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株式会社ピアライフ

業種

その他

地域

近畿

従業員数

50〜99人

File.42

社員の「働きがい」を顧客満足度のアップにつなげる―不動産業「ピアライフ」の場合―

幅広い人材活用

2020.12.10

株式会社ピアライフ
 滋賀県大津市のピアライフは、不動産売買の仲介や賃貸の仲介・管理などを手がける企業だ。本社にはカフェテラスのような商談室、セミナールームなどを備えており、広くて開放的な印象を受ける。同社は地域に密着した事業を展開する過程で、「社員の働きがいがお客さまへのサービスになる」という考え方のもと、さまざまな働き方改革を積み重ねてきた。すべての改革の原点は、永井茂一社長の体験にある。そこから得た信念が今日の同社を築き上げた。「不動産業のイメージを変えたい」との一心で永井社長が取り組んできた働き方改革とは。

働き方を変えた12の取り組み

 永井社長は愛知県生まれ。大学を経て父の経営する会社に入社。役員に就任するも「経営のことが全く分からなかった」と当時を振り返る。がむしゃらに仕事に取り組んできたが、28歳の時、父と衝突して家を出た。

働き方改革の原動力となった自身の経験について語る永井茂一社長

 縁もゆかりもない滋賀県に来て、ある会社に入社。ところが、その会社が1年あまりで倒産した。転職するも、その会社も半年ほどで経営破綻。ピアライフの親会社である建設会社に転職したが、またもや倒産。わずか2年余りのうちに3度の倒産を経験した。

 当時のピアライフは設立されて間もなく、社員6人のうち、3人は倒産した親会社の経営陣の親族。倒産に伴い経営から手を引いたため、残った3人が経営を引き継ぐことになり、永井社長が代表に就任したが、会社は債務超過の状態だった。

 永井社長の経営者人生はここから始まった。築50年の借家で事業を始め、「少しでも社員が働きやすい職場に」との思いで、一歩一歩階段を上るように7回の引っ越しを重ねた。「不動産屋といえば土地ころがしなど悪徳イメージが強い。これを変えたいという思いもあった」と当時の心境を明かす。

カフェスペースを使い、接客などのさまざまな研修を実施する。堅苦しさは全くない

 「社員が自分の会社を誇りに思えるような会社にしたい」との思いで、ハード面であるオフィスの整備に次いで、ソフト面である制度面での改革に乗り出した。

 まず、給与制度にメスを入れた。不動産の営業は多くが歩合制で、売り上げを上げた社員が多く給料を得られた。結果、社内で顧客の取り合いになり、それは社員同士の関係を悪化させることにつながった。「本来、社員が力を合わせてやらなければいけないのに、働く目的がお客さまのためでなく、お金を儲けるためになっている。これでは働きがいを感じるはずがない」と、歩合制の廃止を決断した。

 永井社長はさらに改革を推し進めた。その結果が「ワークアメニティ11」と名付けた働き方改革である。時間外労働の抑制、専門資格の取得奨励、リフレッシュのための休暇など、社員の意向が反映された制度は0から始まり12まで並ぶ。「社員が少しでも働きやすいように」と、できることから実践し、体系的にまとめたのが2016年。それに向けて「働きやすい会社づくり」というテーマで会議を重ねるとともに、何度も社員にアンケートをとった。現在、社内に専門委員会を設置し、社員自ら具体的な施策を模索している。その内容は以下の通りだ。

    <ワークアメニティ11>
  • バカンス0 …… 全社員で目標を達成して、仕事気分を0にして海外でバカンスを楽しむ
  • ベネフィット1 …… 年2回の賞与のほかに、会社の利益を決算賞与として年1回支給する
  • スパ・パーティー2 …… 1泊2日の日程を組み温泉地で忘年会を開催し、一年の疲れを癒す
  • バースディ3 …… 本人、配偶者、両親の3者の誕生日祝いをプレゼントする
  • マイスター4 …… 社員が最低4つの専門的な資格を取得するよう奨励する取り組み
  • イクメン5 …… 男性社員が連続して5日間以上の育児休暇の取得を奨励する取り組み
  • チャイルド6 …… 6歳(未就学)までの子供を、懇親会や慰安旅行など会社のイベントへの同伴参加を奨励する
  • リターン7 …… 午後7時以降の残業を原則禁止し、時間外労働を抑制する
  • リフレッシュ8 …… リフレッシュのため、家族旅行など8日間連続して休暇をとることを奨励する
  • プライオリティ9 …… 育児、介護、子供の教育、地域活動への参加は、優先して休(9)暇を取れる取り組み
  • サンキュー10 …… 勤続10年ごとに、連続10日間の特別休暇と、支えてくれた家族に10万円の感謝金を贈る
  • インターバル11 …… 夜間の突発事項発生などに対応、休息時間を確保するため、退社時から11時間以内の出社を禁止する

 

 これらの取り組みを進めた結果、それまでは月間100時間程度となることもあった残業時間が、現在は平均で7~8時間程度と大幅に減少した。また、年間の休日が40日(約4割)増加したという。「働きがいとは、仕事のやりがいをどう生み出すか、また働きやすさをどう作り出すかの2つだ。ワークアメニティ11は今や企業文化となっている」と永井社長は説明する。

多様な人材が活躍

 永井社長が自身の体験を通して信念として持っていることがある。それは「人は磨いたら必ず光る。それを実現することで働きがいが創出される」というものだ。同社の社員は34人。ハンディキャップのある社員もいるが、同社で身につけたスキルを生かし、それぞれの部署で活躍している。永井社長は「彼らを見ていると、働くことがこんなにも人を変えるのかと、私の方が教えられる」と笑顔を見せる。

