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ライフネット生命保険株式会社

業種

その他

地域

関東

従業員数

100〜300人

File.49

社員の自己実現を会社が支援―副業・兼業を推奨する ライフネット生命保険の場合―

働きやすい職場づくり

2020.12.22

ライフネット生命保険株式会社

森亮介社長(写真左)と談笑する社員たち。個を尊重する職場環境や人事制度は、新卒・転職者に人気だ

 2008年に設立したライフネット生命は、20~40代を中心とした子育て世代に支持され、2020年9月に保有契約40万件を超えた。スマートフォンで保険が申し込めるサービスや、死亡保険金の受取人に同性パートナーも指定可能にするなど、時代のニーズを捉えた新たな取り組みを次々と打ち出している。

 生命保険は、互いに支え合う「相互扶助」の精神に基づいた、個人の人生に向き合う商品だ。その考え方は、ともに働く仲間に向けた社内制度にも貫かれている。

「相互扶助」の精神にのっとり、特別休暇を創設

 2017年に販売を開始した「がん保険ダブルエール」を機に、社内でもがんの治療をしながら働き続けることをサポートする制度を導入。休職前、休職中、復職後を通して支援する。

 具体的には、本人や家族、パートナーの病気やけがの看護を目的に、法定の年次有給休暇とは別に、年3日付与する特別有給休暇(ナイチンゲール休暇)の未使用分を、従業員が会社に寄付して積み立て、がんに罹患した同僚に贈る「ナイチンゲールファンド休暇」制度を設けた。利用者は、入院治療に向けた準備期間として10日間受け取れる。

 また、休職中は給与の8割を最長4か月間支給。復職後には最大12日間取得できる有給の「ダブルエール休暇」と、6か月間、毎月5万円の「ダブルエール手当」を支給する。通院や体調不良での休み、治療に伴うタクシー代などの出費を想定した支援策だ。これらの制度は、がん保険をつくる際、がん経験者へのヒアリングを重ねるなかで考えた。

「個人の自己実現欲求を満たす器」。会社をそう例える西田政之副社長。社員の成長を評価し、支援する人事制度を整えてきた
             

 「ナイチンゲールファンド休暇は、保険というビジネスとも重なる相互扶助の最たる姿です。安心して働ける職場だという信頼が醸成されることで、社員のパフォーマンス向上にもつながると考えています」と、CHRO(最高人事責任者)を務める西田政之副社長は話す。

 従業員の働き方について西田副社長が重視するのは、ルールで縛らず、自律的な行動を促して個人の力を発揮してもらうこと、会社を使っての自己実現を支援することだという。2010年から複業・兼業を認め、推奨しているのも、そうした理念からだ。

副業は会社との絆を深める

 人事総務部で部長代行を務める篠原広高さんは、“複業”として日本大学芸術学部でキャリア教育の講座を持つ。東京・新宿で就活生を集めたカフェを運営していた経験を買われて13年から教えている。

 「就活カフェに来ていた学生が納得して入社したのに、1、2年たつと、つらいと言って心を病んでいく姿を目の当たりにしてきました。人が生き生きと働ける環境を、組織に入ってつくることで、学生に何か伝えられるものが増えるかもしれない」。そう感じて人事の仕事を希望し、大学と兼業できる会社を探した。就業規則上難しいと言われる企業もある中で、ライフネット生命は「むしろ兼業してください、と。本当にありがたいと思いました」。16年に入社し、現在は8名の部署の管理職として働いている。

「ライフネット生命の仕事に迷惑をかけない、疎かにしない」。それが複業をするうえで大事なポイントだと話す篠原広高さん

 大学の授業では、木曜午後4時20分からの5限目を受け持つ。同社は午前9時から午後5時半までの所定労働時間のうち、午前10時から午後3時をコアタイムとするフレックスタイム制を採用する。木曜は午後3時に仕事を終え、新型コロナウイルス感染拡大前は大学に、今は自宅に戻り、リモートで教えている。週末を使って教材を準備する。

 兼業について篠原さんは「一つの企業だけにコミットメントを求めず、複線的なキャリアを通じて自分を成長させていく。そういう個人の成長を応援する会社には恩義を感じますし、だからこそ、この会社にできる限り貢献したいと思う。従業員と会社の絆を深めることにもなると思います」。

 副業・兼業は、競合他社での就業を禁じる以外に制限はなく、会社への申請で認められる。従業員の約1割が行っている。同社では、正副という優先順位はなく、どちらも大事なもの、どちらも成長に寄与するものとして、社内では「複業」という位置づけで「副業・兼業」を推奨している。

社内勉強会が大学院で学ぶきっかけに

 自己実現を勉学に求めた人もいる。お客さまサービス部長の大畑友香さんは昨春から、慶應大学大学院に通う。

 きっかけは講師を招いた社内勉強会だった。人に会う、本を読む、旅をする。これらが人生を豊かにするという同社の創業者・出口治明氏の考えを継いだ社内活動の一つだ。

 「幸福学、幸せについての話でしたが、これからの社会で大事なテーマだと感銘を受けて、講師の先生が勤めておられる大学院を調べて受験しました」

大学院で学ぶ大畑友香さん(写真左)。仕事と学問の両立で気を付けたのは、「睡眠をしっかり取ること」。仕事のパフォーマンスが落ちないよう心がけた

 修士1年目の昨年は平日2日の夜と、土曜日は終日授業を入れた。職場で共有するスケジュール表に授業の予定を入れておくと「退社直前のミーティングは入れないように、皆さんが配慮してくれました」。

