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第一開明株式会社

業種

その他

地域

北海道・東北

従業員数

50〜99人

File.130

「いい会社」を目指して、5年に渡る長期プロジェクトを推進 ー多岐に渡る産業ガスを提供する「第一開明株式会社」の場合ー

時間外労働の削減

2022.02.01

第一開明株式会社

 第一開明株式会社(岩手県盛岡市)は、北上市に高圧ガス製造工場を持ち、青森、秋田、岩手、宮城、山形の東北5県の営業所を介して各種高圧ガスと関連機器を販売する。高圧ガスは、一般消費者の目に留まることはほとんどないが、工業、食品、医療、研究などの広範な分野で使われ、人々の日々の暮らしを支える役割を担っている。同社は、こうしたガスを提供するだけでなく、機能・効能を通じて現場での課題や生産性向上のための新しい提案も視野に入れ、「ガス&関連ビジネスにおける小売の達人になる」という企業ビジョンを掲げて活動している。

トップダウンでスタートした「いい会社をつくろうプロジェクト」

 同社が働き方改革に取り組み始めたのは2018年。前社長が5年計画の「いい会社をつくろうプロジェクト」をトップダウンで立ち上げた。「いい会社」とは、日常会話の中で「第一開明はいい会社だね」と語られる存在だ。そして、創業以来70年に渡って顧客と地域に支持されてきた背景を踏まえ、パートナー企業や社員のさらなる幸せを実現するという経営理念にも基づいている。その「いい会社」となるには働き方を改革し、仕事の質や生産性の向上を図る必要がある。それがこのプロジェクトのきっかけだ。

第一開明はいい会社だねと語られるためには、働き方改革が必要だったと語る北﨑幸治社長

 「プロジェクトを立ち上げた時期と厚労省の働き方改革関連法の施行時期が重なりました。2018年8月にプロジェクト周知のために全社員を対象とした経営計画共有会議を設け、併せて厚労省の働き方改革に取り組むことも説明しました」と語る北﨑幸治社長。プロジェクトの立ち上げと厚労省の働き方改革が、期せずして同時進行することとなった。

 プロジェクトの方向性を周知したとはいえ、すぐに全社的な展開は難しい。そこで、まずは社長にもっとも近い部署である本社業務部から働き方改革の取組を始めることになった。

業務体制を見直して完全週休2日制を実現

 まず取り組んだのは完全週休2日制と時間単位年次有給休暇の導入だった。同社は1年単位の変形労働時間制を導入し、月曜から土曜日を勤務日として土曜日は交代で勤務していた。この勤務形態に、社員から毎週土曜日を休日にして欲しいという要望の声があがった。

 完全週休2日制は、社員の休日が増えることでもあり、人材採用の面でもメリットが多い。しかし、それまで土曜日にも納品していた顧客に対しては土曜日に出勤する必要があるのではないかという懸念が生まれた。そこで、該当する顧客にヒアリングを重ね、前日までに必要な量を納品するなどの理解を得て課題をクリアした。

 そうした試行錯誤を重ねながら業務体制を見直し、2019年10月から完全週休2日制を導入することになった。年間休日数は2019年度に110日だったが、2020年度からは125日と増加した。また2021年4月から時間単位での年次有給休暇も年間5日まで取得できるようになった。これも、子どもの通園・通学、学校行事、通院などに合わせて年次有給休暇を有効に使いたいという声に応えたものだ。それまでの半日単位での取得に加えて、年休はさらに取得しやすくなった。

完全週休2日制や時間単位の年次有給休暇で子育て中の女性も働きやすい環境となった

試行錯誤を重ねて長時間労働を削減

 長時間労働の削減も重要なテーマだった。残業を減らすために、毎月、5日、10日、15日、20日、25日、月末日の前日(4日、9日、14日、19日、24日、29日)をノー残業デーと設定し、月初めと前日(前営業日)に全社への周知・呼びかけを行った。また、チャイムを流して時間を周知させるなどの施策に取り組んだ。また、医療機関への配送職などは顧客の営業時間帯に合わせる必要があり、早朝や夜間での作業となることがある。これも、顧客に合わせて出退勤時間を調整する就業時間制を取り入れた。