「障害をもった人たちの住まい探しなどもサポートしたい」という賃貸事業部の大川さん

 賃貸事業部の大川葵さんは、生まれつき聴覚障害がある。入社して5年。賃貸管理の更新などの業務を担当している。「電話対応ができないなど、ハンディキャップもあるが、仕事の幅は広い。障害をもった人が住まいを探すのは現実問題として難しい面があり、そんな人たちのサポートができればと思う」と永井社長は語る。

 会社は筆談用ボードや会議などでUDトーク(話し声を文字に置き換えるソフト)などのツールを利用したり、映像に字幕をつけたりといった配慮をしている。

 大川さんを採用するとき、「聴覚障害に配慮する以外は、他の社員と同じように対応する。できれば接客もしてほしい」と伝えたという。当初、大川さんは戸惑っていたが、今では「耳が聞こえないが、口の形で言葉がわかる」「ゆっくり私の顔を見て話してほしい」などと自分のことを相手に伝え、簡単な接客対応もこなす。
 「彼女が入社したおかげで、『伝える』ことの大切さを社員皆が知った」と永井社長。「大切なのは『伝えたか』でなく、『伝わったか』だ」ということが、社内の共通認識となっているという。

初めての外国人社員として入社したイラリアさん。伊、英、日の3カ国語を話し、販売促進のほか、受付で来客対応もこなす

 また、2020年4月には、同社にとって初めての外国人社員となるイタリア人のウゴニ・イラリアさんが入社した。販売促進部に所属しているが、本社の受付にも立ち、来客対応もする。「最近は地方都市でも外国人が来るようになった。これから日本はもっと外国人を受け入れるようになるだろう。そうなると住まいを探す。それに対応するために外国人社員を採用した」と永井社長は説明する。

 イラリアさんは中学生のころから日本に興味があり、20歳のとき、短期間の留学で京都に滞在した。それから3年経ち再び京都に。日本語学校とデザインの専門学校に通い、同社に入社した。京都に住んで3年になる。「会社にはすぐに溶け込めた。現在、英語のチラシやホームページを作ったりしている。住まい探しで外国人にしか分からない不安などを解消し、サポートしたい」と流ちょうな日本語で話す。

 9月には台湾人の社員が入社。「これからも多様な人材に働いてほしい」と永井社長は考えている。

地域社会との交流を推進

 「社員が会社に誇りを持てるように」と、同社が積極的に取り組んでいるのが地域社会との交流だ。不動産業は地域密着型のビジネス。「地域社会に溶け込むことは、そのまま働きがいにつながる」との考えからだ。

 こうした考えだからこそ、本社は一見不動産業とは分からないような雰囲気となっている。商談スペースの名は「ピアライフ カフェ」。その名の通り、カフェのような雰囲気だ。不動産の相談事がなくても、訪れた人がカフェとして利用しても構わないという。

セミナーなどに使用する「コミュニティーホール」は地域住民に開放。地元の子供会や老人クラブなどが、さまざまな活動に使用する

 不動産のセミナーや社内の研修などに使用する会議室は「コミュニティーホール」として、地域住民に無償開放。子供会や老人クラブ、さまざまなサークルが活動に利用している。

 毎年7月末の土日には夏祭りを実施。子供から大人まで2日間で1000人を超える地域住民が集まる。社員も全員参加し、綿菓子や輪投げ、かき氷など、子供向けのいろいろな屋台を運営する。ちょっとした地域の交流拠点となっている。

 
地域住民が集まる「夏祭り」は社員が総出で運営する。同社はちょっとした地域交流の拠点だ

 「地域の人たちに喜んでもらい、地域の役に立っていると社員に感じてもらいたい。そんな会社で自分は働いていると実感してもらえば、そのまま働きがいにつながる」(永井社長)。地域への貢献が、社員の働きがいとリンクする。持続可能性のある「働き方改革」ともいえよう。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

「働きがい」を実現するための12の取り組みを実践

効果
労働時間短縮や休暇取得などを目的に「ワークアメニティ11」と名付けた取り組みを実践。残業時間の大幅短縮や年間休日の増加など、顕著な効果を上げている。
取組2

多様な人材に活躍の場を提供

効果
障害者や外国人など、多様な人材を採用。それぞれの能力を生かした部署に配属し新たな事業展開につなげているほか、他者への理解が深まったことで社員の成長にもつながっている。
取組3

地域社会との交流を推進

効果
カフェのような商談スペース、セミナーなどに使うホールは地域住民に開放。また、毎年夏祭りを開催するなど、積極的に地域との交流を図っている。地域に溶け込むことが、社員の働き方の意識改革ももたらしている。

COMPANY DATA企業データ

不動産取引を通じて、快適な住環境を提供する。

株式会社ピアライフ

代表取締役:永井茂一
本社:滋賀県大津市
従業員数:34人(2020年4月現在)
設立:1990年
資本金:2,000万円
事業内容:不動産売買仲介、賃貸仲介・賃貸管理など

経営者略歴

永井茂一(ながい・しげかず)
1960年愛知県生まれ。大学を中退し、父親の経営する会社に入社。退社して滋賀県に。働いた会社の倒産、経営破綻を3度経験し、1990年ピアライフの経営を引き継ぎ代表取締役に就任。