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三元ラセン管工業株式会社

業種

製造業

地域

近畿

従業員数

10〜29人

File.111

社員が誇りを持って、長く働き続けられる会社づくり・人づくり-「ISO9001」の自力認証取得をベースとした働き方改革三元ラセン管工業の場合-

時間外労働の削減

2022.01.24

三元ラセン管工業株式会社

 下町の小さな町工場が生き残るためには、独自の製造技術や製品の開発、他社にはない生産スタイルの確立、また労働条件の改善も大きな鍵となる。

 三元ラセン管工業株式会社は、そのすべてを実践し、大阪から全国、そして世界へ、大きく飛躍を遂げた企業だ。その道のりは、現会長の高嶋 博さんが社長に就任し、「若者が長年働き続けたくなる、職場環境づくり」を、経営方針に定めたことに始まる。これらの継続的な実践が、結果として現在の働き方改革に繋がっているという。

「ISO9001」の自力取得が働き方改革に繋がる

 三元ラセン管工業は、20年以上もの歳月をかけて、改革をひとつずつ積み重ねてきた。「働き方改革という言葉もなかった時代。会社が存続するためにどうすべきかを考え、たどり着いたのが『若者が誇りを持って働き続けられる会社づくり』だった」と高嶋 博会長。

 1995年、高嶋会長が社長に就任した当時、若年層の入社希望はほぼゼロだった。世界に通用する技術はあるのに、それを受け継ぐべき人材が確保できないことが課題だったという。

 高嶋会長は「休日は日曜のみ、仕事があれば延々と残業することが常態化しており、先代の頃は、就業規則はあってないようなものだった」と語る。そこで、快適に業務に従事できるよう工場でBGMを流したり、1日ひとつ業務を改善する「1日一善活動」や3S活動を始めたりと、社内環境を整えていった。

 「中途入社の社員や若い人に、前の会社を辞めた理由を聞くと、休みが取れない、残業が多かったからということが多い。ではその逆をいけば、長く働いてくれる人材が集まると考えた」と、完全週休2日制の導入に踏み切った。結果、年間休日120日以上が確保され、中小企業の中でも、先駆的とも言える改善取組となった。

 同社の人材募集の道筋は、今も昔もハローワークのみだが、次第に「計画通りに休める会社」として認知度も上がり、徐々に若手の応募者が増えてきたという。

 次に同社が目指したのは、品質マネジメントシステムの国際規格「ISO9001」の自力での認証取得だった。これまでの製造卸から直販に切り替えたことに伴い、品質保証を問われることが増え、取得の必要性にも迫られていた。

 「ISO9001」の取得を宣言した当初、「まずISOとは何か、自分たちのやるべきことを理解してもらうため、数え切れないほど勉強会を開いた」と高嶋会長。

 現状の業務効率化や作業工程の改善、手順・対策の運用といった認証取得に必要なすべてをコンサルタントに頼らず、社員一丸となって取り組んだ。

 しかし、職人と呼ばれるほどの卓越した技能を持つ社員たちの中には、認証に必要なマニュアル作成のためにこれまで自身が磨き、蓄積してきた技術をオープンにすることに難色を示した者もいたという。高嶋会長は「認証取得を受けなければ、会社に未来はない」と地道に理解を得ることに努め、他の社員の協力もあって文書化に成功した。

 「マニュアルは、社員全員が実務に沿って作り上げたもので、無理がなく至ってシンプル。だから毎年の審査でも指摘は一切入らない」と、高嶋会長はその質の高さに胸を張る。

 3年もの歳月を掛け、認証取得にこぎつけたのは2000年。「町工場が自力でISO9001を取得した」というニュースは大きな話題となり、マスメディアなどにも取り上げられたことで、営業活動がスムーズになる効果も生まれた。高嶋会長は、「この取得が、社内環境の整備や社員教育の充実、育成にも繋がった」と話す。

「天からの贈り物」というベローズを手に、笑顔の高嶋 博会長

資格制度導入による多能工化の取組で短納期を実現

「ISO9001」への取組と、自力で認証取得を達成したことは、「やればできる」という社員たちの自信に繋がり、モチベーションも向上させた。

 ベテランに教える意識が芽生え、OJTの仕組みも整えられていった。「定年は原則65歳だが、本人が希望すれば、1年更新で継続雇用できるようにしている」と話すのは、代表取締役社長の味岡友和さん。現在も65歳以上の3名が、戦力として活躍中だ。かつては、73歳まで勤め上げた社員もいたという。

