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有限会社スタプランニング
建設業
九州・沖縄
10〜29人
File.125
個々のライフプラン主体の働き方で、人と組織の“命の継承”を図る ー市民の目線で、理想の街づくりに挑み続ける「STTA PLANNING」の場合ー
2022.01.24
1996年に会社を設立して以来、主に国内外の飲食店の開業支援や店舗の企画・設計、施工などを手掛けてきた『スタプランニング』。現在は、飲食店開業支援、公民が連携して公共サービスの提供を行うPPP・PFI事業、建築設計・施工、インテリアデザイン業務、不動産事業部の5つの柱で運営している。街の遊休資産を生かす、市民目線に立った住みやすい街づくりに邁進する『スタプランニング』の働き方改革とは。
街の可能性を引き出すPPP事業は、培ってきたスキームの集大成
「遊休資産や付加価値の低い施設が、都市部に数多くあります。今こそ民間の知恵と資金を投入し、企画・設計・施工・管理・運営まで行うことで、市民が求める街づくりを進めるチャンスだと感じています」と語る『スタプランニング』の赤嶺社長が今もっとも力を注いでいるのは、公民が連携して公共サービスの提供を行うPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業だ。公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うPPP/PFI(Private Finance Initiative)事業は、これまで行ってきた企業としての経験や知識を街づくりに生かす、いわば集大成。なぜならば、公的機関は比較的立地の良い場所に余裕のある空間構成で造られた建物が多いものの、その資産価値を生かし切れていない現状があるからだ。空間の持つ利便性と、民間の収益構造を組み合わせて、高付加価値への転換を図ることで、資産の有効活用を促し、税収増加も期待できるというのだ。
「今後、公的機関の資産管理などが民間に移行する流れは、止まることは無く10年以上先までかなりの件数が出てくると確信しています。これまでの人的ネットワークや街づくり活動も含めて、当社にはベースとなる企画・開発のスキルがあります。培ってきた知見を元に用途地域の見直し、制限の緩和を図ることでよりよい街づくりを進めていけば、若い世代の方々が都会から街へのUターンが起こり、地域内の好循環が生まれ、持続可能な街へと変わっていくはずです。ひいては、施設管理による事業の安定性も拡大していきます」。赤嶺社長は、都市再生の街づくりに今、確かな手ごたえを感じているようだ。
ブラック企業脱却のきっかけは、社員の言葉
創業から間もない頃は、規模の大小にかかわらず依頼があった仕事は次々に受注。繁忙期は月の残業が100時間を超える社員も少なくなかった。社員数は当時20名ほどだったが、年に10人余りが退職する高い離職率は、組織として深刻な状況に立たされていた。
「毎日残業するのは当たり前、休みもない会社でした。ブラック企業の先頭を行く企業とも言える状況で、中途採用の面接時には、『入社3年で独立できなければ使えないので、さっさとやめて転職したほうがいい』と豪語していました」と赤裸々に話してくれた赤嶺社長。組織の在り方とは裏腹に、仕事は多忙を極めた。香港・東京・大阪・福岡・中国などを飛び回り、主に飲食店や展示場の企画・設計・施工を手掛けていった。毎日トレンドを追いかけながら、流行りの店舗を創り続ける日々。「その当時40代だった私は、50歳で会社を売却して引退するか、もしくは、会社を解散しようと考えていました。社員のことを真剣に考えていなかった自分がいたんです。ただ、毎年多くの社員が入れ替わる中で、残ってくれた社員と面談すると『この会社で、ずっと働きたいんです。』と言われた一言が、ずしりと心に響きました」。長く働く社員の数名に同じことを尋ねると、やはり同じような回答があったという。そこから3~4年、模索する中で出した答えは「良い会社を創り、命の継承をしていこう」だった。“命の継承”とは、子どもたちが社員の働く姿を見て「ここで働きたい!」と思える会社になること。さらに、企業の寿命は30年と言われる中で、定説を乗り越える持続可能な組織を育むことだ。
強い覚悟で挑んだ働き方改革利益を取戻し右肩上がりに
まず取り組んだのは、週休2日制への移行と、業務の平準化や受注基準の見直しだった。繁忙期の受注は時期をずらす交渉を行い、年に約200件あった受注件数も半分の約100件に減らした。短期間で仕上げる仕事より、公共工事も含めて工期が長い仕事を増やし、社員の休みも考慮した無理のない納期を設定。当初は一時的に赤字になったが、徐々に利益を取り戻し、今ではゆるやかでも右肩上がりを維持している。
「当初は、社員の一部からは『今でも、休みが取れず休日出勤しているのに、形だけで休みが取れる様にしても意味がないと思います。』との話もありましたが、自ら休むようにしました。最初は、家にいてもやることなく暇で仕方なかった事を覚えてます」。
社員が年次有給休暇を5割以上取得することを目標に、有休奨励日も月3日ほど設けて休みを促している。次第に休みが取れるようになりつつも、相変わらず定時に帰れない日々が続いていた。そこで赤嶺代表が行ったのは、全社員の鍵を回収し、終業時間の18時には、施錠すること。朝も赤嶺社長が鍵を開ける事を約6ヵ月続けた。取り組みは功を奏し、残業は月平均4時間まで削減することができた。
「残業は減らすことができましたが、その1年間は大幅な赤字となりました。分かったことは、知識や技術力の無さを長時間労働でカバーしていた現状と、会社の実態を見ていなかった自分自身です。要するに、見て見ぬふりをしていたんですね」。
そこからの快進撃は見事だ。今まで仕事に取り組んでいた時間を大幅にカットするようにした結果、必要となったのは量から質への転換だった。これまでは何でも仕事を断らず受けていたが、限られた時間で仕事を進めるために、時には仕事を選ぶことも必要だ。そこで5つの見直しを図った。1つ目は、仕事の選別受注。2つ目は、社員教育、技術力の向上。3つ目は、権限の委譲。4つ目は、待遇の改善。5つ目は、業務システムの定期的な見直しだ。さらに裏付けのある技術力(国家資格)を最低2つは取得する支援を行った。各部門の労働生産性を高めるために、まずは総務から社内環境の整備などの見直しを図った。
今では社員一人ひとりが結婚や出産・育児なども含めた「人生20年計画」を作って発表し、産休・育休を取得する時期も見通した上で仕事や人事に無理が生じないように調整している。
「これからも、身の丈に合った、地域に必要とされる会社にしていきたいですね。少しずつ、雇用も増やし社員の子供さんが、働きたいと希望する企業にしていく事が一つの目標です」。
成し遂げようとしていることは決して楽なことではない。しかし、人や組織、街に向ける赤嶺社長の深い愛情に呼応するように『スタプランニング』の挑戦は続く。
ゼロベースから国家資格取得。更なる高みを目指すスーパー社員!
