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アルファフードスタッフ株式会社

業種

製造業

地域

中部

従業員数

50〜99人

File.64

社員が幸せに働ける職場を目指して ―安心、安全なオーガニック商品を販売する「アルファフードスタッフ」の場合―

幅広い人材活用

2021.01.28

アルファフードスタッフ株式会社

 「人にも自然にも安心安全な食材を流通させる」をモットーにするアルファフードスタッフ(名古屋市西区)は、食品・菓子メーカーや家庭向けにオーガニック商品を販売している。食を通じて「優しさ」を提供する同社にとって、社員が働きやすい職場を作ることは自然な流れだった。その延長線上で、SDGs(持続可能な開発目標)にも取り組むなど、改革に向けた歩みは着実に進められている。

SDGsへの取り組みも進展

 同社は菓子メーカーに砂糖を卸す「浅井屋砂糖店」として、1925年に創業した。名古屋駅からほど近い場所にかつて存在した明道町は、駄菓子メーカーの集積地だった。立地に恵まれたこともあり、業績を伸ばしていった。しかし、砂糖以外の甘味料の出現や、食の嗜好の多様化もあり1975年ごろをピークに砂糖の消費量は低下。砂糖以外に打ち出せる商品を求め、当時は珍しかった国産小麦を取り扱うようになった。「こだわりの食材」へ舵を切った。

 2006年には海外のオーガニック商品の輸入や商品の小分けをした際、「有機」「オーガニック」と表示して国内で流通させることができる「有機JAS」の認証を取得した。今では12カ国、約140種類の商品を取り扱い、現地の生産者と直接やり取りするなかで、こだわりのオーガニック商品を国内に流通させている。

 当時、日本ではオーガニック商品への注目度がそれほど高くなかった。常務取締役の浅井紀洋さんは「投資のような考え方だった」と振り返るが、2015~2016年ごろから大手スーパーマーケットが独自のオーガニック専門店を開店していく流れが広まり、その狙いは実を結んだ。

世界各国の生産者と直接やり取りし、こだわりのオーガニック商品を国内に流通させている

 時代を先取る形となった同社だが、近年注目が集まるSDGsにも自発的に取り組んでいる。経営理念「私たちは『食』を通して環境と資源を考えます」に表れているように、「オーガニックを取り扱うことが社会にどう寄与するのか」という考え方が自然とSDGsに結び付いた。SDGsを学ぶ地元の大学生をインターンシップとして受け入れ、協同してSDGsに基づく「サステナビリティ宣言」を策定するなど、積極的な取り組みを見せている。

 それは働き方でも同様だ。「一人一人の人生を有意義に過ごしてほしいという思いが自然と働きやすい職場づくりに結び付いた」。総合管理部長の日比野登さんが語るように、人にも環境にも優しい商品を広げる同社にとって、社員に優しい職場環境を作ることはある意味当然のことだった。

働き方改革について語る浅井紀洋さん(左)と日比野登さん

「それぞれの人生を有意義に」の発想から改革が始まる

 改革の先陣を切ったのは、「休日日数の増加」だった。5年ほど前、社員らは月に2日ほど休日出勤をしていたというが、3年ほど前には月に1日に減らし、2018年9月から完全週休2日制を実現させた。現在は土日、祝日などを含めた年間125日の休日を確保できている。土日出勤をせざるを得ない場合は、振替休日を取得してもらうなどして、確実に休日を取得できるようにしている。

 育児休業についても5年ほど前に初めての取得者が出て以降、社内で「取って当たり前」という雰囲気を広め、定着させていった。その結果、取得率は2016年には25%だったが、2020年には100%と改善。2020年4月には初めて男性社員が取得するなど、状況は劇的に変化している。

男性社員で初めて育児休業を取得した鬼頭浩太さん

 次女が誕生する際、男性社員で初めて育児休業を取得したという企画商品営業部の鬼頭浩太さんは、「当初は取得に前向きではなかった」と話す。2019年4月に入社したばかりで、仕事を覚えていきたい時期だったためだ。「こんな大事な時期に取れるわけがない」。そんなことを考えていたが、事情を聞いた上司が浅井さんに相談し、2週間取得することになった。

 会社の後押しで取得することとなった育児休業だったが、「正直つらかった」と苦笑する。今まで家事は妻に任せっきり。そんな鬼頭さんにとって、家事をこなすことは容易ではなかった。「こんなに大変なことをやってくれていたのか」。妻への感謝の念と、生まれたばかりの次女と過ごせるかけがえのない時間になったという。前職は忙しく、なかなか長女と過ごすことができなかっただけに、子どもたちが日々成長していく姿を実感しながら、家族との時間を大切に考えるようになった。

育児休業中に妻の大変さが実感できたという鬼頭さん

 年間休日の増加に育休取得の定着。これらは会社が主体となって改革に取り組んだ結果だ。ここ数年は会社からの働きかけにとどまらず、社員それぞれが問題意識を持つことにより、変革の流れが生まれてきた。その変革のカギは、所属部署を横断して社員それぞれが作る「プロジェクトチーム」が握っているという。

部署を超えたプロジェクトチームが会社を変える

 プロジェクトチーム発足のきっかけは、毎年行われるISO認証の審査に向け、2019年10月に社内外の課題を抽出しようと全社員を対象に行ったアンケートだった。備品や制度、コミュニケーションや社内規定に関する意見が多数集まり、145項目にも上った。

