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日の出屋製菓産業株式会社

業種

製造業

地域

中部

従業員数

301人〜

File.68

製造業のDX化で労働時間短縮へ―働きやすい環境作りに取り組む老舗米菓メーカー「日の出屋製菓産業」の場合―

テレワークの推進

2021.02.04

日の出屋製菓産業株式会社
 富山県南砺市に本社を置く「日の出屋製菓産業」。創業は1924年で、富山湾の名産「白エビ」を用いた「しろえびせんべい」などが主力商品として知られる。100年近い歴史を持つ老舗米菓メーカーだが、コロナ禍以前から先んじたDX(デジタルトランスフォーメーション)により、業務効率の改善を進めた。さらに残業時間も減らすなど、業務の効率化を実現している。

クラウド化でより働きやすい環境作りへ

 改革に着手したのは、代表取締役専務を務める川合洋平さんだ。「価値の高い米菓を作るためには、その分良い人材が必要」との考え方から、どうすれば地元から良い人材を集められるか腐心してきた。結果、「良い人材を集めるためには、働きやすい環境作りが大切だ」という考えに至り、定時に帰れる社内風土作りや、休みやすい制度作りを整えようと試みた。

働き方改革の取り組みについて話す専務の川合洋平さん

 代表的な取り組みの一つが、社内システムのクラウド化だ。以前は社内に設置されたサーバーで管理していたが、2018年から情報共有のためのクラウド型グループウェアを活用している。そうすることで、それまでは会社に行かなければ社員の勤怠管理をはじめとする作業ができなかったが、社外のスマートフォンからでもアクセスできるようになるなど、社員の利便性が大きく向上したのだ。例えば、営業職の社員が営業先に自宅から直行したくても、途中で会社に寄ってタイムカードを押す必要があった。ところが、クラウド化で勤怠管理システムに社外からアクセスできるようになったことで、営業先や現場から容易に直行直帰できるようになった。

クラウド化で業務効率アップ

社内システムのクラウド化について説明する藤本幸士さん

 社内システムのクラウド化は、販売や製造現場の作業効率の向上にもつながっている。経営推進本部の藤本幸士さんは「例えば店舗の売り上げデータや通販の受注状況は会社に来ないと見られなかった。それが今なら自宅でスマホを見て情報がリアルタイムで分かる。場所と時間にとらわれなくなったことで、自由な働き方ができるようになった」と説明する。電話受注もIP電話によるクラウド化が進んでいるため、電話業務もテレワークで行えないか検討しているという。

 販売だけでなく、米菓の製造現場でもクラウド化を進めようと検討している。工場で製造計画を共有したり工程を管理したりする際、現状はエクセルで作成したものを紙に印刷し、現場で共有している。この場合、管理者が現場にいないと全体が把握できない。「この部分についてもクラウド化を進めることで、残業を減らそうと取り組んでいる」と川合さんは意気込む。例えば、それまで使用していたエクセルをクラウド上で共有する生産管理システムに置き換え、ネットワークで共有することで、リアルタイムに情報が共有できるようになるという。

オフィスの再構築が働きやすい環境作りに結び付いている

 働きやすい環境作りのため、オフィスの再構築にも取り組んでいる。例えば本社内の工場の食事スペースをリニューアルしたり、昼寝できるスペースを設置したりするなど、休憩時の環境を整備した。また、製造現場の職員が食事スペースを使用しない時間帯は、事務系職員が執務スペースや打ち合わせスペースとして使用しており、社内のフリーアドレス化に結び付いている。

コロナ禍以前からテレワーク実施

 これまでの改革の結果、コロナ禍におけるテレワーク化への移行を難なく実現できた。川合さんは「テレワーク自体はコロナ禍以前からできるようにしていたので、すんなりと実施できた」と説明する。社内のIT化を進めたことで、事務系職員のテレワーク化が進んだ。東京の営業所では体制的にほぼ移行しており、富山本社でも本人が希望すればテレワークできる体制を整えているという。