 「改革に取り組む前の2017年に月32時間だった社員の平均残業時間が2018年には月19時間まで削減するという実績に繋がりました。無駄な残業時間を削減できただけでなく、作業効率も向上しました。以前にくらべると残業時間は減りましたが、まだ課題はありますので、今後も作業を見直し更に効率化を図っていきたいと考えております。」と北﨑幸治社長は語る。

 さらに、勤怠管理の見直しも行った。同社では手書きによる出勤簿で管理を行っていたが、記入漏れ、記入ミスが多く、そのたびに確認や修正が必要となるだけでなく、集計にも多くの時間と労力を費やし、客観的な勤怠管理とはほど遠い状況だったという。

 そこで勤怠管理システムを導入したところ、社員一人ひとりの勤怠状況がリアルタイムで自分自身で把握できるようになったという。社員の出退勤記録はICカードで行い、社員自身の勤怠状況は会社から貸与される各自のパソコンやスマホで確認できる。年次有給休暇の申請もWEB上でできるようになった。更に、既定時間を超過した場合に、本人と管理者へメールが配信される仕組みを活用し、長時間労働削減の取り組みを行なっている。

 本社業務部の小笠原明美さんは本社業務部に所属し、人事・労務、総務、給与計算、勤怠管理、採用活動、人材育成、職場環境の整備など、実に多様な業務に携わっている。中でも直接的な業務が勤怠管理。「勤怠管理システムの導入によって確認にかかっていた時間が短縮され、作業の効率がよくなりました。空いた時間で別の業務を行ったり、後輩への指導など、有効な時間の活用ができています」と語ってくれました。完全週休2日制や時間単位の年次有給休暇の導入で、ワーク・ライフ・バランスも確立し、充実した毎日を送っている。現在、一人ひとりの業務を羅列して、できることできないことを見える化する「スキルマップ」の作成に取り組んでいる。

勤怠管理システムで仕事の効率が上がったと語る小笠原明美さん

 また、同社の働き方改革のきめ細かさは業務改善提案にも表れている。本社部門が各営業所を何度かに渡って訪問し、業務の内容の確認や業務上での課題などをヒアリングする。解決すべき課題はよく調査し、効率よく業務を遂行できるように改善策を提案してきた。完全週休2日制や顧客に合わせた就業時間制の導入、集金業務を各客先を回っての現金集金から口座振替代金回収に切り替えて効率化を図ったのも、その成果だ。

さまざまなコミュニケーション手段を展開

 同社はコミュニケーションの活性化にも力を入れている。そのひとつが全社員を対象とした「アサーティブ・コミュニケーション研修」。相手の立場や意見を尊重しつつ、自分の意見を正確に伝え、よりよいコミュニケーションを築こうとするもの。

 もうひとつが「メンター・メンティ制度」。メンターはよき指導者・助言者であり、メンティはメンターによって支援を受ける者。社員の中から選出されたメンターが、部署を超えて後輩の仕事やプライベートの相談に乗ったりアドバイスを送る制度。こうした研修や制度をきっかけに職場でのコミュニケーションの活性化に取り組んでいる。

 そうしたコミュニケーションの一環として「グッジョブカード」がある。日頃の業務の中で、よい仕事をした、アドバイスに助けられたなど、言葉の他にあらためて感謝の気持ちや褒めたたえる気持ちを伝える時に使うカード。上下関係を抜きにして褒め合う。3枚綴りで、1枚は本人控え、1枚は相手に、1枚は社内掲示板の掲載用だ。あらためてカードを貰えると、嬉しい気持ちにもなりますし、掲示することで社員への情報共有になると同時に良い啓発意欲の一助となっている。

