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有限会社あぜち食品

業種

製造業

地域

中国・四国

従業員数

1〜29人

File.14

ママさん&パート目線で支える「ずっと働ける職場」―食品製造・加工 あぜち食品の場合―

子育て支援

2020.01.24

有限会社あぜち食品
 お酒のつまみなどの食品製造・加工会社「あぜち食品」(高知市)。子育て世代のパート社員を主力にした小規模な会社だが、ポップコーン製造で、ユニークな商品を打ち出し、ネット上で話題を集めることもあるという。市場の先細りから事業環境は順風とは言えないが、ママさん目線の経営者とパート社員が底力を発揮している。

勤務9時-4時、学校行事優先、有休は完全消化

 片岡三枝さんは32年にわたってパート社員として働く。63歳だ。2年前にがんを患って入院したが、約2週間後に退院し、無事職場復帰を果たした。リハビリは継続しているが、「働ける限り、働き続けたい。会社も理解してくれている」と、笑顔で話す。あぜち食品は定年を設けず、働く意思と力がある限り、従業員の居場所を確保する考えだ。中小企業の顔の見える柔軟な経営で、パート社員が元気で働ける職場を実現している。

社歴32年のパート社員、片岡三枝さん。2年前にがんを患ったが、職場復帰した

 創業は1976年。高知市にある3階建ての社屋に、事務所、倉庫、生産施設もある。2年前に創業者の父の後を、娘の和田史秀子(わだ・しほこ)さんが引き継いで2代目社長となり、母で専務の畦地佳(あぜち・よし)さんと二人三脚で経営を担っている。

父の後を継ぎ、2代目社長を務める和田史秀子(しほこ)社長

 創業以来変わらずに続いているのは、ママたちがいつまでも働ける職場環境だ。キャッチフレーズは「働くお母さんを応援する」。創業以来、勤務時間は朝9時から夕方4時まで。保育園に子どもを預ける母親が無理なく働けるという理由で、設定されている。繁忙期には、勤務時間が1時間程度増えることもあるが、家庭の理由で早退なども可能だ。

 上田真衣さんは、3人の子どもの子育て中のママさんだ。「この会社の勤務時間が最大の魅力です」と話す。子どもを保育園に送ってから出勤し、仕事が終わってから子どもを保育園に迎えに行くという生活が続けられる。子どもの病気で急に欠勤することもあるが、会社ではそのような事態を織り込み済みで、快く受け入れてくれるという。上田さんは別の食品会社でも働いたことがあるが、ここのあぜち食品の勤務時間が何よりの味方になっているようだ。

3人の子どもを育てながらあぜち食品で働く上田真衣さん

 有休は社員が完全に消化する。休暇申請は、社内に掲示してあるカレンダーに事前に書き込んでおく方式だ。誰がいつ休むかは一覧できるため、社員同士で休みを融通することもあるという。

会食を楽しむ片岡さん(左)。病気を克服して職場復帰を果たすなど、仕事意欲は衰えていない
子どもたちと余暇を楽しむ上田さん。子育ての時間を確保できる仕事環境で、充実した毎日を送っている

 毎朝10時半になると、エプロン姿で社長の和田さんが、通る声でパート社員に連絡事項を伝える「お茶の時間」が始まる。畦地さんが、話を補足しながら、会が進む。話題はそれぞれの社員の家族の近況などに及び、職場全体で育児の状況などを把握する機会となっている。「女性職場なので、話が弾んでしまうこともあります。10分の打ち合わせなのですが、20分かかってしまうこともよくあります」と和田社長は話す。
子育て世代の母親が主力なので、地元の学校での授業参観などの行事は優先事項だ。勤務日と参観日が重なることがあれば、母親パート社員が集まって学校へ行き、授業が終わると、また仕事に戻ることもあるという。和田社長は「子育ては、私も含めて、皆が経験してきていることですから」と話す。

危機的な状況、ポップコーン1キロ大袋で乗り越えて

 和やかな職場のあぜち食品だが、経営ではこれまでいくつもの難所があったという。1988年に漏電が原因で社屋が全焼し、98年には一帯の洪水で、会社の資産が水につかって大損害を出した。また人口減少や酒屋の廃業が相次いだこともあり、創業時の得意先が7割近く減少するなど、厳しい事業環境が続いている。 苦境にもかかわらず事業を継続できたのは、社長・専務の母娘による統率力に加え、ママさん目線の発想力があったからだとも言えそうだ。事業の活路を見いだすため、2003年にポップコーン事業を、他社から譲り受けた。先細りの珍味加工業だけでは、先行きが厳しいとの判断があった。決断したのは畦地専務だった。

