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株式会社ナレッジソサエティ

業種

不動産業,物品賃貸業

地域

関東

従業員数

10〜29人

File.137

「週休4日制」というユニークな働き方を採用し、優秀な人材を確保 ―バーチャルオフィス・シェアオフィスを運営する「ナレッジソサエティ」の場合―

幅広い人材活用

2022.02.01

株式会社ナレッジソサエティ

 ナレッジソサエティは2010年創業。起業のハードルとなる初期費用を抑え、作業や打ち合わせを快適に行えるシェアオフィスや、住所をレンタルし利用者宛に届く郵便物を管理するバーチャルオフィスといったサービスを展開。世間にシェアオフィスという言葉すら浸透していない頃から一貫して、起業家を支援する事業を行っている。働き方の多様化が進み認知度が上がる一方、人材の確保に苦労していたが、「週休4日制」というユニークな制度を打ち出したことにより好転。現在は経営者目線を持った従業員が、効率化につながるアイデアを出し合いながら働いている。

小さな疑問から生まれた「週休4日制」で、欲しい人材が集まる会社に

 「1週間の勤務時間は必ず8時間×5日じゃなきゃダメなのかなと、ふと思ったのがきっかけです」そう話すのは、2014年に代表取締役に就任した久田敦史社長。大企業に比べて認知度が低く賃金面でも大手並みの条件を提示するのが難しい中、久田社長の小さな疑問が、人材不足を打破する鍵となった。「週休4日制でも別にいいのではないか」と考えた久田社長はすぐに他の執行役員に相談。2017年4月、「週休4日制」をスタートさせた。

「リモートワークを含め働き方が大きく変わったことで利用者様も増えています」と話す久田敦史社長

 この「週休4日制」は、将来起業を目指す方や夢を持った方を正社員として採用する制度だ。2年前に中途採用で入社しこの制度を利用している工藤和希さんは、週に4日確保されている「休日」を使い動画制作に取り組んでいる。従来通り週5日フルタイムで働いた場合、自分の業務に取り掛かるのは主に終業後になるが、週に4日自由になると「今日は自分の仕事をする日」と切り替えることが可能だ。また、すでに事業を始めている起業家たちが集うシェアオフィスは、これから起業を目指す者にとって「生きた情報」を収集できる場になる。工藤さんは「お客様も社員も起業家って、おもしろいですよね。共通点があるためお客様と会話も通じますし、目標に向かうモチベーションにもなっています。起業を目指す者にとっては最高の環境です」と、生き生きとした表情で話してくれた。

「実際にビジネスをしている方がたくさんいるので本当に勉強になります」と話す工藤和希さん

採用ターゲットを絞り、採用コストの削減に成功

 「週休4日制」という制度を打ち出したことで、キーワード検索によるサイトのアクセス数が増加。採用の問い合わせが自社サイトに直接届くようになったため、いわゆる就職サイトを利用する必要がなくなり、採用コストが大幅に減少した。その分、記事制作を外注するなど自社サイトの充実に力を入れているが、久田社長は「コストではなく投資に近い感覚です。良い人材が自然と集まる仕組みになったので驚きましたが、思いついた者勝ちですね」と笑顔を見せた。また、それまで従業員の勤務時間を早番と遅番に分けていたが、「週休4日制」の社員1人で全時間カバーできるようになった。これにより、シフトを組む業務が格段に楽になったことも大きな収穫だったという。

 オフィスには、1800を超える会員宛に、毎日大量の郵便物が届く。宛先を確認し会員ごとに仕分ける作業は、単純そうに見えて実は簡単な作業ではない。郵便物が届く昼頃から夕方にかけて、従業員総出で進めるこの作業の中核を担っているのが、「時短正社員制度」を活用して働く社員だ。正社員よりも勤務時間が短くなる分、額は低くなるがパートタイマーとは違って時給制ではなく月給制であり、諸手当も支給されるなど正社員と同じ待遇が確保されている。「夕方までの時間帯に人材を厚く配置したいと考えたとき、子育て中の方や子育てがひと段落した方が働きたいと思ってくれるような環境を整えようと思ったんです。働く意欲があり優秀な方が多いので、これからも積極的に採用していきます」と久田社長。「週休4日制」に続き、採用ターゲットを絞った制度の導入が人材の確保につながっている。