会社創立からほどなく同社に入社した又吉里美(またよしりみ)さん。主に設計施工部全体の管理調整をしながら、自らも設計者として案件を受け持つ。また、会社全体の仕事量の把握や調整、不動産部門では、宅地建物取引士としての業務や人事担当者としての業務も並行して行う驚くほどのマルチプレーヤーぶりだ。「2013年に第一子を出産しました。それまでは日付が変わるまで仕事をしたり、休日も仕事をすることが日常茶飯事だったので、産休・育休復帰後に正社員として仕事が続けられるのかは心配でした」と本音を漏らす。しかし、いざ復帰してみると社内の体制は見違えるほど改善がされており、18時に退社する社員も多い。日々の子どもの送迎などを後ろめたく思う必要はなかったと言う。
【本文】
「復職1年目は、自分の働き方の癖が抜けず、残業しないと間に合わなかったり、お迎え等で残業できないことがストレスとなって悶々とする時期もありました」と又吉さん。しかし、それも徐々に改善され、昼間は集中して働き、今日やる分を終えて18時には帰るというサイクルができるように。「今思えば、残業していた時はどうせ時間はたくさんあるから、と昼間に集中できていないなど、効率の悪い時間が多かったと思います。今は18時までしか働けないというリミットの中で、時間内でできる仕事を組立て、請け負う仕事の量を調整したりと整理しながら仕事をしています」。そうした個人の働き方改革に本気で取り組んだのは、正社員で管理職という立場と、初の産休・育休取得者として、仕事と家庭の両立ができるモデルケースにならないと、次が続かないという思いもあったという。
「これから産休・育休を取る社員にとって良い見本になれるよう、家庭優先でも仕事もきちんとやり遂げる姿を見せられればと思っています。今では、18時になったらタイムカードを押し、子どもをお迎えに行きます。ほとんど残業することはありません。また、休日もしっかり休んで家族との時間を大事にできています。2人目、3人目も産休・育休を取得し、現在は3人の子育てをしながら、仕事や資格取得も頑張っています」。そう語る又吉さんの自然体の笑顔と、尽きることの無いバイタリティに、今の『スタプランニング』の姿があった。
CASE STUDY働き方改革のポイント
残業を減らし、週休2日制への移行を断行
- 効果
- 全社員の鍵を回収し、社長自らが終業時間の18時には施錠することにより、残業時間を月平均4時間まで削減。年次有給休暇を5割以上の取得を目標に、有休奨励日を月に3日設けて休みを促す。社員一人ひとりが結婚や出産・育児休業なども含めた「人生20年計画」を作って発表し、育休や産休を見通した上で仕事を調整するなど個を主体としたサイクルが生まれている。
資格取得を推奨し社員教育、技術力向上に取り組む
- 効果
- 社員の余暇は、選別受注や残業時間の調整の賜物。そこには技術力向上も必要だが、そのためには社員として何をすべきかを考えた結果、一人ひとりが毎年何らかの資格取得への挑戦をしている。また、資格取得や余暇を確保するために、年次有給休暇等を利用して約1ヵ月の休みが取得できる体制を整えた。
受注基準の見直し、仕事の選別受注を行う
- 効果
- 効果 業務の受注基準の見直し、年間約200件の受注件数は、約100件に減らした。繁忙を避けられる受注は時期をずらす交渉も行った。短納期の仕事より、スパンの長い仕事を増やし無理のない納期を設定。一時的に赤字にはなったものの、今では売り上げも右肩上がりに。
COMPANY DATA企業データ
真に市民のための街づくりに挑むスペシャリスト集団
有限会社スタプランニング
代表取締役社長:赤嶺 剛(あかみね・つよし)
本社:沖縄県那覇市
従業員数:15名
設立:1996年
資本金:5,597万円
事業内容:建設業
経営者略歴
代表取締役。1984年 株式会社『アド装飾』にて勤務した後、1991年株式会社『オンエア』へ。1994年『スタプランニング』を創業。1996年に、有限会社スタプランニングを設立。デザイン性の高い商業店舗のデザイン・施工が高い評価を得る。国内外で事業を展開するなど、培ってきた知見と技術で、沖縄の街づくりに取り組む。私生活では5児の父。