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株式会社三葉

業種

その他

地域

九州・沖縄

従業員数

301人〜

File.54

コミュニケーションを大切にする「居心地の良い」職場づくり―日本全国に発達支援センターを広げる「三葉」の場合―

幅広い人材活用

2021.01.15

株式会社三葉

 自分の考えを持ち、気持ちを伝え自立するためには「コミュニケーション能力」が大切だ。コミュニケーションを取るうえで重要となってくる「言葉の力」を重視した児童発達支援・放課後等デイサービス「COMPASS発達支援センター」を展開するのが、「三葉」(北九州市小倉南区)だ。西日本を中心とした関東以西で、言語障害、ダウン症、精神遅滞、自閉症、アスペルガー症候群、学習障害などの発達障害を抱えた児童を対象に、オリジナル教材を使った支援を行っている。

 その手法は評判を呼び、施設数は年々増加。各自治体からの要請を受け、2020年末までに全国約60カ所の施設を開設する予定だ。現在は職員数が400人を超えているが、10年ほど前は施設数も少なく、30人ほどの小さな組織だった。事業を拡大させていくなかで課題として浮かび上がったのが「いかに居心地の良い職場を維持するか」だった。療育支援への姿勢と同様、「コミュニケーション」を大切にした同社の働き方改革とは。

事業拡大の中で「コミュニケーション」を大切にした改革をスタート

 同社本部の向かい側にある「COMPASS発達支援センターJr」には、子どもたちの元気な声と笑顔であふれている。職員たちは笑顔を織り交ぜつつ、真剣な表情で発語の練習、計算や文字の勉強の指導に当たっていた。

 センターでは、「言葉の力」を重視した支援を大切にしている。このアプローチによって、福祉サービスを受けるのに必要な受給者証を返納したケースは2013年9月から2020年9月までで113例、小学校の普通学級に通えるようになった児童も500人を超える。「その子の将来を考えた支援を行うことが大切」と力説するのは、北田健二代表だ。その信念は、自身の経験に基づいている。

 北田代表は大学在学中に首に大けがを負った。体が動かしにくくなり、通院せざるを得なくなった。そんななか、周りの勧めもあり、通院していた病院近くで教育支援のボランティアを始めた。児童たちと寝食を共にするなかで、家庭内暴力や引きこもりなどの問題を抱える児童を見てきた。「『なんでそんなことになってしまうのだろう』と考え抜いていくと、最終的には『言葉』に行きつく。言葉で思考すること、伝えることが重要なのだと実感した」と振り返る。

 そんな思いが、オリジナル教材の開発、発達支援センターの開設に結び付いた。「子どもの人生が変われば、家族の人生も変わる。4人家族だとすると、子ども100人の人生が変われば、400人の人生が変わることになる」と、支援への思いを語る。

「言葉の力」について語る北田健二代表

 信念を貫き支援を続けていくうち、その活動が評判を呼び、遠方から通う児童も増加。ここ5年で施設を増やしていくことができた。一方で、職員数も急増し、一人一人とコミュニケーションを取ることが難しくなってきた。

 職員とのコミュケーションを大切にし、各地の施設に顔を出すようにしているものの、限界がある。以前のように悩みを抱える職員や疲弊している職員に直接語りかけることが難しくなった。人員が増えたことで生じがちな組織のゆがみを防ぎ、居心地の良い職場を保つため、働き方改革が始まった。

職場の情報共有と人員増で、個人の負担を軽減

 コミュニケーションを重視するため導入したのが、「職員アンケート」だ。システム上で職場環境について職員自らが自由に意見を言える仕組みを整え、パワハラやセクハラなどに当たる訴えがあった場合は、訴えを吸い上げ、すぐに改善に取り組むようにしている。また、代表自らが全職員に定期的に事業に関する思いなどをメールで発信し、積極的に情報を開示するよう努めている。さらに、社外カウンセラーに委託し、カウンセリングを毎日実施することで、職員個人の問題や、職場の課題の洗い出しを行ってきた。

会社の変化について語る鳥嶋省子さん

 今では、職員同士のコミュケーションも円滑だ。「COMPASS発達支援センターJr」で勤務する鳥嶋省子さんは、入社して約4年が経つ。鳥嶋さんによると、かつては分からないことを代表に直接聞いていた。しかし、人員が増えると直接質問することが難しくなる。そこで導入したのが、ウェブ上で閲覧できるマニュアル「社内ウィキペディア」だ。このマニュアルでは、教材や支援に必要な法令の知識について学ぶことができる。これにより「分からないことをみんなで共有できるようになった」という。

