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株式会社クラフト

業種

その他

地域

近畿

従業員数

10人未満

File.92

年次有給休暇取得推進の取り組みが業績アップへとつながる―日本一働きやすい看板屋を目指すクラフトの場合―

時間外労働の削減

2021.12.16

株式会社クラフト

綿密な作業を経てディスプレイを作り上げていく。

 看板、サインの企画・製作・施工を行う、株式会社クラフトがあるのは大阪市。グラフィックデザインを学んだ水田良司社長が1988年に立ち上げた企業である。水田夫妻のほか、社員は現在7人。働き方改革への取り組みは2009年からスタート。その後もさまざまな改革案を繰り出し、働きやすさと業績アップの両立へと至っている。

休み無しが当たり前だった社内風土を刷新

 少人数の株式会社クラフトでは、従業員一人ひとりの役割は大きい。営業担当はニーズの聞き取りから見積り、スケジュール管理、材料や加工の手配、引き渡しなどを担い、企画職はデザインを立案して材料を選定。それを基に製作部門がディスプレイを作り、施工管理職は工程管理や安全管理、法令や環境対策を遵守した進捗統括を行う。仕事は公共施設や病院、商業ビル等のサインボード、アミューズメントパークのディスプレイ制作など大型施設が中心だ。施工は夜間や休日に行われることが多い。

 「看板屋という仕事はどこの会社もすごく働くのです。作って取り付けての繰り返しで、朝から晩まで休む間もないイメージですね。いつも目の前の仕事が終わるまで働いて、残業も多く、土日休みもあってないようなものでした」と水田社長。
「けれども、そんな苛酷な働き方のままでは会社は持続できないはず。なんとかしなければと思っていました」。

代表取締役社長の水田良司さん。

 そんなとき、大阪労働局で「職場意識改善助成金(現 働き方改革推進支援助成金)」を知った。労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進など職場の環境整備に向けた取組に対して、費用が助成されるのだという。「懸案事項への改善に対して助成金が出るならありがたい」水田社長は早速、職場環境の整備に向けて検討するための社内委員会を立ち上げた。2009年のことだ。
まずは隔週土曜をノー残業デーと定め、平日も18時以降は会社の電話を留守電にした。取り組み開始の初期の頃には毎日、終業時刻になると水田社長自身が飼い犬の散歩に出て、“もう仕事を終えて帰ろう”という雰囲気を伝えたそうだ。1年後には完全週休2日制を導入。取引先各社にも、平日に電話するなら17時半まで、土曜は連絡が取れないならうちも休みにしようといった動きが生まれた。

 「大手企業でも、もっと休もうという機運が出てきた頃です。お客様方にも温かく見守っていただけました」

 同時に、年次有給休暇の計画的な付与制度を導入。ワークライフバランス勉強会をはじめ、さまざまなセミナーや勉強会にも従業員共々参加した。

休めない要因の分析と多様な対策が効果

  次の転機は2015年。大阪労働局主催のワークショップに参加したのがきっかけである。
 休みや定時退社を奨励しても、その頃はまだなかなか理想通りにはいっていない。現場からは「無理だ」という声も多かった。2014年時点での年次有給休暇取得率は60.2%、月平均残業時間は20.5時間に及んでいた。

文字バランスを考えながらサインボード製作中。

 なぜ休めないのか。水田社長はワークショップを通して分析した。「コミュニケーション不足により、業務内容が把握できていない」「多量の仕事を抱え込み、人に任せることができない」「日々の仕事の統括的な管理ができていない」など、多くの理由が見つかった。

 「ワークショップに参加して、年次有給休暇を取得しやすい職場環境作り、各従業員の仕事内容の把握、社内コミュニケーションの強化の3つが必要とわかりました」と水田社長。

 最初の「取得しやすい職場環境作り」では、まず、年次有給休暇全員100%の取得を目指すというトップメッセージを掲げた。社長から宣言することで、社内での気遣いを無くす作戦である。「時間単位年休制度」も導入した。役所や病院、学校などの用事がある時の数時間でも年次有給休暇を使おうというものだ。これは残業の抑制にもなった。また、誰もが見てわかる「有給休暇管理表」も掲示した。