1800を超える会員宛に届く大量の郵便物は、従業員によって手早くファイル管理されていく

人材が集まったことで、業務も改善されていった

 現在、従来の正社員のほか、「週休4日制」「時短正社員」「派遣」「アルバイト」「インターン」など、従業員の希望に合わせて多様な雇用形態が採用されている。そのため、雇用条件に関わらず分け隔てなく勤務にあたるための工夫が施されていた。日々、必要な作業はどんなに小さなものであってもタスク化し、誰の目にもわかるように「見える化」。タスクを埋めていけば、業務に穴があくことがない。

 ただ、この互いにカバーし合える仕組みにたどり着くまでは問題もあった。以前は業務に関する明確なルールがなかったため、入社時の教育はその時々の担当者に委ねられており、従業員によって業務の理解度に大きな差があったという。結果、一部の従業員に仕事が偏りがちだった。現在は、全員が同じルールに則って業務にあたれるよう、業務の流れや進め方をまとめた動画を作成。また、料金体系など業務上覚えるべき事柄をクイズ化し、毎朝、小テストの時間を設けて基本的な知識の充実を図っている。こうすることにより、新人もスムーズに業務にあたれるようになり、従業員の定着率が上がったという。

毎朝の小テストは、もちろん業務時間内に行われる

 また、業務の中で改善した方がよいことやアイデアがあれば、従業員全員がアクセスできるスプレッドシートに記入。それを元にスピーディーに改善が進められるようになった。また、どんなに小さな提案であっても、たとえ実際には採用されなかったとしても、報奨金が出る仕組みを構築した。

 「週休4日制」の導入により、「経営者目線を持った従業員が増えたことで、会社が変わりました」という久田社長。「将来自分がマネジメントするなら」と、従業員が自分事として捉え自発的に取り組んだ結果、前述した業務知識のクイズなど、業務効率化につながる工夫が多数生まれている。

「起業家が起業家を支援する」企業ブランドの確立を目指して

 これまで、「週休4日制」を利用した社員は工藤さんを含め6名。内4名が起業し会社を「卒業」している。「会社は単なる器でしかありません。社員には、会社の環境をうまく活用してほしい。社員の幸せと会社の発展が両立できるように、就業のルールや制度を整えていきたいですね」と話す久田社長。ゆくゆくは会社の部門をすべて分社化し、そのトップを従業員に任せるという夢も描いている。「起業を志して入社した社員が今後どういった道を切り拓くのか、とても楽しみです」(久田社長)

 「起業家が起業家を支援するバーチャルオフィス・シェアオフィス」というブランドのさらなる確立を目指し、事業と採用の両面から起業家のサポートを進めていく。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

「週休4日制」を採用

効果
希望者は「週休4日制」で勤務することが可能。起業を目指す人材が集まるようになり、就職サイトにかけていたコストが削減。経営者目線を持った従業員による業務改善も進むようになった。
取組2

「時短正社員制度」を採用

効果
勤務時間が短くなる分基本給が少なくなる以外は、諸手当の支給など正社員と同じ待遇を確保。子育て中の方や復帰を目指す方に採用ターゲットを絞ったことで、人材の確保に成功した。
取組3

動画やクイズによって業務内容を共有

効果
従業員間で理解度に差ができるのを防ぐことができ、新人教育がスムーズに行えるように。業務をタスク化したことで互いにフォローし合えるようになった。

COMPANY DATA企業データ

株式会社ナレッジソサエティ

代表取締役:久田敦史
本社:東京都千代田区
従業員数:10名
資本金:1,100万円
事業内容:バーチャルオフィス・シェアオフィス運営

経営者略歴

久田敦史
筑波大学中退、ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)。
ソフトバンク(現ソフトバンクグループ株式会社)に入社。事業会社を経て、2013年株式会社ナレッジソサエティに入社し取締役に就任。2014年から代表取締役。