 職場内のコミュニケーションを円滑化しつつ、人員が増えたことは職員の働き方にプラスの影響を与えた。人員増により、職員個人の業務負担が減少、その結果、2017年の月平均残業時間は16時間8分だったが、2020年の7、8月の平均残業時間は6時間54分と半分以下に削減できている。勤務形態の変更にも結び付き、以前は8時間勤務、固定制だったが、2年前に7時間勤務、時差出勤制に変更。それに伴い早出、遅出出勤が可能となり、働き方の自由度が高まった。北田代表は「職員が元気でないと、子どもにちゃんと向き合えない。そのために『早く帰って、人生を楽しみなさい』ということ」と説明する。

 シフト制になったことで、休みの日もメリハリをつけて過ごせている。中学1年の長男、小学3年の長女のシングルマザーでもある鳥嶋さんは「前職までは休日も子どもたちと過ごしにくく、参観日に参加できなかった。子どもが体調を崩しても休みも取れず大変だった」と話す。その上で、「今では日曜や祝日は子どもたちのために時間を共有でき、平日の休みのときは洋服の買い物やエステと自分のための時間として過ごせている」と笑顔だ。今後について「自分が元気ならば仕事で接する子どもたちにも、自分の子どもにも等身大の自分で向き合える。プライベートと仕事のバランスを取りながら、現状に満足することなく成長していきたい」と意気込む。

2人の子どもの母でもある鳥嶋さん。趣味はフラワーアレンジメントだという

職員のスキルアップ支援とシニア人材の活用

 一般的に福祉関係の現場では、人手不足が課題に上がることが多い。その結果、職員一人一人に負担が増し、現場は疲弊しがちだ。一方、同社は職員の数が増え続け、個人の負担が減り、年次有給休暇の取得促進、残業の削減ができている。人員を増やし続けられている大きな理由は、同社の理念や働き方に魅力を感じる応募者が多いためだ。

 山口県下関市の事業所で勤務する山本寛子さんは、2年ほど前に入社。以前は保育士だったが、言葉がうまく話せない子どもに対して適切に接することができず、もどかしさを感じていた。そんなときに「『言葉の力』という考え方にとても惹かれた」と入社を決めた。日々充実しながら仕事に取り組めており、「保育士のころは持って帰る仕事も多かったが、今はそんなこともない」と笑顔だ。

 同じく下関市の事業所に勤務し、入社して数カ月の倉重美幸さんは「今後働き続けることを考え、職場環境が整っているところに惹かれた」と入社理由を説明する。福祉関係の仕事は初めてというが、「困ったことを言える環境で、職員同士が打ち解けやすい。入社してからのギャップはなかった」と話す。今後については「スキルアップにつながる資格や監査、福祉法の勉強を頑張っていきたい」と前を見据える。

 同社では、職員のスキルアップを応援する体制も整えられている。前述の社内ウィキペディアのほか、全職員がネット上で閲覧できる研修動画が用意されている。資格取得に関わる研修費、交通費、宿泊費は全額会社が負担しており、これまで362名分、計約700万円を負担してきた。また、保育士は月2万円、児童指導員は月1万円昇給など、資格取得は給与に反映させている。

入社動機について語る山本寛子さん(左)と倉重美幸さん

 同社に在籍するのは若手の職員ばかりではない。60歳以上の職員約50人も活躍しており、最高齢は78歳だ。シニア人材について、北田代表は「若い方にはない豊富な経験を持っていらっしゃる。お元気な間にその知識を生かしていただきたい」と期待を寄せる。

優しく語りかけながら指導に当たる丸山美津子さん。多くのシニア世代が活躍している

 パート職員として勤務する丸山美津子さんは、今年で76歳になる。かつては夫とともに建設業を営んでいたが、夫が亡くなり、第二の人生として「子どもに関わる仕事がしたい」との思いで同社に入社した。同社に勤務して6年目になるが、「社会貢献できていると感じる」と充実した毎日を送っている。若手職員に対しては「子どもが愛しい」という気持ちを大事にしてほしい、と伝えている。もともと違う仕事をやっていたこともあり、「理論ではなく、最初の心構えの部分を伝えていければ」と思いを語る。今後は趣味の旅行を楽しみたいという。「頑張ってお金を貯め、中国の桂林の絶景を見てみたい」とほほ笑んだ。