テレワークの利点について語る松邑瑠菜さん

 経営推進本部で広報や宣伝などのブランディングを担当している松邑瑠菜さんは、コロナ禍以前からテレワークを利用しており「娘が急に体調を悪くした時などにテレワークを活用していた」と振り返る。仕事に余裕がない時は、移動時間も仕事に充てるつもりでテレワークを行うこともあるという。「会社にいると電話を取るなどして集中できない場合がある。仕事で忙しい時には、とても助かっている」と笑顔だ。

 法律上、子が3歳に達するまでとされている育児のための短時間勤務は、同社では子どもが小学校に入るまで取得が可能だ。松邑さんも制度を活用しており、「当社での女性の産休育休取得率は長年100%取得を実現しており、社内で出産を理由に仕事を辞める人はほとんどいない」と川合さんは語る。

DXと共に進められた労働時間削減の取り組み

EC事業部の職場風景

 DXと共に進められたのが、従業員の労働時間削減の取り組みだ。川合さんは「僕が入社した当時は、先輩社員が残っていると『偉い』とまで言われていた。休日出勤もあった。今思うと、なんであんな非効率な働き方をしていたんだろうと思う」と振り返る。その上で「逆に今では、『早く帰るのが偉い』という社風が行き届いているかなと思う」と続ける。藤本さんも「私が入社した10年位前は、夜の8時や9時までダラダラと会社に残っているのが美徳とされるような雰囲気があった」と述懐する。

 労働時間削減のため、意識改革を行った。「ノー残業デー」を設け、一番早く帰った従業員にプレゼントを渡す施策を実施。人事評価制度にも勤務時間を意識する項目を入れ、上司の側も部下を定時で帰らせることが評価につながる制度を取り入れた。そうした新たな社内風土を築いた上で、2019年にはみなし残業制を撤廃。川合さんは「この制度の改革も大きかった」と振り返り、「一人一人の残業時間がより細かく可視化されたことで、残業をする人が減ったと確信している」と説明する。当初は残業手当を目当てにした残業が増えるのではないかと社内で懸念されたというが、「そこは富山県民の真面目さが証明されたのではないかと実感している」と笑顔で話す。

 川合さんは「当社は歴史も長く、事業の規模もそれなりだが、富山県の『中小企業の働き方改革モデル取組事例創出事業』にも参画させていただいており、地域社会の手本であり続けたいと思っている」と力を込める。地方をはじめ、休みなしで長く働き続けることを「美徳」とする文化は根強い。地域を代表する老舗企業から率先して働き改革が進むことで、50年後、100年後も手本となり続け、地域社会全体の改革にもつながることだろう。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

勤怠管理のITシステム導入

効果
会社に行かないと出退勤扱いにできなかったものが、スマホでも可能に。自宅から営業先や現場への直行直帰を可能にしただけでなく、テレワークの実現にもつながった。
取組2

ソフト・ハード両面で労働効率を改善

効果
社内システムのクラウド化で自由度の高い働き方を実現。また本社工場の食事スペースをリニューアルしたことで、製造現場の待遇改善と同時に、社内のフリーアドレス化も推進した。
取組3

人事評価をはじめ残業しない意識作り改革

効果
管理職でも率先して帰宅する風土が進み、「ノー残業デー」を設けたり、みなし残業制を撤廃したりすることで社員の意識改革を行い、労働時間削減につなげた。

COMPANY DATA企業データ

類ありて比なし

日の出屋製菓産業株式会社

代表取締役会長兼社長:川合声一
本社:富山県南砺市
従業員数:330名(2020年11月現在)
設立:1924年
資本金:8,000万円
事業内容:米菓製造・販売

経営者略歴

川合声一(かわい・せいいち) 1954年、富山県生まれ。1978年、日の出屋製菓産業に入社。専務取締役を経て1999年に社長に就任。2014年に会長に就任後、2019年からは会長と社長を兼任。2018年から同県南砺市商工会長を務め、2020年に黄綬褒章受章。

川合洋平(かわい・ようへい) 1986年、富山県生まれ。2009年に日の出屋製菓産業に入社。営業部第一部長、常務取締役業務本部長を経て、2019年から代表取締役専務。