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株式会社トモエシステム

業種

卸売業、小売業

地域

近畿

従業員数

30〜99人

File.20

「働きがい」をめざした「働き方改革」―神戸の専門商社「トモエシステム」の場合―

残業削減・有給促進

2020.09.10

株式会社トモエシステム

数年で職場環境が大きく変わったトモエシステムのオフィスの様子

 建設機械に搭載される大小さまざまな部品約8000点を扱う専門商社のトモエシステム(神戸市兵庫区)は、「ともに創る」を経営理念にかかげ、建機メーカーと部品のサプライヤーをつなぐ事業を展開している。
 社長の柳瀬秀人さんは、「『当社の価値はどこにあるのか』と考えたとき、当社はメーカーではありませんが、業界で最も知見・ノウハウを持ち、顧客の声を聴き、世界中のパートナーと一丸になり、新たな価値を創造し提供できる能力を持つ最高の専門商社です」と、経営理念に込めた思いを説明する。同社の「働きがい」をめざした「働き方改革」とは。

経営理念「ともに創る」について説明するトモエシステムの柳瀬秀人社長

 トモエシステムの母体会社が1947年に創業。建機部品を扱う部門が分離独立し、2011年に現トモエシステムが設立された。柳瀬社長は創業家一族で、大手外資食品メーカーなどを経て2010年に入社。2016年に社長に就任した。当時の社風は言ってみれば“昭和の雰囲気たっぷり”の会社。大手外資企業で働いた経験から、そのギャップは身をもって分かったという。
 「70余年の歴史の証」。それは市場・環境に対応し、進化させるDNAだ。そのキーワードの一つが「人材の活性化」だった。「社員がそれぞれの能力を発揮できるよう、その環境を作り、場を与えるのが私の仕事だと考えました」
同社の働き方改革はここからスタートした。

「働くこと」の意識を変えた制度改革

 働きやすい環境作りを目指すきっかけとなったのは、築40年以上たち、老朽化していた本社ビルのリニューアルだった。内装を全面リニューアルし、2017年に完成した。柳瀬社長は「まずは働く環境から手をつけようと思いました」と振り返る。「昭和の雰囲気が漂うビルでは社員の意識が高まらない。グローバル化も進めていかないといけないし、女性にもどんどん活躍してほしい。採用面でもマイナスです」とその意図について語る。
 さらに、「働きやすさ=ワーク・ライフ・バランスの実現」を追求した。「会社が社員の一歩先をいく。『社員の声があるからやる』ではなくて、会社が先に示してそれを実行しようと思いました」と柳瀬社長は説明する。全社的にワーク・ライフ・バランスの意識を植え付けていった結果、効果はすぐに表れた。

 まず、休暇取得が進んだ。有給休暇の取得率は2015年に65%だったが、2019年には80%に高まり、2016年に導入した時間単位有給休暇制度も定着した。また、労働時間短縮にも成功し、2015年以降は残業時間が少ない状態が続いている。
 賃金制度改革にも取り組んだ。「やれば 認めて 遇する」をコンセプトとし、目標管理制度、人事考課制度、賃金制度の3つの側面から3カ年計画で賃金制度改革を実施。2018年の平均年収は3年前に比べて20%強アップした。働き方改革は、活況な市場の追い風もあり、それだけの支給を可能できるほど業績面でも効果をもたらした。

 2019年には「男子育休100%取得宣言」を発表。同年の対象社員3人全員がチームの理解と共に育休を取得し、同宣言の達成となった。
 そのうちの1人が営業管理部マネージャーの川口友久さんだ。2019年9月に第二子が誕生。母子が病院から自宅に戻る日に合わせて休暇を取得した。川口さんは「既に熟成した風土と周りの支援のおかげでごく当然のように取得しました」と振り返る。「家事は何でもやりました。大変でしたが、おかげで妻のありがたみが身にしみました。生まれたばかりの子供と毎日一緒にいられて、よかったです。毎年いろいろ制度が充実してきており、会社はほんとに変わったと感じます」と和やかに語る。

2019年9月に第二子が誕生。育休中は「妻のありがたみが身にしみた」と語る川口友久さん

「女性の働きやすさ」が大きな財産に

 「働きやすさ」の点で、柳瀬社長が力を入れたのが「女性社員の活躍推進」だ。
 営業管理部の購買部門で主に貿易関係の仕事に就いている本田妃由さんは、産休・育児休暇を取得し、今年6月に1年9カ月ぶりに職場に復帰した。
 本田さんは「まわりの人も温かく対応してくださり、気遣いなく過ごせました」と休暇中を振り返る。それと同時に「制服はなくなっているし、ウェブ関連の機器やシステムが増え、社内の連絡もチャットになっている」と、復帰後の会社の変わりように驚いている。
 現在は時短勤務中で、毎日午後4時半に仕事を終え、子供を保育園に迎えに行く。育児休業中の時短勤務については法定で3年までとされているが、同社では6年に延長している。本田さんは「ここ数年で会社は見違えるように変わりました。特に女性にとっては働きやすい会社になったと思います」と目を見張る。

