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株式会社アルファ技研

業種

学術研究,専門・技術サービス業

地域

北海道・東北

従業員数

30〜49人

File.32

トップ主導で時間管理の意識を徹底 ―時短・年次有給休暇取得に取り組む アルファ技研の場合―

多様な休暇制度

2020.10.07

株式会社アルファ技研

農業土木の技術者が集まるアルファ技研。土谷貴宏社長は「うちの社員はみんな優秀ですから」と誇らしげに語る。

 農業王国の北海道。札幌市西区にある「アルファ技研」は、農地の大区画化や農業水利施設の計画・設計など農業・農村整備の建設コンサルタント業務で、1977年の創業以来、北の大地の実りを支えてきた。
 「北海道の食料自給率は約200%。日本の食の供給地です。私たちの仕事を大きく言えば、日本の食料の安全保障に関わっている。一方で、農家さんにとって使い勝手のいい田んぼや施設を設計して、やる気のある農家さんを支援する地域貢献的な役割もある仕事だと思っています」
 入社37年、社長に就いて4年になる土谷貴宏さんは社業をそう説明する。

働き方の社内制度改革でリーダーシップを発揮する土谷貴宏社長

 社員41人のほとんどは技術士や測量士などの国家資格をもつ技術者で、仕事は国や自治体が発注する公共工事関連が大半を占める。年度始めから秋口までの業務量は少なく、納期が集中する年度末に向けて多忙になるのが毎年の慣例。そこで、業務の繁閑サイクルに合わせた柔軟な働き方を採用している。

業務の特徴に合わせ時短を実施

 午前8時半から午後5時半(うち1時間休憩)の就業時間を、4月から6月までの3か月間は終業を午後5時とし、30分繰り上げた。年間でみれば30~40時間の時短になるが、給与は減額せず、短縮した時間も労働時間とみなしている。派遣社員も同じで、3か月間は実質、時給がアップする形だ。2008年度から始め、定着させてきた。
 年次有給休暇も取りやすい環境をつくる。事業年度開始の6月1日には、全社員が年間の休暇計画を立て、総務担当の取締役に提出。総務がグループウエアのスケジュール機能に全員の予定を入力し、共有するようにした。年5日の年休取得が義務化された19年度よりも前の16年度から、年5日の計画的な年休取得に取り組んでいる。
 「役員も含めて全員が休みを申請するので、ちゅうちょも遠慮もないです」と土谷社長。8月には2日間、就業規則に定めた特別休暇を付与し、土日や年休と合わせた長期間の休みを推奨する。特別休暇は派遣社員にも適用している。

勤務時間の管理を怠ると評価減点

 今年さらに力を入れているのが勤務時間の管理だ。4月15日、グループウエアの掲示板に社長のメッセージを出した。
 <改正労働基準法の施行により、中小企業においても労働時間管理はこれまで以上に必要となっています。タイムカードの押し忘れや打刻ミス、PCの電源OFF、勤務間インターバルの確保が十分に機能していません>と指摘した上で、徹底を図るために、<やむを得ず、人事評価と連動することとしました>と、5月1日からの実施を宣言した。
 具体的には、「タイムカードの打刻漏れ」を月3回行ったら、人事評価点から0.5点を減点、4回で1点、5回で1.5点減点する。出退勤記録を残す「パソコンの電源切り忘れ」も同様だ。
 勤務間インターバルは、前日の終業時間から翌日の始業時間の間に一定の休息時間の確保を求める制度。2019年度施行の労働時間等設定改善法の改正では「事業主の努力義務」とされたが、同社では11時間のインターバルを確保することを就業規則に盛り込んだ。
 11時間のインターバルが確保されていないケースが月2回あれば0.5点、3回で1点、4回で1.5点と、さらに厳しく減点する。これらの人事評価点は、昇給やボーナスの査定に反映させるという。
 月初めに、全社員の前月分の勤務データを社長がチェックする。インターバルなど1回でも怠った社員には総務が確認し、「間違いありません」と本人から認め印をもらうという徹底ぶりだ。
 「私らは技術屋だから、あと1時間あればもっと良いものができる、仕事が好きだから働きたい、という社員もいます。それを逆に、仕事をするなと言っているわけですから、気の毒に思う気持ちもある。ワーク・ライフ・バランスで効率的に働く意識を一人ひとりが持たないといけない時代に、会社の本気度を見せるため、あえてやりました」。人事評価と連動させた考えを土谷社長はそう語る。

