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株式会社エフスタイル

業種

学術研究,専門・技術サービス業

地域

関東

従業員数

10〜29人

File.97

キャリアを継続できる働き方を支援する-編集・広告制作プロダクション「エフスタイル」の場合-

テレワークの推進

2022.01.24

株式会社エフスタイル

 株式会社エフスタイル(東京都千代田区)は、医療・科学分野の従事者および一般人に向けた出版物の編集・企画・調査を始め、広告制作・代理業など、幅広く事業を展開している。設立は2007年。大学などで学んだ専門性の高い知識が活かせる一方、結婚・出産・育児など、ライフイベントと向き合ったとき、キャリアを継続するべきかどうかという判断に迷う人もいるはずだ。同社は、どのような解決策を選択したのだろう。

キャリア継続を希望する社員の希望に添いたい

 「2015年のことでした。社員の一人が結婚のため地方都市に引っ越すことになりました。引っ越してしまうと毎日出社して働くことが難しくなる。けれど仕事はこのまま続けたいという本人の相談を受け、どうしようかと考えた結果が在宅勤務におけるテレワークでした」。

 こう語るのは宮田志保社長。設立時から社員が育児や家事、介護などのライフイベントや環境を受け入れながら、キャリアをあきらめずに働き続けられる職場を目指していた宮田社長。在宅勤務こそその想いを実現できる環境ではないか、と本格導入を決意した。

 しかし、導入にあたって宮田社長には懸念があった。それは、社員同士の会議、スポンサーとの打ち合わせ、社員への指示など、それまで対面で行ってきた業務、とくにディレクター的立場にある社員の役割がテレワークで本当に果たせるのかということだった。

優秀な人材の離職を防ぎたいと在宅勤務を導入した宮田社長

懸念を解決するために設定した3つの項目

 自らの懸念を解決するために、宮田社長は①きちんとした規定を作る②システムを導入する③従業員の意識付け、という3つの項目を立ち上げ、実施した。

 規定を作ることは「テレワークの手引き」を制作して全員に配布した。テレワークでの守るべき基本的なこと、例えば、朝の始業時は必ずチャットツールで報告、15分以上の離席は報告、居室や家庭の環境整備、重要な書類は家族の前でも広げないなど、自宅だからといって緩みがちな気持ちを引き締めるルールが記載されている。

 導入したシステムのひとつがバーチャルオフィス・ソフト。パソコンモニター上に現れた仮想オフィスにテレワーク中の社員がアバターで表示され、誰が在席・離席していて何をしているのかが一目瞭然。相手の様子を確認しながら声をかけ合うことや文字や映像でコミュニケーションも取れ、Web会議もすぐに始められる。「電話中の人、ミーティング中の人などが視覚的に分かるので、コミュニケーションがスムーズになった」と宮田社長。

 社員の意識付けとは、出社社員と在宅勤務者の間に不公平感が生まれないよう、運用だけでの対応でなく、社内規定を整備して意識を啓発すること。2020年からは「働き方登録カード」を導入した。これは、オフィス勤務、在宅勤務、オフィス勤務と在宅勤務の併用の3パターンから社員自身が選んで、半期に一度の面談時に提出するもの。育児や介護など一人ひとりのライフイベントに相応しい働き方が選べる合理的なものだ。

 こうした細やかな準備だけでなく、社内に遠隔地からの会議参加を想定した「在宅ルーム」を設定するなど、1カ月の試験期間を設けた。 総務省の「平成27年度テレワークの普及促進に向けた調査研究」の導入コンサルティングを受け、研修も行った。そのため、とくに不安もなく導入は完了した。

スムーズな在宅勤務を実行するための研修

 メディカルサイエンスクリエイティブ事業部品質管理部部長の海野まどかさんは長野県長野市在住。同社が在宅勤務を導入するきっかけとなった社員だ。「結婚して引っ越ししても仕事を続けたい気持ちでいっぱいでした。思い切って上司に相談したところ在宅勤務という道を作っていただきました」。周りに知人もいないし、それまでと同じように仕事ができるのか不安だった。初めは東京本社の別室にて、隣の部屋にいる仲間と試しながらシステムに慣れた。「落ち着くまで2,3カ月かかりましたがスムーズでした」。2人の保育園児がいるが、裁量労働制のおかげで育児と仕事とのバランスが取れていると言う。バーチャルオフィス・ソフトやチャットツールで頻繁にやりとりをしているので社内にいるのと気分は変わらないとも。「在宅勤務が業務にマイナスだと受け止められないよう頑張っています」と語ってくれた。

不安があった在宅勤務だが、今は何のストレスもなく仕事に励む海野まどかさん

さまざまな最新システムでテレワークを支援

 宮田社長の疑問を解消して推進された在宅勤務だが、同社では、さらに円滑に運用するためのシステムが構築されている。勤務時間制度は、編集職を対象に裁量労働制(みなし労働手当として月23時間を設定)と、事務スタッフ対象にスーパーフレックス制の2種類を導入している。