 「当社の業務に必要な技術は、一朝一夕では身につかない。だからこそ技能を持つベテランには、若い社員の教育にも力を注いでほしい」と期待を込める。

高嶋会長からバトンを受け継いだ味岡友和社長。これまでの改革をベースに、より良い会社づくりへの取組を進める

 同社が手掛けるのは、フレキシブルチューブ(フレキ)やベローズ(伸縮管継ぎ手)といった、金属パイプ部材の設計・製造だ。ブルー・オーシャンを求め、価格競争を避け、大量生産から付加価値の高い多品種(単品・小ロット)、短納期の受注生産に切り替えた。

 「年平均の残業時間を、数値で出すのは難しい」(高嶋会長)とするほど、同社は原則ノー残業を貫く。完全週休2日制で、年次有給休暇の取得も奨励されている。それでも計画的な生産を実現し、短納期の受注を可能にしているのは、多能工化によるところが大きいという。

 短納期に対応するにあたり、社内資格を設け、各工程にその作業に携わることができる社員名を明示。またそれぞれが会社独自の資格証を持ち、「何ができて、何ができないか」の自覚を促した。「資格を取りなさいではなく、社員が自主的に学びたいと手を挙げる風土を作ってきた」と高嶋会長。

 業務に必須となる外部の資格取得も会社が全額バックアップし、合格すれば資格手当を付与する。味岡社長は「難易度の高い社内資格の取得や、日頃の成果に対しては社長賞という名の特別ボーナスを進呈している」と、社員のやる気をさらに引き出す工夫にも努める。

 取組が功を奏し、溶接や旋盤、非破壊検査など、必要な作業を複数担える社員が少しずつ増えていった。事務職にも「仕入品検査」の資格保持者がおり、半日ずつ担当することもあるという。

 「多能工化には、ベテラン技術者の指導は必須」と味岡社長。「ISO9001」取得時に作成したマニュアルが、ここでも役立っている。教えることによって、自身の業務負担が軽くなることにベテラン社員が気づいてから、意識が大きく変化し、責任感も生まれたという。「引退しても、指導のために顔を出してくれる社員もいる」と、高嶋会長は社員の自発性を喜ぶ。

 製造部 フレキチームに所属する、石本みゆきさんの経歴は、他の社員と少々異なる。当時、子どもがまだ小さく、午前中だけ清掃業務を担うパートタイマー契約で入社。それから数年が経ち、高嶋会長から正社員登用の打診があり、キャリアアップを果たした。

 「工場での製造は未経験でしたが、せっかく声を掛けてくれたのでチャレンジしようと決めました」と石本さん。高嶋会長は「忙しい時に作業を手伝ってもらっていた。せっかく得たスキルを活かし、長く働き続けてほしいと思った」と説明する。

 正社員となった石本さんは、フレキの組立を担当。「引退予定のベテラン技術者が辞めるまでの4ヵ月間、つきっきりで指導を受けました」と話す。その後も自信を持って独り立ちできるまで、先輩社員に質問しては教えてもらう毎日をくり返してきたという。

 現在は組立のほか、検査、梱包準備、出荷といったさまざまな業務を担当する。「社員の皆さんは、困ったことがあると、いつでも丁寧に教えてくれます。できることが増えていくのはうれしいです」と笑顔で語る。

「子どもの学校行事にあわせて取得していた年次有給休暇も、今は自分のリフレッシュに活用しています」と石本みゆきさん

 多能工化の推進で、作業効率が向上。それに伴い、年次有給休暇の取得率も高水準をキープしている。

 高嶋会長が進めてきた会社づくり、人づくりを受け継ぎながら、短納期に取り組む味岡社長は、「まだ、多能工が投入できる工程に差がある」と、さらなる顧客満足度のアップを目指す。

 「特に若手の教育訓練の充実、自己研鑚の空気をもっと高めていきたい。社員全員の多能工が実現すれば、さらに休みも取りやすくなり、短納期での対応も可能になる」と、社員のスキルアップが長く働き続けられる職場づくりに繋がり、ひいては会社の成長にもなると考えている。

 インドネシア出身のアンドリー・ユディスティラワンシャさんは、製造部 組立チームに所属する同社初の外国人社員だ。インドネシアでは英語教師として働いていたが、結婚後、日本国籍を取得。職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)で溶接を学び、資格を取得した後、日本で働いていた。同社には転職という形で、ハローワークを通じて入社してきた。

 「元々ものづくりが好きで、小さいもの、薄いものも繋げられるのが溶接のおもしろさ」とアンドリーさん。石本さん同様、入社当初はベテランの溶接士から毎日指導を受け、スキルを磨いていった。

 また、同社に原則残業がないこと、完全週休2日制で年次有給休暇も取りやすいといった、前職に比べて労働環境が整備されていたことも、入社の決め手だったという。

 まだ小さい子どもが3人いて、「できるだけ長い時間子どもと過ごしたい」アンドリーさんにとって、「働く時間がきちんと決まっていて、休みも取れることはありがたい」と喜ぶ。

