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株式会社群協製作所

業種

製造業

地域

関東

従業員数

50〜99人

File.60

働きやすさ確保で優秀な人材獲得へ―工業部品メーカー「群協製作所」の場合―

生産性向上

2021.01.28

株式会社群協製作所

群馬県高崎市に本社がある郡協製作所

 群馬県高崎市に本社を置く「群協製作所」は、レーザー光で材料を切る加工機の先端に取り付けるノズル部品や、「継手」と呼ばれる工業部品を製造するメーカーだ。10年ほど前から「女性が働きやすい職場」を目指した取り組みを始め、売上額も2012年の3億8,000万円が2019年には7億6,000万円と7年間で2倍になるなど、好循環を生み出している。

遠山昇社長(右)と弟の遠山雄彦専務。就任後は兄弟で協力しながら会社を成長させてきた

世代交代を機に業務改革へ

 働き方改革は世代交代を機に進められた。初代社長の遠山金造さんが2010年4月に退任し、長男の昇さんが社長に就任。弟の雄彦さんも専務に就任するなど、兄弟で会社を経営しているのが同社の特徴だ。社長の昇さんは製造現場の管理と営業を主に担当し、専務の雄彦さんは主に事務周りを担当している。

 世代交代を果たした直後は、兄弟で手分けしてレーザー機器などを扱う全国の工場に飛び込み営業をかけていたという。営業は順調にいき、取引先の数も増えていった一方、別の問題に直面する。電話営業を担当するパートの女性社員を中心に、従業員が定着しなかったのだ。

 「先代からの企業文化もあり、休めないような体制にしていたのが原因だと今では思う」。遠山雄彦専務は当時をそう振り返る。従業員が定着しないということは、その分、新たに人材を募集したり、育成したりするコストが発生し、企業の生産性も大きく低下する。そこで、どうすれば従業員が辞めない組織を作れるかについて検討し始めた。

営業部署の様子。女性が多くを占める

残業のない組織作りへ

 まずは従業員に対し、定時の午後5時以降にどういった余暇を過ごしているかのアンケートを実施した。その結果、仕事後には従業員各自が充実したプライベートライフを送っていることが分かった。従業員が楽しみにする幸せな時間を確保するため、まずは残業ゼロとなるような組織を構築することから始めた。

 例えば、「2時間残業をしないと仕事が終わらない」というケースがあった場合、その原因を徹底的に調べた。原因が生産の遅さにあるのなら設備の更新、事務的業務量の増加であるならパート社員の追加採用をするなど、仕事の進め方を見直し、対応策を取り続けた。1日8時間労働という基準は死守しながら、設備や人的投資を優先させているのが特徴だ。このような企業努力を続けた結果、現在では月平均の残業時間が0.7時間。1日あたりに換算すると2.1分と、ほとんど残業がない体制を実現させた。

製造現場にも女性の姿が珍しくない

 残業のない組織作りを進めていった結果、思わぬ副産物があった。家事や子育てと両立する女性の働きやすさにもつながり、女性社員が増えていったのだ。一般的に製造業は男性が多いとされているが、現在では50名の従業員数のうち半数の25名が女性で占められている。女性が活躍するのは営業職だけでなく、製造の現場でも同様だ。

 女性の活用について、遠山雄彦専務はこう説明する。「高崎のような地方都市の場合、結婚や出産を機に仕事をいったん辞めてしまう女性が少なくない。なかには東京の一流企業で働いていた方もいる。こうした女性達が地方で再度働きたくても、働きにくい環境にあったことに気がついた」。

情報共有を高く評価する人事評価により業務の属人化を回避

 地方に埋もれている優秀な女性達にとって働きにくい環境とは、休みを取りたくても取りづらい環境だ。家庭を理由に仕事をいったん辞めているケースが多く、そうした女性が職場に復帰できるとすれば、子どもが急に熱を出した時などに休める体制であることが必要となる。そこで、いざという時に、休める社内体制作りを進めることが課題になった。だが、そこでは年配の従業員などから疑問の声も上がった。

 遠山昇社長は「特に製造業では休みなしで働くことが美徳だと感じている人も少なくなかった」と指摘。その上で「休みを取ろうとする若手に対して年配社員が叱る光景を何度も見てきた。業界的には根深い体質とも言えるが、ここから変えなければと思った」と振り返る。

 特に「職人技」が重視される製造業においては、一人が休んでしまった時に交代要員がおらず、業務が止まってしまうといったことも珍しくなかった。営業においても進行管理情報の綿密な共有が求められる。

 そうした背景を受けて導入されたのが、従業員同士で仕事の情報を共有することを一番高く評価する人事評価制度だ。仕事の進捗状況などといった事務的なものから、日常的な業務によって気付いた組織への改善提案、仕事を通じて得られたノウハウなど多岐にわたる。仕事を通じて得た情報や知見を従業員同士で共有する体制を日頃からとることにより、いつ誰が抜けても業務が遂行し続けるようにするのが狙いだ。