 「仕事内容の把握」では各従業員の仕事の“見える化”を図るため、毎日、その日の業務内容と翌日の予定を直属上司に報告する「業務日報」の運用を開始。また、水田社長自身が業務内容や困りごと、休暇予定日などを従業員に聞く相談窓口も設置した。3つめの「社内コミュニケーション強化」では、毎週月曜朝の「全体会議」を開始。業務の進捗や新規依頼内容の共有だけでなく、休暇取得の予定やその間のフォローなども相談できる体制とした。

働きやすさの追求が業績アップを呼ぶ

 2020年度、年次有給休暇取得率は97.71%にまで至った。残業時間も2019年には1人あたり約12時間となり、2014年度比で50%削減となった。こうした取り組みを支えるのは総務部の仕事だ。総務と労務、経理を担当する本田知美さんは、入社5年目。

総務の本田知美さん。

 「年次有給休暇は2年間繰り越しができるので、期限が迫っている人には早く取るよう勧めています。私は中途採用なのですが、前職では皆忙しくて有休も取ったことがありませんでした。この会社に入って、上司も積極的に休む姿にとても安心できました」と話す。

 

 自身も年次有給休暇を積極的に取得している。
「年次有給休暇の日数は勤続年数で違いますが、私の場合、今は年間17日。スポーツ観戦や美術館、ライブなどに行ってリフレッシュすると、また仕事を頑張ろうという気持ちが湧きます。時間単位年休も便利に活用しています」

年次有給休暇を使って、友人たちとエンジョイ。

 こうした同社の取り組みは、従業員のワーク・ライフ・バランスに寄与する以上の効果も生んでいる。

 皆がしっかり休めるようにして、さらに仕事の効率化を図るにはどうしたらいいのか?

 

 「業務日報」や「全体会議」で表れた問題をもとに、どうすれば効率を上げられるか皆で考えるようになった。意識改革が始まったのだ。一人で抱えていた仕事は分業化した。最初は紙ベースだった「業務日報」もデジタルに移行。日々の業務内容、業務の所要予定時間と実際の所要時間から個々人の労務費を算出。それが共有化されることで自分が関わった仕事への利益率も把握でき、やりがいにつながった。顧客に対しても付加価値労働分を、根拠を持って提示できるようになった。結果、時間当たり生産性は2018年度には1.5倍(2014年度比)になり、業績もアップすることになったのだ。

 「今は、人事評価制度の運用も進めています。頑張った分をきちんと評価しようという仕組みです」と水田社長。「これまでの道のりは大変ではありましたが、働き方改革に取り組む会社として信用してもらえるのはありがたいこと。これからもよいやり方があればどんどん取り入れ、より働きやすい会社へとチャレンジを続けます」
 次にはどんな取り組みに挑戦するか、楽しみな企業である。

クラフトのオールスタッフ。

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

有休を取得しやすい環境作り

効果
社長自身によるメッセージにより職場内での“気兼ね”がなくなった。取得状況の“見える化”や、「時間単位年休制度」の導入で、積極的に休もうとする雰囲気も醸成された。
取組2

各従業員の仕事の“見える化”

効果
個人で仕事を抱え込んで長時間労働に至るケースが減り、分業も促進された。仕事内容や休む時期の相談、その際のサポートもしやすくなり、業績アップにもつながった。
取組3

社内コミュニケーションの強化

効果
毎週月曜日の「全体会議」は従業員が司会。スケジュールや仕事のサポートだけでなく、年次有給休暇の取得予定などもオープンにできるため、全社的な動きもスムーズになった。

COMPANY DATA企業データ

株式会社クラフト

代表取締役社長:水田良司
本社:大阪府大阪市
従業員数:7名(2021年11月現在)
設立:1988年
資本金:1,000万円
事業内容:サイン看板、ディスプレイの企画・設計・製作・施工

経営者略歴

水田 良司(みずた・りょうじ)
1959年大阪府大阪市生まれ。大阪芸術大学グラフィックデザイン学科卒業後、(株)ヒカリ営業企画職として入社。1988年11月同社退職後 クラフト創業。1993年5月(株)クラフト設立、現在に至る。建築施工管理技士1級、屋外広告士資格取得(公)日本サインデザイン協会、大阪屋外広告美術協同組合会員。