派遣社員に研修の機会を提供

 アルファ技研では派遣社員に、社員とほぼ同じ研修の機会を与え、知識やスキルを高めて正社員にも登用している。
 事業部資源計画グループの齊藤奈穂さんは、2016年から派遣社員として2年間務め、直接雇用の契約社員を1年経て今年6月、会社からの誘いを受けて正社員になった。技術補助職としてイラストレーターやCADを使った図面製作などに携わる。

「休日は湖でカヤックに乗るのが楽しみ」と話す齊藤奈穂さん。年休がとりやすいアルファ技研に勤め始めてからの趣味という

 派遣社員の当初は技術的な仕事を覚えられるのか不安だったが、働きながらスキルを身につけてきた。「この研修に行きますかと、派遣社員にも聞いてくださるのです。ワード、イラストレーター、CADに、エクセルは2回受講しました。それらが使えるようになると仕事の範囲が広がって、やりがいも出てきました」。研修費用はすべて会社負担で、就業時間内に社外でも受講したという。
 社員になったことで初めて現場に出向き、2泊3日で農業用水関連の測量をした。「茂みに入って測ったりして疲れましたが、終わった後の達成感がすごくありましたね」と齊藤さん。分け隔てのない研修機会は、会社の戦力アップになっている。

無駄のない仕事運びを意識

 女性社員は13人で全体の約3割を占める。独自の時短や年休取得制度は、女性の働きやすさにもつながっている。
 システムエンジニアで、総務部システム課主任の櫻庭淳子さんは、在職21年の間に3人の産休育休を経験した。小学4年と1年、保育園児の子育ては夫と分担し、母親のサポートもあるが、会社の働き方への取組が支えになっているという。
 「残業をしないようにとか、インターバルを取るとか、子育てしながら働きやすい環境があります。限られた時間で、無駄のない仕事を意識するようになりました」

「3回も産休育休を取って仕事を続けられる会社はそうないのでは」と話す櫻庭淳子さん。今後も働き続けたいと語る

 所属するグループ長の提案で今春から、毎週月曜日にグループ会議を開いている。今週やるべき業務項目を上げ、優先順位と進捗目標を設定し、各人の分担を確認する。誰が何をしているかを把握し、業務量が一人に偏らないようにする。仕事のやり残しや二度手間を防ぎ、就業時間内に終わらせる仕事運びを心掛けている。
 「夜の11時、12時に帰るのが当たり前という時も以前はありました。やっぱり体力的につらかったです。長く仕事を続けていくのなら、今の働き方が良いです」と櫻庭さん。
 限られた時間でどうパフォーマンスを上げるか。トップの方針を受けて、社員自らが工夫を重ねている。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

閑散期の終業を30分繰り上げ

効果
業務量が年度後半に集中する事業の特徴を踏まえ、閑散期の4~6月の終業時間を30分繰り上げる「時短」を実施。短縮分の賃金は支払う。
取組2

年度開始時に全社員が計画年休提出

効果
毎年6月1日の期首に、全社員が年間の休暇計画を提出し、グループウエアで共有。全員出すことで年休がとりやすい環境をつくる。
取組3

人事評価に勤務時間管理を反映

効果
タイムカードの打刻、パソコンの電源オフ、勤務間インターバルの3項目を守らない社員は人事評価点を減点。勤務時間管理の意識を高めるため、社長提案で今年から実施。

COMPANY DATA企業データ

農業・農村に寄せる熱い思いを

株式会社アルファ技研

代表取締役社長:土谷貴宏
本社:札幌市西区
従業員数:43名(正社員41名、非正規雇用労働者2名=2020年7月末現在)
設立(創業):1977年
資本金:2,000万円
事業内容:北海道内の農業・農村整備事業の調査・計画・設計を主にした建設コンサルタント業。

経営者略歴

土谷貴宏(つちや・たかひろ)1956年生まれ。岩手大学農学部卒業。1983年アルファ技研に入社。2005年事業統括部長、2012年専務取締役、2016年8月に社長就任。北海道土地改良設計技術協会監事、札幌市商工会議所建設部会常任委員。