 現在は、溶接を極める意識で仕事に取り組むが、アンドリーさんだけでなく、将来的に幅広い技能を持つ技術者になってもらいたいとの期待を込め「育成にも力を注いでいきたい」と高嶋会長と味岡社長は話す。

アンドリー・ユディスティラワンシャさんは日本語検定2級も取得。普段のコミュニケーションも問題ない

ITの活用で業務を効率化。「探してもらう行かない営業」も

 同社では、業務効率化などでも早くからITを活用してきた。書類管理システムを導入し、キーワード検索で過去の図面を探せるようになったのもそのひとつだ。

 紙の図面だった頃は、顧客からの電話を一度切り、図面を探して折り返すという非効率的なものだった。現在は、書類管理システムによる受注履歴のデータベースを活用しつつ、「検索した図面を見ながら話ができるので、時間が大幅に短縮できている」と高嶋会長。ペーパーレス化にも繋がり、業務の効率化がここでも推し進められた。

 さらに同社は、「探してもらう行かない営業」を柱にした受注方法を取る。「ベローズやフレキを作る技術はあるが、どの部分に使用されるかは知らされないので、こちらから見込みで営業に行けない」(味岡社長)ためだ。

 WebサイトやSNS、ブログで、製品特性や同社独自の技術といった情報を随時発信し、展示会で実物を見てもらって、受注に繋げる生産スタイルを確立。問い合わせには、できる限り訪問ではなく電話で対応し「行かない営業」を貫く。

 2004年にはWebサイトでの製品受注もスタート。「受注ページを作り、1週間で注文が来た時には驚いた」と、高嶋会長は当時を振り返り、同社の方針がインターネットと好相性だということに気づいたという。

 単品、小ロットの受注生産を掲げる同社の顧客は、大学や研究機関、企業の研究室といったそうそうたる顔ぶれが並ぶ。「大学の先生が、紹介してくれることも多い」(高嶋会長)と、口コミによる顧客層の広がりも実感している。

 2009年には、ITを活用して成功を遂げた日本一の中小企業として「デル・スモールビジネス賞」を受賞。製造会社の多くは製造部分にITを導入するが、同社は販売に活用したことで独自のビジネスモデルを構築した。

 多様な高付加価値製品を提供し、労働環境の整備、教育体制の充実は、「社員が長く働き続けられる職場づくりのために必要なこと」と高嶋会長。

 これまでの積み重ねを受け継ぎ、取組を進めてほしいという願いを込め、味岡社長にバトンを託した。

 「社員が働くことを楽しんでほしい」(高嶋会長)。三元ラセン管工業の会社づくり、人づくりはこれからも続いていく。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

「ISO9001」の自力認証取得で働き方改革の基礎をつくる

効果
「若者が誇りを持って長く働き続けられる会社」を目指し、完全週休2日制、年間休日120日以上を確保。「ISO9001」の自力取得に伴い、作業のマニュアル化を推進するなど、ベテランが「教える意識」を高める空気を醸成。社内環境の整備や社員教育の充実、育成にも繋がった。
取組2

資格取得制度を導入し多能工化で効率化を推進

効果
原則ノー残業の体制を確立しながら、短納期の受注生産に対応するため、社内資格の取得制度を導入。社員が会社独自の資格証を持ち、自発的に複数の作業が担えるスキルを身につける仕組みを作る。多能工化により、作業効率が向上。年次有給休暇の取得が進む効果も。
取組3

ITをフル活用。「行かない営業」のビジネスモデルを構築

効果
設計図面をデータ化、キーワード検索で探す手間を省き、業務効率がアップ。WebサイトやSNS、ブログで、製品特性や同社独自の技術といった情報を発信し、展示会で実物を見てもらう「行かない営業」スタイルを確立。ネット販売も充実させ、独自のビジネスモデルを構築した。

COMPANY DATA企業データ

独自の成型方法の確立で、多品種の高付加価値製品を提供

三元ラセン管工業株式会社

代表取締役会長:高嶋 博
代表取締役社長:味岡友和

本社:大阪府大阪市
従業員数:22名(2021年7月現在)
設立:1978年4月
資本金:1000万円
事業内容:フレキシブルチューブとベローズの設計・製造

経営者略歴

味岡 友和(あじおか・ともかず)
1975年東京都生まれ。1996年三元ラセン管工業株式会社入社、営業分野で活躍。2018年代表取締役社長就任。高嶋 博代表取締役会長が20年積み重ねてきた取組を継承しつつ、組織改編を進める。若返りを図りながらも、すべての社員が働きやすい職場づくりに奔走している。