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三共精機株式会社

業種

卸売業、小売業

地域

近畿

従業員数

30〜99人

File.29

制度や仕組みの再構築がもたらした〝自然体〟の改革―機械工具商社「三共精機」の場合―

柔軟な勤務形態

2020.09.24

三共精機株式会社

 苦境に陥ったのを機に事業を見つめ直し、将来の方向を明確化し、同時に、制度や仕組みといった経営のベースを再構築した――。機械工具商社・三共精機(京都市南区)は改革のきっかけを基に、自分たちが有しているものをうまく前向きにコントロールした結果、事業や働き方を大きく変えることにつなげた。

 「それを狙ってやったわけではない。結果としてそうなった」と石川武会長は話す。その言葉通り、経営トップが目標を掲げて社員を引っ張って改革を推し進めたわけではない。改革に必要なことを地道に、確実に実施。言わば、ベースをしっかりとつくっておいて、社員が無理なくその方向に向かうように働きかけたといっていい。
 石川会長は2009年に社長に就任、2020年5月に会長に就任した。社長就任時はリーマン・ショック後の景気低迷の真っただ中。円高で取引先の大手企業は資材の調達を海外に移し、同社の売り上げは目に見えて落ち込んだ。生産のグローバル化が進み、「景気が回復したとしても、ビジネスは元通りにはならないのではないかという危機感を持った」と振り返る。
 改めて会社はどうあるべきかを考えた。その結果、導き出したのが「モノづくりの課題解決業」という企業像だった。「商社として単に作業工具を売るのではなく、それをベースに、取引先企業の生産現場にあるさまざまな課題やニーズを解決する。そういう事業体に変わろうと考えた」(石川会長)。

社員の処遇を一本化

 働き方改革の第一歩になったのが、リーマン・ショックの前年、2007年に社員の給与・処遇制度を一本化したことだった。これが新たな企業像を追う体制のベースになった。
 それまでの同社はいわば「古い体質」のままだった。社員は総合職と一般職に分かれ、総合職は男性で営業職、一般職は女性で事務職。つまり男性は外で稼ぎ、女性は内勤でそのアシスタント業務という具合にはっきりと分かれていた。
 当時、世の中は工具類をインターネット上で調達する動きが急速に進んでいた。ネット専門の業者が台頭する中、「事務職の女性にも営業にタッチしてもらい、共に事業や利益のことを考える体制にしないと会社の発展はない」と石川会長は思った。思い切って男女の処遇を一本化。全社員を総合職にした。当時、業界では異色の取り組みだったが、ここから会社は変わり始める。

海外事業グループのオフィス。まるでスタジオのようで、堅苦しさがなく、オフィスとは思えない雰囲気だ

全社員の1割が外国人社員

 同社の改革で注目すべきは、そのときに有している人材をうまく活用している点である。一足飛びの改革ではなく、ごく自然に、無理なく社員が力を発揮できるよう工夫している。
 一例が海外展開だ。外国人社員が初めて入社したのが2009年4月。京都の大学を出た中国籍の女性だった。取引先の海外進出にどう対応するかが課題になっていた時だ。外国人社員の採用は初めてだったため、さまざまな面でハードルが高かった。慣れるまで本人も会社側も苦労したというが、日本語、中国語、韓国語の3カ国語を話すことができたことから、会社にとって大きな武器となった。そこから中国、韓国でのビジネスに着手した。

プロジェクトには日本人社員も外国人社員も関係なく、一体となって取り組む

 それ以後、海外事業のための人材を募集していることを内外にアピール。すると応募者が相次いだ。もちろん、すべてがうまくいったわけではない。しかし、現在全社員74人中、外国人社員は中国、韓国、台湾の7人と1割を占める。
 その一人が、入社6年目になる韓国人の許鉦さんだ。京都の大学を出て、帰国するか、日本で就職するかを迷っていたとき、同社のインターンシップを経験した友人からこう聞いた。「雰囲気のいい会社だよ」と。韓国人スタッフを募集していたこともあって入社した。

海外の展示会ブースで。右端が許鉦さん。許さんは「国籍なんて誰も意識していない。とても働きやすい」と話す

 許鉦さんは現在、営業企画部に在籍し、韓国とのビジネスを中心に仕事をしている。「とても働きやすい。国籍がどうのといったことは社員の誰も意識していない。大学時代と合わせ、人生の3分の1が京都になった」と屈託なく笑う。
 現在の海外事業の売り上げはまだ全体の数%程度。当面10%が目標。石川会長の後を継いで就任した伊東大介社長は「外国人社員の活躍をベースに、今後、一層グローバル志向を強めていきたい」と話す。

社員の柔軟な連携で新しい働き方、事業が生まれた

 もう一つ例を挙げると、システム事業の展開がある。同社では、在庫管理など業務用システムに業界の標準システムを使用していた。しかし、いま一つ、使い勝手が悪い。ならば自分たちで構築しようと、外部のシステム開発会社と組んで2年がかりで開発した。
 当時、一緒に取り組んだSE(システムエンジニア)が、その時の縁で同社に入社した。しばらくは、構築したシステムの運用にあたっていた。そのうち、「取引先の要望に応じたシステムを開発すればビジネスになるのではないか」とのアイデアから、現在のシステム事業を3年ほど前に立ち上げた。
 石川会長は「これこそ〝モノづくりの課題解決業〟」と語る。「それを目的にシステムを開発したわけではなく、結果的にそういう展開になった」と笑うが、その後、同事業に興味を持つSEが相次いで入社。現在、3人の社員がこの事業に当たっている。新たな企業像に向けたこれからのビジネスといえよう。