家族との時間を楽しむ本田妃由さん(右)

 現在85人の社員のうち、女性が半分近くを占める。「女性の社会進出が叫ばれ、久しくなります。日本企業が世界一遅れていると言われるジェンダーの平等実現は、進め方によっては当社の強みになると思っています。当社では多くの女性社員が大きな裁量権を持っており、『女性が働きやすい職場にしたい』といろいろ取り組む中で、ここにきてようやく次の一手を打てるタイミングが近いと感じています」と柳瀬社長は手応えを強調する。「業務範囲を広げ活躍が期待できる女性社員には、きちんと権限とポジションを与えようと考えています。何とか早く推進したいと思っていましたが、ようやく一定比率の女性社員をマネージャークラスに登用できる段階になりました。これは当社にとって間違いなく強みになります」と力強く話す。

 

 川口さんと本田さんが口をそろえるように、同社はこの3~4年で急速に変貌を遂げた。2人以外の社員からも「変わった」という声が聞かれる。「古くからの取引先から『別の会社ですね』と言われることもあります」と柳瀬社長は笑顔で話す。

 

コロナ騒動が後押ししたコミュニケーション改革

 もう一つの大きな変化が社内外のコミュニケーションのあり方だ。
 同社では近年特に全社員に研修を強化。新入社員や中途採用の社員が増えるにつれ、社内でコミュニケーションギャップが生じていたことから、研修で考え方や価値観などを共有。基本となる考え方・行動の軸づくりをし、チームビルディングを図っている。
 一方、コミュニケーションについては、今春の「コロナ騒動」が変化をもたらした。
 同社は中国に現地法人を有しており、コロナ騒動に関しては早くから危機感を持っていた。本社内の各部屋にモニターやカメラなどを設置し、在宅勤務やウェブ会議に対応できるようにした。この間、初めて在宅勤務を実施。社内会議もオンラインでこなすなど、社員の「ウェブ活用スキル」も否応なしに高まったという。
 同社側から積極的にウェブ会議を持ちかけ、毎日のように世界中の取引先との打ち合わせが進む。商談の内容によって「対面で行うもの」「ウェブで実施するもの」と分けるようになった。
 柳瀬社長は「特に海外の取引先とのコミュニケーションはハードルが下がり、気楽に、カジュアルになりました。平時だと社内に浸透させるのはなかなか難しいものですが、人間の環境適応能力と外圧でしか変われない世の常を感じます」と話す。

全社員に実施した研修の様子

社員が自発的に考え、行動する風土に

 今後の成長をめざす中で、柳瀬社長が思い描いているのは「ボーダレスな社会により一層対応する」「社内改革をもう一段進める」ことだ。「当社の取引先はまだ世界の建機会社の半分ほどで、欧米などは開拓の余地が大きい」と強調した上で、「こうしたエリアは日本の価値観とは違う。多様性を認め合い、個の力を活かし育み、新たな価値を創造する組織づくりを推進し、本当の意味でのグローバル企業にならないといけない」と力を込める。
 一連の会社の変化は、「会社がビジョンを打ち出し、社員を引っ張るスタイル」だった。柳瀬社長は「そうではなくて、10年、20年在籍している社員、古びた慣習に染まっていない若い社員達の考えをもっと経営に取り入れていきたい」と話す。そのためには「会社が引っ張るのではなく彼らが自発的に考え、行動するようにする。そんな風土にしたい」と意気込む。その風土こそが「働きがいの本質ではないか」と柳瀬社長は考えている。
 数年で同社は大きな変化を遂げた。「働きがいの本質」を求める同社の歩みはこれからも続いていく。

4カ国の社員が集った船上パーティーの様子

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

ワーク・ライフ・バランスの追求

効果
有給休暇や時間単位有給休暇の取得推進など、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた各種制度を導入。有給休暇取得率は2015年の65%が19年には80%に。また19年には「男子育休100%取得」を宣言。同年対象社員3人が全員取得した。
取組2

女性の働きやすさを実現

効果
産休・育休制度を推進。2019年には職場復帰後の時短労働期間を法定の3年から2倍の6年に延ばした。
取組3

社内外のコミュニケーション手法を改革

効果
「コロナ騒動」へ対応する過程で、ウェブ会議システムなどハード面を充実。社員が積極的に活用した結果、「社内外の連絡や打ち合わせ」「会議」「商談」などを大きくウェブにシフトし、コミュニケーションのあり方が変わった。

COMPANY DATA企業データ

ステークホルダーとの信頼に基づいて、「つなぐ力」によって健全な未来の創造に貢献する。

株式会社トモエシステム

代表取締役社長:柳瀬秀人
本社:神戸市兵庫区
従業員数:85名(2020年4月現在)
創業:1947年5月
資本金:1,000万円
事業内容:建設、農業、工場で使用される産業機械部品の専門商社

経営者略歴

柳瀬秀人(やなせ・ひでと)。1974年生まれ。97年関西学院大学商学部卒業。食品メーカー、会計系コンサルティング会社を経て、2010年トモエグループに入社。16年からトモエシステム社長。