同社の働きがいについて語る丸山さん(左)と尾形俊治さん

 支援の現場を支える児童発達支援管理責任者を務める尾形俊治さんは約20年間、精神科の介護の現場に携わり、退職後に福祉現場の経験を買われ同社に入社した。仕事の魅力について、「介護とは違ったやりがいを感じる。昨日できなかったことが、次の日にできるようになる子どもの姿に感動する毎日だ」と顔をほころばせる。今年で70歳を迎えるが、「孫2人のためにもまだまだ頑張りたい」と意気込んでいる。

生まれたばかりの孫を見つめる尾形さん。「孫のためにもまだまだ頑張りたい」

 「楽しそうに働いていると、『いい職場だな』ということが伝わって人が入ってくる。三葉の施設では一般的な施設と比べ、2倍ほどの人員を確保できている」

 北田代表がそう自信をのぞかせるように、職場環境を整え、多様な人材を活用することで人員を充足させ、職員一人ひとりの業務の負担を減らす好循環が生まれている。

昔の良い部分は残しつつ改革を進める

 新型コロナウイルス感染症の影響で、一時閉所になった施設があった。それでも利用者の同社への信頼は変わらず、再開後も変わらず利用し続けているという。世間が騒然とする以前の昨年末から準備を進め、動画を利用した教育ツールを大量に開発した。現在は遠隔療育できるアプリを開発中で、施設が作れないようなへき地でもサービスを届けられるようにする方針だ。

 北田代表は「優秀な人材に来ていただくためには、『正しい評価が得られる』『成長できる』『福利厚生が十分』といった環境を整えておかなければならない」と強調する。「会社について、『家族』のような関わりを続けたい。昔の良い部分は残しながら、それでも『働きやすい』『学びやすい』『生活しやすい』ためにはどう新しくしていけばいいのか考え続けたい」と話す。

 今後、取り組んでいこうとしているのは、同一労働同一賃金だ。正社員とパート社員との間の給与体系の差を見直し、冬のボーナスからは算定方式を同一化させると社内に周知している。コミュニケーションを大切にした改革をこれからも続けていく。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

社内のコミュニケーションを円滑化

効果
施設数、人員数で希薄になりがちな社内コミュニケーションを円滑にするために、いつでも意見を受け付ける社内アンケートのシステムを構築。また、ウェブ上で常に閲覧ができるマニュアルを整備し、分からない部分を職員同士で共有している。
取組2

職場の情報共有と人員増で、個人の負担を軽減

効果
月平均残業時間は2017年の16時間8分から、2020年(7・8月平均)は6時間54分と半分以下に削減、同時に勤務形態も8時間勤務・固定制から、7時間勤務・時差出勤制に変更、働き方の自由度が高まった。
取組3

職員のスキルアップ支援とシニア人材の活用

効果
研修動画の整備や、資格取得に関する費用を会社が負担するなど、若手職員のキャリアアップを会社として応援。シニア世代についても約50人の60代以上の職員が活躍している。多様な世代の人材を受け入れ、職員一人ひとりの業務負担を減少させるという好循環を生み出している。

COMPANY DATA企業データ

子どもたち一人ひとりの成長を手助けする

株式会社三葉

代表取締役:北田健二
本社:福岡県北九州市
従業員数:402名(2020年10月現在)
設立:1991年
資本金:1,000万円
事業内容:障害児支援事業(児童発達支援・放課後等デイサービス「COMPASS発達支援センター」の運営)、幼児教育事業(私立小学校や国立付属小学校受験に向けての幼児教室)、学校教材販売事業(国内小学校及び海外日本人学校への教材販売、設備支援)

経営者略歴

北田健二(きただ・けんじ) 1963年、広島県尾道市生まれ。北九州市立大学在学中の1986年に教育ボランティアをスタート。その後、幼児教室の運営、教材開発を開始し、1991年に法人化。これまで北京の日本人幼稚園長を務め、人工知能(AI)を使った言語療育アプリ開発を手掛けている。