 専攻するシステムデザイン・マネジメント研究科では、複雑な問題を解決に導く多様な視点からの思考やコミュニケーションを学んでいる。「全員が理解できているか、何か落としていることはないかと、仕事の中で考えるようになりました。大学院で様々な業種、経験をもつ人との議論を通して視野が広がったと感じます」と大畑さんは話す。

1年間の「成長度」を自己評価

 人事評価は「業績貢献度」と「成長度」の2つを軸にみる。同社の特長を表すのは成長度評価だ。

 年度初めに、1年を通して実現させたいことを自分で決め、年度末に達成度や目標に向けてどこまで成長できたかを上司とともに自己評価する。それを成績に反映させている。

 新規の企画を立案して発表したい、簿記1級を取りたいなど、内容は問わず、いくつあってもいい。18年度から採り入れたという西田副社長は「自己の成長と挑戦を促す取り組みですが、自律的に動かざるを得ないので、ある意味、厳しい制度です。仕事を自分事と捉えるようになったと思います」と話す。

 設定した目標は進捗に応じて見直せる。その機会が、上司と1対1で話し合う「1on1ミーティング」だ。部下の成長のために上司が時間をつくり、コーチングしている。月1回は行うよう推奨する。

地方移住を希望してリモート勤務

 マーケティング部の三宅綾さんは、その「1on1」の場を使い、自ら望む働き方を会社に申し出た。「面談で、どういう働き方をしたいですかと聞かれて、地方に移住したいので在宅勤務制度を導入してくださいと話しました」。

 夫婦ともに山の見える涼しい土地での生活に憧れていた。トライアル導入を経て18年に長野県に移住し、今は完全リモートで働く。

新型コロナウイルス感染拡大前は週2日、東京の本社に出社。今は長野県の自宅から完全リモートで働く三宅綾さん

 願いがかなった分、当初は気負っていた。労務管理の難しさを指摘されないように「1分単位の業務報告を作っていました」。

 何時何分に電話した、メールチェックしたと書き出したエクセル表を、終業時に同僚全員に送信した。出社したときは迷惑をかけていないかと尋ねて回った。「そんなに細かく報告しなくても、信じているから大丈夫だよ」と返してくれた言葉に救われたという。今は、始業時にその日の予定と終業時の業務報告、休憩の始まりと終わりの4つを、部署全員に連絡することをルール化している。

 4月の緊急事態宣言後の出社率は約2割、10月時点で4割ほどに増えたが、西田副社長は「コロナ以前から出社率5割にしたかった」という。事業拡大で従業員が増え、手狭になってきたが、オフィスを広げるのではなく、多様な働き方での解消を考えている。「リモートでのコミュニケーション不足を補う、第三の働き方の導入を検討しています」

定年退職は自らが判断

 定年は設けていない。期待される能力が発揮できればいつまでも働けるが、できなくなれば自らの判断で退社する。また、役職任期制度があり、同じ部署で部門長の役職を務めるのは原則3年までと決め、その間に後任を育てるよう求めている。任期満了後は、本人の適性に合わせ、別の部署での部門長か、エキスパートとして同じ部署で次の部門長を支える。

 成熟した業界の殻を破る革新的な商品やサービスは、自ら成長しようと努める自律した社員から生み出されている。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

がんの治療と就業の両立支援

効果
がんを患った同僚に自分の特別有給休暇を寄付できる制度を17年に創設。復職後も12日間の特別有給休暇と半年間月5万円の手当を支給。安心して働き続けられるようサポートする。
取組2

複業と兼業を推奨

効果
社外で得た知識や経験による自己の成長は、本業にもプラスに働くと考え、複業・兼業を推奨。従業員の1割にあたる約20名が個人事業主としての仕事を併せ持つ。
取組3

定年も人事も「年齢フリー」

効果
個人の能力を最大限発揮できるよう、就業規則に「一律的な定年を定めない」と明記。人事評価も年齢に関係なく、役職に応じた基準を適用する。

COMPANY DATA企業データ

人生に、大切なことを、わかりやすく。

ライフネット生命保険株式会社

代表取締役社長:森亮介
本社:東京都千代田区
従業員数:159名(正社員149名、非正規雇用労働者10名=2020年9月末現在)
設立:2008年
資本金:167億2,300万円
事業内容:インターネット経由で加入するオンライン生命保険の大手。定期死亡保険、終身医療保険、がん保険、就業不能保険の4種類を販売。

経営者略歴

森亮介(もり・りょうすけ)1984年生まれ。京都大学法学部卒業。ゴールドマン・サックス証券を経て2012年に入社。経営戦略本部長、営業本部長を務め、2018年に社長就任。