社内掲示板に掲載された「グッジョブカード」

 社内の情報共有や部署を超えた社員間の交流、横のつながりを活性化させる目的として2021年に実施した「オンライン交流会」もコミュニケーション活動を活性化した。月に一度、本社や各営業部をwebで繋ぎ、司会者を中心に10人ほどの社員が自己紹介や最近のできごとなどを語り合う。互いに遠隔地にて日頃会うことのできない社員同士のよい交流と息抜きの場にもなったようだ。

 また、本社業務部から「カイメイ通信」という社内報が2カ月に1回発行されている。社内のできごとや社員紹介など、さまざまなニュースが掲載されている。とくに7カ所の営業所同士の動向を知るうえでは貴重な存在で、それぞれの地域ならではの出来事を伝える地域レポートは人気があるそうだ。

社内のイベントや出来事、各営業所のニュースを掲載する「カイメイ通信」

「いい会社をつくろうプロジェクト」の実現に向けて

 北﨑幸治社長は「働き方改革を通じて実感していることは、一人ひとりに時間管理の意識が高まり、効率よく仕事を進めようと言う意識づけができたことです。働き方改革を難しく考えたり、他人事のように思っていた社員もいたようですが、互いを思いやったり協力し合える体制が必要だとも感じます」と語る。

 同社は昨年「いわて働き方改革award2020」の個別プロジェクト賞・長時間労働削減部門を受賞した。各営業所を訪問して業務内容を確認、課題を分析し、業務の効率化を図る「業務改善提案制度」の採用、リアルタイムで自身の勤怠状況を把握できる「勤怠管理システム」の導入が評価されての受賞だ。

 同社は、まだ実現できていない働き方改革や課題も数多いという。ペーパーレス化や電子化もそのひとつと捉えているが、変化が見えた組織力の向上は「いい会社をつくろうプロジェクト」の実現に確実に近付いているという。

 ※掲載の写真は、2022年3月現在のものです。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

完全週休2日制を実現

効果
変形労働時間制を導入していたが、社員の「土曜日も休日にして欲しいという声」を聞き、完全週休2日制の導入に取り組んだ。土曜日に納入していた顧客にはヒアリングを重ねて前日までに必要な量を収めることなどを了承してもらうなど、業務体制を見直して完全週休2日制を実現し、年間休日が15日増えた。
取組2

長時間労働を削減

効果
医療機関や製造工場など顧客の要望によっては、配送職は早朝や夜間での作業となることがあり、通常の勤務時間帯では残業時間が多くなっていた。これを顧客の営業時間に合わせた就業時間制を取り入れることで無駄な残業時間が削減できた。また、勤怠管理システムを導入することで社員自身が勤怠状況をリアルタイムで把握できるようになったことも残業時間削減の大きな要因になった。
取組3

さまざまなコミュニケーション手段を展開

効果
「アサーティブ・コミュニケーション研修」「メンター・メンティ制度」「グッジョブカード」「オンライン交流会」「カイメイ通信」など、さまざまなコミュニケーション手段が社員同士の横の繋がりを深め、風通しのよい、互いに理解し合える社風を作っている。

COMPANY DATA企業データ

ガス&関連ビジネスにおける「小売の達人」になる

第一開明株式会社

代表取締役社長:北﨑幸治
本社:岩手県盛岡市
従業員数:80名(2021年10月現在)
設立:1951年9月
資本金:3,000万円
事業内容:工業用高圧ガス、医療用ガスの製造販売、並びにガス周辺機器、溶接・溶断機器、溶接材料販売。高圧ガス設備工事、高圧ガス設備検査、医療ガス供給設備保守点検、その他管工事、機械器具設置工事

経営者略歴

北﨑幸治(きたざき・こうじ) 2013年大陽日酸株式会社・関東支社・京葉支店長。2016年大陽日酸株式会社・東北支社・ガス営業部長。2018年第一開明株式会社・取締役営業本部長。2020年第一開明株式会社・代表取締役社長就任。現在に至る。