フリースペースに関係者が集まって打ち合わせ(手前のテーブル)

 処遇制度の一本化とともに、働き方のベースを大きく変えたのが、営業スタイルの変更だ。かつては営業所単位でする営業活動を展開しており、営業所ごとに取引先企業があった。同様に、日々の営業活動も伝票処理なども、すべて営業所単位になっていた。
 ところが、取引先が複数の事業拠点を持つ大手企業となると、コスト面や危機管理上のBCP(事業継続計画)面から、会社全体で資材調達を考える必要が生じた。「営業所単位でやっていると、自分の営業所の数字のことしか考えない。取引先全体を見る発想に変えないといけない」。そうした考えから、2016年、新しい体制を導入した。
 複数の事業拠点を持つ取引先に関しては、営業所の縦割り組織を廃止し、関連する営業所を横断する体制にした。関連する各部署、拠点の社員がグループを作って営業活動に当たるようになった。
 もちろん、そこには内勤の社員も加わる。「処遇を一本化していたので、こうした体制をとることができた。これで取引先に対して、大きな視点からいろいろなアプローチや提案ができるようになった」と石川会長は説明する。

オフィスにはバランスボールも。これに座って仕事すれば気分も変わる?(写真は伊東大介社長)

時短を進める過程で社員の意識が変化

 働き方改革の点で、目覚ましい効果が出ているのが労働時間の短縮だ。かつては残業が当たり前で、月間30時間を「みなし残業」として、30時間分の残業手当を固定で支給していた。
 これを営業職と事務職の連携で効率を上げたり、フレックスタイム制を導入したりすることで、まず20時間に減らした。短縮した10時間分の手当ては、基本給に組み入れた。実質、賃金が上昇したことになる。
 この時短への取り組みをどんどん進める過程で、働くことへの社員の意識が変わっていった。残業するのでなく、時間内に仕事を終わらせることに価値、値打ちがあると社員がとらえるようになった。時間はかかったが、今ではそうした意識がほぼ浸透しているという。
 2019年、「みなし残業」がゼロになった。かつての30時間分の手当ては基本給に入った。以降、残業すれば、当然、その手当がつくようになった。
 他にも働きやすい職場に向けていろいろな取り組みを実施している。限定社員制度は勤務地や職種を限定して働ける制度だ。例えば、子供の教育や親の介護といった事情がある期間、限定社員を申請でき、その期間が過ぎれば変更もできる。育児休暇や産休制度はもちろん、外部の専門機関に登録し、社内では言えない悩みを相談できる体制も整えている。石川会長は「社員をサポートしなければならない事態になったとき、それをできる体制を整えておくことが大切」と話す。

「半日休暇なども気持ちの負担なく取得できるのがありがたい」と言う近藤さんは、仕事と家庭を両立させている。

 小学生の子ども2人をもつ近藤博子さんは2年前に入社した。内勤の営業事務をしながら商品のPRをすることもある。「半日の有給制度もあって、PTAの活動や授業参観に気兼ねなく参加できる。社内がそういうムードで、気持ちの負担なくできることが一番ありがたい」と話す。かつて、中国語を独学したこともあり、海外事業にも関わる。海外出張もこなすなど、「マルチ人間」が社内の評だ。「外国人社員も多いし、楽しい」と充実した毎日を送っている。
 伊東社長は「楽しく仕事をできることが、結果としていい仕事につながるし、働き方改革にもつながる。そのためにも社員間のコミュニケーションを高めることが大切で、それを後押しする〝仕掛け〟をつくっていきたい」と力を込めた。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

多様な人材の活躍

効果
外国人社員が7人と全社員の1割を占める。外国人社員の入社をきっかけに海外事業の展開に乗り出した。また、社内システムの開発を進めた際、担当だったシステム開発会社のSEがその縁で入社。そのSEを中心にシステム事業に乗り出すなど、社員のもつ能力をうまく活用して事業展開に生かしている。
取組2

組織の連携強化による事業戦略

効果
営業職と事務職の垣根を低くし、両者が連携して事業や利益を考える体制を浸透させている。この両者の連携は労働時間の短縮の面でも著しい効果を上げた。また、大手取引先に対しては、本社や営業所など関連する部署を横断するグループをつくり、より大きな視点から営業活動を進めている。
取組3

柔軟な働き方を実現する制度

効果
フレックスタイム制度、産休・育休制度、半日有給休暇制度など、社員が働きやすいようさまざまな制度を設けている。限定社員制度は勤務地や職種を限定して働く制度で、子供の教育や親の介護など、必要な期間だけ申請でき、必要がなくなれば変更も可能。社員が困ったときのサポート体制を充実させている。

COMPANY DATA企業データ

TRY NEW WAY —挑戦する事を楽しむー

三共精機株式会社

代表取締役会長:石川武
本社:京都市南区
従業員数:74人(2020年4月現在)
創業:1942年
資本金:1,000万円
事業内容:切削工具、測定工具・機器、工作機械など機械工具の販売

経営者略歴

石川武(いしかわ・たけし)
1966年大阪市生まれ。1990年同志社大学法学部卒業、東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行。2002年三共精機入社。2009年社長。2020年会長就任。