 従業員に対して絶対的な成果ではなく、評価基準を5段階に分け、例えば営業の場合、いくらの売り上げを部署全体で達成したかではなく、何パーセント伸ばしたかで評価する。また、成果を達成しただけでは最高評価の「5」を獲得できず、その過程で得た知見を他の従業員に教え、共有することで「5」を獲得できる。

 従業員同士で教え合う風土を形成することで、この人でなければ業務が進まないといった属人化を防ぐことができる。そのため製造業でありながらいつでも誰でも休みが取れるシステムを実現したのだ。

 従業員の評価も上々だ。レーザー事業部で営業を担当する大塚恵子さんは、「仕事内容が細かく共有されており、いつでも休みがとれる」と話す。また、小学生の子どもを持つ品質管理部の町田裕子さんは、「コロナ禍の緊急事態宣言の時は休校で自宅にいる子どもとの時間を確保するため、勤務時間を朝6時から午後3時までにずらしてもらっていた。この会社だからこそできることで、とてもありがたい」と振り返る。

大塚恵子さん(右)と町田裕子さん(左)。女性でも働きやすい職場としてハローワークから紹介されたという

 仕事の情報共有を進めた結果、社長が病気のために不在になるといった危機的な状況でも会社の経営に支障が出ないほどの組織になった。遠山昇社長は2019年に循環器系の病で5カ月ほど入院した。「町工場の社長が5カ月もいなかったら倒産してもおかしくないと思うが、この間でも会社は平常通りに経営ができただけでなく、史上最高売り上げも達成してくれた」と明かす。社員一人一人がお互いに仕事をカバーできる体制を構築したことで、トップ不在の状況でも機能する組織作りにもつながったのだ。

会社全体の生産性向上へ

品質検査部門でも女性が活躍している

 女性従業員の積極的な登用によって、専門学校を優秀な成績で卒業した女性からの応募を受けるようになった。こうした女性の中には、職場の働きやすさに関する評判を聞いて、大手の採用を辞退してまで入社してきたケースも出てきた。女性の活躍は男性従業員への生産性向上にもつながっているという。遠山昇社長は「製造の現場にも優秀な女性が入ってきてくれることで、男性従業員にも『負けてられるか』という競争心が芽生えている」と説明する。

 はじめは「どうすれば従業員が辞めないか」を念頭に考え出された施策だった。それが自ずと女性が働きやすい環境作りへとつながり、さらには年次有給休暇などを取りやすくした結果、こうした風評がハローワークや学校などの求人担当者にも広まり、より優秀な人材を集めやすくなった。さらに従業員同士で教え合う社内風土作りが進んだことで属人化が防げるようになり、組織として安定した成長を生み出しやすくなった。社長が半年近く不在にしても売り上げを伸ばし続ける盤石な組織につながったのだ。

 遠山雄彦専務はこう言い切る。「特に地方は女性人材の宝庫と言える。この優秀な人材を活用しないのはもったいない。女性にとって働きやすい環境が他の会社にも広がれば、社会全体がもっと豊かになる」。社会全体としてみたら、同社のように女性が働きやすい製造業の現場はまだごく一部だ。女性の積極的な人材活用が製造業の成長戦略のカギとなるのかもしれない。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

従業員にアンケートを実施

効果
従業員に定時の午後5時以降の余暇の過ごし方についてアンケートを実施。終業後に充実したプライベートライフを送っていることが分かったことで、残業時間削減に向けて動き出せた。
取組2

設備や人的投資で残業のない組織作り

効果
残業が発生する原因を追究し、設備や人的投資を行うなどして対応策を施した。結果、月平均の残業時間が0.7時間に。女性の応募が増え、優秀な人材の確保につながった。
取組3

情報共有を一番高く評価する人事評価制度の導入

効果
情報共有を一番評価する人事評価制度を導入し、仕事の属人化を防いだ。その結果、休みやすい組織を作ることができたうえ、安定した組織を作ることができ、業績も伸ばせた。

COMPANY DATA企業データ

ネジ、継手、レーザーノズル加工はお任せください!

株式会社群協製作所

代表取締役社長:遠山昇
本社:群馬県高崎市
従業員数:50名(2020年11月現在)
設立:1963年10月
資本金:1,000万円
事業内容:継手製造、レーザーノズル製造、機械加工、レーザーレンズ販売

経営者略歴

遠山昇(とおやま・のぼる)
1962年生まれ。1983年、東京都立大学工学部機械工学科卒業。1983年、山武ハネウエル(株)に入社 空調制御部生産技術課に所属。1986年、日豪プレス新聞社(オーストラリア・シドニー)に入社。新聞記者として活動する。1988年、サンフランシスコ・ベイ・ツアーズ(アメリカ・カリフォルニア州)に入社し、ツアー・コンダクターとして働く。1991年(株)群協製作所に入社。2008年、代表取締役就任。