 なかでも、「社内の情報共有の体制構築」を求める声があったことから、ビジネスチャットツールを導入。145項目の課題は部署にとどまらないものも多く、情報共有の環境が整ったこともあり、社内外の課題を解決するための部署を超えたプロジェクトチームがいくつも生まれることになった。

 例えば、「年に2回行う大掃除の効率が悪い」という課題があり、課題を解決するため「美化委員会」が発足した。委員がビジネスチャットツールを通じて社員に対し大掃除の役割分担などを投げかけ、効率よく進めるよう働きかけることで、大掃除の時間が大幅に短縮されたという。浅井さんは「全社員が主体性を持つことで生き生きとした姿を一人一人が見せるようになった」と笑顔で語る。

 現在もプロジェクトチームによる改革は続いている。従業員の健康管理や健康づくりを推進する「健康経営」もプロジェクトチームが中心となり、経済産業省が認定する健康経営優良法人認定を目標に実施内容の取りまとめを進めている。

地元の労働力を生かした工場

さまざまな年代のパートが活躍する工場

 同社のこだわりの商品を生み出す原動力となっている工場でも、働きやすい環境作りが進められている。オーガニックへの需要が高まる中、2016年に新工場を設立。工場は住宅街に設け、主婦や高齢者など、地元の労働力を生かす工場作りを目指した。若い世代は20代からだが、最高齢は82歳の女性。この女性は検品において熟練の技を見せているという。

 工場で勤務する社員はパート社員が多く、労働力の管理で難しい場面も多いが、工場の責任者である製造本部長の岡田一孝さんは「大変ではあるが、とりあえずやってみて、それからきちんとルール化してくことで地元のエネルギーを活用できる」と力を込める。それぞれの事情を抱え、働くうえで悩むポイントもさまざまだが、一人一人の話を聞きながら向かい合い、それぞれで最適な働き方は何なのか考え続けている。

 工場で働く全てのパート社員に社会保険が整備され、正社員と同じく1年以上勤務する場合、パート社員についても年2回の賞与を支給している。岡田さんは「今後はパート社員の自律化を進めて、仕事を自分事として進めるプロ集団を作っていきたい」と前を見据える。

今後の向上の姿について力説する岡田一孝さん

幸せに働くことができる職場へ

 コロナ禍においても、改革は続いている。「それぞれの生活事情に合わせられるように」との思いから、2020年3月からは出勤時間を午前7時から11時の間で選択できる「時差出勤制度」を導入した。勤務時間は7時間半のため、午前7時に出勤した場合は休憩時間1時間を挟み、午後3時半に退社できる。コロナ禍を受けた時差出勤の取組だったが、「意外と仕事が回るということが分かった」(浅井さん)というように、恒常的な制度として定着させた。

 同社が目指していく姿は「幸せに働くことができる職場」だ。「生産性を上げるだけでなく、自分の長所を見つけて業務に生かしていく。そうすることで仕事が楽しくなり幸せに働ける」と浅井さんは説明する。「休みも多く、お金の不安もない。社員が幸せならば長期的に会社が成長できる」と岡田さんは続ける。

 人にも環境にも優しい商品を生み出す同社。その高い品質は、「幸せな職場」を目指す姿勢が実現させている。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

休日日数の増加と育児休業取得の推進

効果
段階的に土日の休日数を増やしていき、2018年9月から完全週休2日制を実現。同時に育休取得を推進し、2020年4月には初めて男性社員が取得した。
取組2

部署を超えた情報共有体制とプロジェクトチームの構築

効果
ビジネスチャットツールを導入し、部署を超えた情報共有体制を構築。さまざまな社内外の課題解決を進めるプロジェクトチームの結成を促し、全社一体で改革を進めていく風土を作った。
取組3

地元の労働力を生かす工場作り

効果
地元の住宅街に工場を設立。主婦や高齢者を生かした工場を作るためそれぞれの事情に合わせた働き方を模索している。工場で働く全てのパート社員に社会保険が整備され、正社員と同じく1年以上勤務するパート社員については年2回賞与が支給される。

COMPANY DATA企業データ

人にも自然にも安心安全な食材を流通させる

アルファフードスタッフ株式会社

代表取締役社長:浅井章博
本社:愛知県名古屋市西区
従業員数:97名(2020年12月現在)
設立:1952年(創業1925年)
資本金:1,500万円
事業内容:食品・菓子・醸造用の原材料の販売、食品・菓子類の企画開発および販売、食品・菓子の原材料の輸出入、家庭用食材の製造

経営者略歴

浅井章博(あさい・あきひろ) 1953年11月、名古屋市生まれ、立教大学経済学部卒。1977年より2年半、横浜の食品原料卸商にて営業に従事後、家業の株式会社浅井屋商店に入社、1991年に食の安心安全をテーマ社内改革しアルファフードスタッフ株式会社に社名変更、1996年に代表取締役社長に就任、現在に至る。

浅井紀洋(あさい・のりひろ) 1983年4月、名古屋市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、ソフトバンクグループ、伊藤忠商事株式会社を経て、2014年に家業のアルファフードスタッフ株式会社に入社、2019年から常務取締役。「幸せで持続可能な組織」をテーマに現場の改革を進めている。