社長就任。2020年株式会社ダイドーと大同化工機工業株式会社が合併、株式会社ダイドーに。公益社団法人大阪府工業協会理事。