 スーパーフレックス制は出社時、退社時にコアタイムを設け、月の総労働時間を満たせば社員一人ひとりが自由に出退勤時間を設定できる。例えば、1カ月に20日間出社して8時間勤務の場合、1カ月で160時間働けば条件は満たされる。良好なワーク・ライフ・バランスを実現できる画期的な方法として、注目されている制度だ。

 こうした勤務時間の管理は複雑になるが、クラウド上の勤怠管理ソフトウエアを採用して解決した。インターネット上のタイムカードのようなもので、社員自身が勤務開始・終了時間を記録し、テレワーク中に長時間離席する場合には離席・着席も記録できる。年次有給休暇の申請も行え、給与明細も発行、年末調整もできるというテレワークに最適なシステムだ。

 そのほか、多彩なコミュニケーションツールが使えるソフトや制作進行管理ソフトなど、在宅勤務におけるテレワーク体制が整い、育児や家事、仕事との両立を支援している。

社員が安心して業務を進められる環境が整備されている

より実りある在宅勤務のために高いコミュニケーションスキルを

 在宅勤務導入が2015年と早かったこともあり、社員には普通の勤務形態であり、ワーク・ライフ・バランスも当然のものとして受け止められている。導入時、抱えていた不安は杞憂に終わった。「業績は落ちることはなく、右肩上がりで現在まで来た」と宮田社長。 

 在宅勤務におけるテレワークにはさまざまなシステムが不可欠だが、宮田社長は「システムは家電製品と同じ。使いやすいものが出れば買い換えればいいが、それより在宅勤務を取り巻く周囲の意識の改革が重要」とバッサリ。「旦那が妻に甘える。エフスタイルの在宅勤務は時間が自由だからと、子どもの体調が悪くても旦那は出社してしまう。これでは在宅勤務の妻の負担は変わらない。システムとは関係ない。コミュニケーションの問題」と宮田社長。

 同社の研修プログラムに、自分の気持ちをしっかり伝えられるかどうかというコミュニケーションの練習がある。テレワークだと、思っていることが正しく伝わらないことがある。「言い方、伝え方はもちろん、相手をおもんぱかった高いコミュニケーションスキルがないと働き方改革はできないと思う」。よりよい在宅勤務のためには、社員は当然、家族や周りの人たちの気持ちが変わらないと。「最後は人ですから」と宮田社長。

自分と他人の気持ちには違いがあることを知るユニークな研修素材

 在宅勤務の導入で、キャリアを諦めずに仕事を継続できる体制が整い、社員はそれが当然という社風ができた。また、コロナ禍での緊急事態宣言があっても、まったく焦ることなく在宅勤務に切り替えられたという。

 同社は、子どもの同伴ができる社員旅行を毎年実施してきた。日頃、なかなか顔を合わせられない社員同士の貴重なコミュニケーションの場だったが、コロナ禍の影響で中断となっている。「いつ再開できるかなあ。みなさんも待っているんですけどねえ」と宮田社長も心待ちだ。

子ども同伴の社員旅行は旦那抜き。社員は再開を待っている

CASE STUDY働き方改革のポイント

取組1

「テレワークの手引き」の制作・配布

効果
在宅勤務におけるテレワークにあたって、実施時に知っておきたい細かなルールや制度利用のポイントなどをまとめることによって、より安全で効果的なテレワークが推進できた。
取組2

最新システムの導入

効果
バーチャルオフィス・ソフト、クラウド上の勤怠管理ソフト、制作進行管理ソフトなどの最新システムによって、テレワーク中の社員のコミュニケーション、業務がスムーズに行えるようになっている。
取組3

働き方登録カードの導入

効果
働く場所を3パターンの中から社員自身が選ぶことにより、育児、介護など、一人ひとりのライフイベントに相応しい、柔軟な働き方ができるようになった。

COMPANY DATA企業データ

キャリアを継続できる働き方を支援する

株式会社エフスタイル

代表取締役:宮田志保
本社:東京都千代田区
従業員数:15名(2021年8月現在)
設立:2007年7月
資本金:1,000万円
事業内容:メディアコンテンツの企画・制作・調査。医療および自然科学等の分野に関する広告代理業。文字起こし、映像起こし等に関する事業。テレワーク・在宅就労支援のためのプロデュース事業。人材育成のための教育事業。出版業。有料職業紹介事業

経営者略歴

宮田志保(みやた・しほ) 1969年石川県生まれ。電子部品メーカーで広報業務に携わったのち広告代理店に転職。出産のため退社後、個人事業主となり、2003年9月「特定非営利活動法人フラウネッツ」を設立。2007年7月「株式会社エフスタイル」を設立。厚生労働省在宅ワーク支援事業検討委員などを歴任。旅行、読書、フラワーアレンジメントが趣味。