 しかし、事業開始から数年は思うように事業が進まなかったという。そんなある時、業務用として出荷していた1キロの大袋に入れたポップコーンを、地元農協のイベントで売り出してみた。すると、その大袋のインパクトがあったためか、意外にも人気が集中したという。
単に大袋にして売り出しただけだが、それにヒントを得て、大口需要のパーティー用や、学校のバザー用、幼稚園の行事用などへと取引を拡大していった。「パーティーやバザーなどはママさんたちの得意分野ですから。どんな工夫をすればいいかは、感覚として分かります」と和田社長。大袋の商品とともに、小分け用の袋を添えたり、パーティーでの活用方法のマニュアルを作成して配布するなど、使い勝手を改善し、今や幼稚園のお泊まり会から高校の学園祭まで、全国から発注がやってくるまでになった。最近は、結婚式で配る持ち帰り用のお土産として、個別にデザインされた商品を出荷している。

あぜち食品のポップコーン製造施設。ネット販売で全国各地から注文が集まっている

「食べられる緩衝材」とメモを入れたらSNSで大反響

 昨年、ママさん目線の気配りが、事業拡大につながる出来事がもう一つあった。インターネット経由で発注のあったチョコレートの箱詰めをしていた時に、箱の空きスペースに、無料の「おまけ」としてポップコーンを1袋入れた。「お客さんに楽しんでほしい」という何げない気持ちを込めて、「食べられる緩衝材です。ご一緒にどうぞ」と、冗談半分のメモを添えた。すると大学生のお客さんがネット上で「あぜち食品さんありがとう」とSNSでメモの写真を公開し、ネット上で3日間に4万件もこの商品が取り上げられたという。

 反響が大きかったことから、小袋のポップコーンを、「食べられる緩衝材」という名前で商品化したところ、有名人がSNSで話題にしたり、地元メディアから取材を受けたりして知名度が高まり、たちまち人気商品となった。単なる「ポップコーン」だが、母親世代のアイデアと気配りで、新たな経営軸ができつつある。
こうしたヒット商品の着想は「もともとは小さな気配りだったりするんです」と和田社長。せっかくだから楽しんでほしい、味わってほしい、という配慮で出したアイデアが、思いも寄らない形で話題になり、ヒットにつながる。利益ではなく、お茶会で話題になるようなママさん目線の気配りが、事業の発展へとつながっている。

 ママさん世代が生き生きと働ける環境は同社の財産だ。だから急に発注が拡大しても、施設を拡張したり、労働時間を増やしたりすることには、慎重だ。「働き方改革」という言葉を意識しているわけではない。お母さんたちが安心して働けることが、何よりの経営上の財産だからだ。和田社長は「この会社の雰囲気は先代社長や母親が築き上げた部分が大きい。今でも学ぶことが多い」と話す。市場環境は必ずしも順風ではないが、明るいママさんの声が響く、母親が働ける職場を守り続けている。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

パート社員の生活に合わせた勤務時間設計

効果
保育園に子どもを預ける母親の生活リズムを基本にして、勤務時間を午前9時から午後4時までと設定した。土日も休みとなるため、家族の時間も確保できる。
取組2

子どもの学校行事優先で短時間の取得もできる有給休暇制度

効果
有給休暇は、社員が自己管理し完全消化する。社内掲示のカレンダーや、タイムカードに自ら書き込む。子どもの学校行事などを優先して1日数時間などの単位で取得もできる。
取組3

定年なく働き続けられる「人」本意の採用

効果
人物本位で採用していることから、本人の働く意思と力があれば、定年はなく、働き続けることができる。病気を克服しながら、三十数年働いているパート社員もいる。

COMPANY DATA企業データ

有限会社あぜち食品

代表取締役社長:和田史秀子
本社:高知市
従業員数:パート含め約20名
創業:1976年
資本金:500万円
事業内容:お酒のつまみになる珍味を中心にした食品加工と卸、ポップコーンの製造販売。ネット通販事業

経営者略歴

和田史秀子(わだ・しほこ) 1976年生まれ。短大を卒業後、両親が経営する会社を助けるために入社し、その後、創業者の父の跡を継いだ。会社経営の支えとしている言葉は「真面目に真摯に誠実に」「明日やろうは馬鹿野郎」。仕事の内容より、心をこめたかどうかを常に意識している。さらに、仕事を先延ばししないように努めているという。ネット販売事業を進めるなど、専務で母・畦地佳さんと二人三脚で経営を担っている。